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ボクだけのキミ、愛す。 #3
放課後の校庭。
夕陽が校舎の窓を黄金色に染め上げ、風は優しく吹いていた。
結は、ひとりベンチに腰を下ろしていた。手には学校の教科書。
けれど、その瞳は遠くを見つめていた。
「結、大丈夫?」
背後から声がかかる。
振り返ると、クラスメイトの|神谷悠斗《かんやゆうと》が心配そうに立っていた。
彼はいつも優しく、結の笑顔を引き出そうとしてくれる数少ない存在だった。
「最近、御影先輩といつも一緒で……なんだか、結の表情が変わった気がするんだ」
悠斗のその言葉は、暖かくて優しいけれど、どこか重くのしかかる。
「ありがとう、悠斗くん。でも、私、大丈夫だよ」
結は笑顔を作った。
それは、彼女なりの“普通”でいるための努力だった。
「無理しなくていいよ。俺は味方だから」
悠斗が差し出した手が、そっと結の手に触れる。
その瞬間、辺りの空気がひんやりと変わった。
影が落ちるように、司が現れたのだ。
「……触るな」
司の声は低く、重く響いた。まるで雷鳴のように。
悠斗は驚いて一歩引いたが、なおも結の手を離さなかった。
「司くん、落ち着いて。俺は友達として心配してるだけだ」
「友達?そんなものはいらない。結は俺のものだ」
司の瞳は、揺らぐことなく結を鋭く見つめていた。
「お前は束縛して苦しめてるだけだ。結は自由でいるべきだ」
悠斗の声は強くなるが、司は動じなかった。
「苦しみ?お前にわかるはずがない。俺は結を守っている」
司はそう言いながら、結に近づく。
結は二人の間で揺れながら、声を震わせた。
「やめて……お願い、私を傷つけないで……」
司の表情がわずかに柔らかくなり、手が彼女の頬に触れた。
「結、お前は俺以外に心を許すな。わかったな?」
「……うん」
結は小さく頷いた。
司は結の顎を優しく持ち上げ、目をじっと見つめる。
「俺の命令こそがお前の世界だ。忘れるな」
その夜。
結はひとり部屋でスマホを握りしめていた。
【司くん】
「今日の“罰”の準備ができた。覚悟しておけ」
結は震える指でメッセージを読み返す。
「……わかった。司くんの言うことは、絶対だから」
震える声で呟くと、目に涙があふれそうになる。
翌日。
放課後の屋上。
司は結を見つめながら言った。
「俺の命令に背くときは、罰が待っている。心して従え」
結は深く息を吸い、震える手で司の手を握った。
「はい、司くん。どんな罰でも受けます」
司の表情は少しだけ和らぎ、彼女の手を強く握り返した。