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第13話:試験の知らせ
目が覚めると、魔王城内のような黒い鉱石がある部屋ではなく木造の温かみのある部屋だった。
昨日の夜の事があまり思い出せない。
たしか、魔王こと父上と話して…。
それで…。
(…お父様、暖かかったなぁ)
「やあ、泥棒猫ちゃん…もしかして、昨日のアーゼ様のハグを思い出してた?」
昨日の事を思い出してたら、隣から声が聞こえ私はとっさに掛け布団で身体を隠した。
「っだれ!?」
「あー。会うのは初めてだっけ?ふ~」
「ひゃぅ!!」
いつの間にか背後に回られ、左耳に息を吹きかけられた。
驚きのあまり、変な声が出てしまった。
「あれれ?もしかして、お耳弱いの~?」
その言葉には、煽りと喜びに近い感情が感じ取れた。
すると、遠くで扉が開く音が聞こえ…突如、目の前に桃色の髪の少女が現れた。
その少女は、私と同じような背丈なのに対して、棗と同じような威圧感を感じる。
すると少女は、私に顔を近づけて不気味な笑みを浮かべ悪戯っぽくささやいた。
「ん~。そろそろ危なそうだし、悪戯はここまでにしてあげよう」
何を感じ取ったのか分からないが、ようやく普通に会話が出来そうな雰囲気に私は質問を投げかける。
「…っ…。で、何の用なの?あと、君は誰なの?」
「私は、ハル。アーゼ様の専属メイドで、今日は泥棒猫ちゃんにお手紙を届けに来て”あげた”の」
上から目線なその言い方に、少しイラっとしたが…私が何をやっても負けてしまう事は目に見えているので諦めて何も言わずに手紙を受け取った。
中を開けてみると、そこには手紙ともう一つ変な紙が入っていた。
まず、手紙の方を開くとそこには力強く『学園へ入学し、知識を取り入れよ』と記されていた。
書き方的に多分魔王なのだろうが…。
元奴隷の私に学園に行けって?
(いい度胸だ、私は男を喜ばせること”だけ”には自信があるぞ?)
そんなことを考えていると、扉にノック音が響き冷気を纏わせながら棗が入ってきた。
「あ…棗?こ、これは違って…そう!手紙届けに来ただけなのよ!」
何も言っていない棗に、ハルさんが誤解を解く主人のように、いや犯行現場に居合わせた一般人のように言い訳を始めた。
「私は、昨日の事はまぁ許してあげる事にしました…」
その言葉に、ハルさんは少し安堵の表情を浮かべていた。
「しかし!この現場を押さえた今…貴方に、加減する理由はありませんね?」
言葉が言い終わると同時にふわっと私のほうまで冷気が襲ってきた。
その余りの寒さに、私は布団を一段と深く被った。
「ひぃぃ、ねえ、貴方棗の主でしょ?何とかしてよ…」
さっきまで、立ってたのに今では私の背中側にまわり込み私を盾にしながらそう訴えてくる。
私に助ける義理はないのだが…このまま行くと私の部屋も氷付くかもしれない。
そんな嫌な予感が頭を過り…。
「棗!止まって、その殺気を押さえて」
「…っ!?は、はい」
ちょっと強く言ったことに驚いたのか、棗は私の指示にしっかりと従った。
その後、朝からの説明をざっくりと行い手紙を棗に渡した。
「はぁ、アーゼ君今度会ったら一発殴らないと」
「棗、そんなことしたら父上と会いにくくなるから止めてね?」
「…はい」
「…あの棗が飼い犬みたいになってる」
とんとん拍子に会話が進んでいくと、朝ご飯を呼びに来たフミに「何やってるんだ?」と突っ込まれた。
「今日の朝は、白米、柚子味噌のわかめ味噌汁、あと雪妖精の紅葉漬けだ!俺が、鈴音さんの手伝いをして作ったんだ」
「凄い!ありがとフミ!」
えっへんと胸をはるフミに私は拍手をして、褒め称えた。
何も言わないが、これは彼女の照れ隠しの一種だと私は知っている。
朝から、こんなレアな一面を見れたのはいい日の兆しかもしれない。
まぁ、それよりもっと前に嫌な事があったからその埋め合わせなのかもしれないが…。
フミが手伝ったご飯は、いつもより少し美味しく感じた。
ただ、雪妖精の紅葉漬けだけは食べるのに少しだけ抵抗があった。
彼ら、漬けられているのにまだ息があって…そのせいで、箸で掴むと泣き顔を見せてくる…気がするんだもん。
まぁ、食べた瞬間に広がるひんやりとしたあの感じは少し癖になったから次も又食べたいんだけどね
その後、私はハルさんとフミ、あと棗を部屋に招き例の手紙について話し合うことにした。
話し合うといっても、まぁ入学自体は決定してしまっているので今後の動き方について話すだけだ。
例えば、入学に必要な物とか魔王の子だとしても試験はあるわけだからその対策とか…。
まぁ、話すことは色々とあるのだが…。
「で?貴方は何故ここに?」
「さっきも言ったでしょ?そこの泥棒猫ちゃんに手紙を届けに来ただけだって」
私の部屋に入ってから、ずっとこの調子だ。
多分、昨日の事がなにか関係しているのだろうけど…私からしたら何も分からない。
だって、気絶していたのだから…。
しかし…いつまでたっても話が進まないのも癪だ。
「棗、ハルさん…これ以上言い争うなら二人とも出てってもらうよ?」
「私は構わない。元々、手紙だけ届けるつもりだったからね」
「このはお嬢様っ!?私を見捨てるんですか!?」
冷静に帰りたい意思を伝えるハルさんとは裏腹に、涙目でこっちに訴えかけてくる棗。
悪いものでも食ったのではないか?と不安になるほど普段とは大きく違うその姿に私は戸惑いを覚えた。
「じゃあ、争わないって誓える?」
「はい!誓います!」
「ならいいよ…。」
その後は、何事もなく話し合いが進み試験日までの時間割も決まったため早速取り組み始めた。
ー試験当日
「では、私は外で待っていますので」
「うん、じゃあまた終わったらね」
「はい、頑張ってきてください」
「うん!」
棗と短い会話を交わし私は、試験会場であり入学予定のセレンスティア学園に向かって歩き始めた。
いやぁ、久しぶりの投稿だぁ。
ほんと、申し訳ございません。
いや、言い訳になりますけど言い訳させてください。
最近、忙しかったんです。
ほんとに、ワタシウソツカナイ!ホントホントw
っというのは、おいておいて…。
他の小説の執筆とゲームに逃げてました。
来週からは、もっと執筆頑張るので期待しててください