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今世こそは青春を謳歌…って謳歌するどころかモテモテですが!? NO.1
ピーピーという規則的な機械音が聞こえる。そして消毒液の匂い。腕にはチューブがつながっていてオレンジ色の液体の入ったパックにつながれている。
な、なんで…。俺は…普通に暮らしてる中学1年生のはずなのに。なんで…なんでこんな転生物の小説の主人公みたいなことに…。
転生…。そうか…。一つ思い出した。俺は暴漢に襲われてた人助けたんだ。真っ赤な血も流れてたし、俺、助からなかったんだろうな。
「天晴。天晴」
気づくと俺は何もない白い空間にいた。そして、どこからともなく聞こえた声。
「いや~。天界目録も当てになんないな~」
声が聞こえたほうを見た。そこには俺と同い年くらいの少女が立っていた。
「だ、誰…?」
「あ、ゴメンゴメン。私は神様。最近、この世界———狭間の世界の管理人を押し付けられた者だよ」
「押し付けられた」を強調して行った自称神様は言葉をつづけた。
「君は天界目録の記述よりも70年以上早く死んだ。暴漢に襲われてたクラスメイトを助けてね。死界目録に書き直しておいたよ。一ノ瀬勇人、享年13歳」
13歳か…。普通に生きれば83歳だったてことか。
「で?俺は死んだんでしょ?なら、なんで俺は地獄に行ってないの?」
「いや、狭間の世界は地獄でも天国でもない。転生の機会を与える場だよ」
「へ~。って、て、転生!?」
「いえすいえす。君、前世でやり残したことは何だね?」
「え、青春と人生70年」
戸惑うよ。急に前世を押し付けられてやり残したこと聞かれても。
「なるほどなるほど。じゃ、この世界いってきなよ」
少し悩んだ後、神様はホログラムを俺に見せてくれた。そのホログラムに映るのは「男女比1対1000の世界」という文字。俺は神様に聞いた。
「こ、これ?ですか?」
「そうそう。この世界だったらなんかいい感じに青春できるんじゃないかと思ってさ。あと、つけ加えるとしたら、この世界はファンタジー世界じゃなくて現代日本のパラレルワールドってことかな」
へー。パラレルワールドに転生する選択肢とかあるんだ。
「でも、そこじゃ、青春どころじゃなさそうですけど?俺、勉強・顔・運動すべて平均的なMr.平均点ですよ?」
「おーけー。ならこの本から|能力《スキル》選んでみ?」
渡されたのはすっごい分厚い本。辞書3冊分くらいありそうな分厚さ。ハードカーバーになってて表紙には|能力《スキル》選択肢って書かれてる。
とりあえず開いてみたけど目次からエグい。2987ページとか書いてあるもん。俺一番多いって思ったのでも490ページの本だったよ?
ま、まあ?選んでやろうじゃありませんか。来世で完璧な人間になれるような|能力《スキル》を。
目次によると、俺が欲しいようなスキルは2500ページの第76章に書かれてるっぽい。頭バグりそう。1ページから2400ページ台まではファンタジー系のスキルっぽいな。んで、そっから先の2500ページ台から2900ページ台までがパラレルワールド用っぽい。
パラレルワールド用の最初のところに、ルックススキルがあった。解説によると完璧なルックスが手に入れられるらしい。あと、かっこいい系か中性的かとかはランダムらしいね。選択ボタンをポチっとな。これは必須級スキルでしょ。青春謳歌するなら。
次に必要なのは頭脳でしょ。3ページ目。あ、あったあった。頭脳スキル。ポチッ。
そして、隣にあった幸運スキル。ポチッ。前世では運に見放されてたしね。
あー、あと、運動スキル。頭いいだけの男はね。ポチッ。
最期に、恋愛・青春スキル?をポチッ。解説によると、青春と恋愛は比例式で表せるよ!って書いてある。何?この、青春漫画みたいなキャッチコピーは。
「あ、できましたよ神様ー」
少し遠くにいた神様に呼び掛けた。神様は転生手続きみたいなのしてくれてるのかな?
「おー?出来たかい?なら、そこの光の穴に飛び込め!」
走り寄ってきた神様は、近くにあった穴を指さした。
「お、お世話になりましたー!」
俺はそう言いながら、穴に飛び込んだ。
あー。そういう流れだったね…。え、なら俺の顔はか、かっ、完璧なルックスを手に入れていると!?
俺は近くにあった窓に顔を映してみた。か、完璧だ…。前世ならスカウト間違いなしだったろうな。そんで、ランダム要素はかっこいい系じゃなくて中性的に振ったと。ま、いいけど。
そして、窓に俺の顔を映したときに驚愕した。なんでか、頭に包帯まかれてる。俺、死にかけたの?頭強く打ったの?た、確かに神様と会ったこと忘れかけてたから記憶喪失の疑いはあるけど。
ガララララッ!ドアが開いた音がした。誰が来るんだろう…。ま、高確率で女性だろうな。神様が言うにはこの世界、男女比1対1000らしいからな。
カーテンの向こうから現れた人は目を見張るほどの美人だった。
互いに口ポカーンとしている。ま、向こうが俺見てビックリするのは何となく分かるよ?起きてるもん。