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#06
ザンカが隣に腰を下ろしたことで、レイラはさらに機嫌が良くなった。カツサンドを一口食べ、もう一口と頬張る彼女は、まるで小さな子供のようだ。その無邪気な姿を、ザンカはどこか満足げな表情で見つめている。
「ねぇ、ザンカ」
口いっぱいにカツサンドを頬張りながら、レイラが話しかける。
「今度さ、もっとでっかいカツサンド作ってくれへん?」
「欲張りなヤツじゃのう」
ザンカは呆れたように笑いながら、しかしその声はどこか嬉しそうだ。
「どんだけでかいのがええんじゃ?」
「んー……そうやな、僕の顔くらいのでっかいヤツ!」
レイラはそう言って、両手で自分の顔の輪郭を描いてみせる。
「ハハ、そりゃまた大作じゃな。腕がなるわ」
ザンカの言葉に、レイラは嬉しそうに飛び跳ねた。
そんな二人の様子を、ルドはやっぱり少し羨ましそうに見ていた。特別なカツサンド。特別な笑顔。特別な関係。自分にはまだ、そんな「特別」が何なのか、どうすれば手に入るのか、まだよくわからない。
そんなルドの心情を察したリヨウが、再びそっと寄り添う。
「ね、ルド。いつかあなたも、誰かの特別な存在になれるわ」
「はぁ!できねぇよ」
「そう?あなたには、あなたの良さがあるのに」
リヨウはそう言って、ルドの頭を撫でる。
不意打ちの優しさに、ルドはますます顔を赤くして、恥ずかしそうに俯く。
「な、なんだよ、リヨウ……!やめろって!」
そんなルドの様子を、エンジンがからかうように見つめていた。
「お?ルドもすっかりリヨウに懐いてるじゃないか」
「う、うるせぇ!」
ルドの反論もむなしく、食堂には笑い声が響く。
レイラのカツサンドを頬張る音、ザンカの優しい視線、リヨウの温かい手、エンジンのからかうような声。
それぞれの「特別」が重なり合い、食堂は温かな空気に包まれていた。
いつもの日常。いつもの仲間。
奈落の底から這い上がってきた彼らにとって、この穏やかな時間が何よりも尊い宝物だった。
ルドは、いつか自分も、誰かにとってそんな特別な存在になれることを信じて、カツサンドを美味しそうに頬張るレイラを改めて見つめるのだった。
🔚