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謎転校生
「よろしく……?」
僕は思わず聞き返した。
綺羅さんは、にっこり笑った。
「ハイ。よろしくデス、琉夏くん。」
その笑顔に、なぜか背筋がぞくっとした。
教室はまだ騒然としている。
先生は慌てて高木さんを保健室へ連れていき、クラスメイトたちも不安そうに綺羅さんを見ていた。
なのに――
「ねぇ、琉夏くん。」
綺羅さんだけは、僕しか見ていなかった。
「……なに?」
「今日、一緒に帰りマショ?」
「え?」
「ワタシ、琉夏くんと一緒に帰りたいデス。」
初対面なのに、どうして?
僕が返事に困っていると、綺羅さんは僕の机の上に置いてあった消しゴムを手に取った。
「これ、知ってマス。」
「……僕の消しゴム?」
「ハイ。琉夏くん、いつも右側に置いてマス。」
「なんで知ってるの?」
綺羅さんは少しだけ首をかしげた。
「……見てたからデス。」
その言葉に、僕は黙り込んだ。
なんだろう。
この子、やっぱり変だ。
そのとき。
僕の机の中から、小さな音がした。
カサッ。
「?」
僕が机を開けると、中には一枚の写真が入っていた。
それは、ムウの写真だった。
「……なんで?」
写真の裏には、僕の字で、
『ムウ、大好き』
と書いてある。
僕は写真を握りしめた。
「ムウ……」
その名前を口にした瞬間。
隣から、綺羅さんの声が聞こえた。
「……ムウ。」
「え?」
「なんでもないデス。」
綺羅さんは笑っていた。
でも――
その目だけは、笑っていなかった。
僕らは至急、授業が中止になって、早く家に帰された。
帰り道、綺羅さんは、なぜか僕についてきた。
「琉夏くん、猫、飼ってたんデスね。」
「え…?う、ん、」
「……どんな猫デスか?」
「えっと……甘えん坊で、僕の隣が大好きだった。」
そう答えると、綺羅さんは嬉しそうに笑った。
「そうデスか。」
「?」
「……いい猫デスね。」
その言い方が、妙に引っかかった。
家の近くまで来ると、綺羅さんが突然立ち止まった。
「琉夏くん。」
「なに?」
「ワタシ、琉夏くんのとなりにいてもいいデスか?」
「……え?」
綺羅さんは、まっすぐ僕を見つめた。
「ずっと。」
その瞬間。
僕の家の玄関から、
「ニャア」
という声が聞こえた。
「……え?」
僕は慌てて玄関を開ける。
でも、そこには何もいない。
ただ、床に見覚えのある小さな鈴が落ちていた。
ムウの首輪についていた鈴。
僕がそれを拾い上げた瞬間――
後ろから、綺羅さんが小さな声で言った。
「……やっと帰ってきた。」
「え?」
振り返る。
綺羅さんは、いつもの笑顔を浮かべていた。
「おかえり、琉夏くん。」
その言葉を聞いた瞬間。
背筋が凍っていくのがわかった。
この子は――
僕が思っている以上に、
僕のことを知っている。