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11.問題
「最近のう、植物の育ちが悪くってなぁ。」
村長は急に間延びした口調で話しかけてきた。そして、その内容を聞いて。
(ハメられた?)
響は思った。
村長は、神子の伝承を知っていた。それはすなわち、響がなんらかの知識を持っているだろうと考えることができる、と同義であり、そしてこの発言はそれをお狙ってのものに違いなかった。
「私はそれには答えません。」
響もそう感じたのだろうか?少し、神子とあがめられていた時のような口調に戻ったような気がする。
「なるほど。知っておるのじゃな。」
「いいえ、知りませんよ。私が分かっているのは、私がそれの解決策を思いついたところで、この村のためにならないということだけです。」
それっぽく響は答える。
いまや完全に響はさっきの村での口調に戻っていた。
「なるほどのう。」
「理解していただけましたか?」
「いや、分からん。」
(分からんのかい!?)
響はひとり、ツッコんで脳内で盛大にこけてみた。
「今までの肥料がダメだったんじゃろうか?エコでいいと思っておったんじゃが。」
肥料、その言葉で少しは響も興味を持つ。この質問だったら、答えられるかもしれない。そして、かすかに希望が見えた気がした。
無論、まだ教えるつもりはない。
「人の尿を使っておったんじゃが。」
(それでなんで成長しないわけ!?)
響はまたもやツッコむ。
人の尿というのはとても効果の大きい肥料である。逆にそれで効果が出ないなんて言うのはあり得ないだろう。
(お母さんは、何を使っていたっけ?確か畑を焼いて……そうだ!灰だ!)
そして、響はせっかく考えたこれをどうやって教えるか迷う。ただ一言、答えてあげれば家に帰れるのである。だけど、さっき教えるわけにはいかない、と言ってしまった。その手前、響にはどうしても素直に答えを言うことができなかった。
響にとっては、どうせ答えても生活の維持のため、使わないつもりなんだろうな……などと考えることもできるのがこの状況である。
灰……焼いた後に残ったもの。しかし、これでクイズを作るなどと到底できるわけがない。
そんなとき、響はこの時代は火を石や木でつけていたことを思い出した。
「ええっとですね、石を二つ、または木の棒を二つ、用意したときにできることによってできるものが関係していますよ。」
「石を二つか木の棒を二つ」
村長は、響から手渡された石二つ、木の棒二本を持って戸惑う。
「一応答えたので、これで帰ってもいいですか?」
「まあまて、お主は森で生活できるのか?」
「いえ……」
だけど響は簡単なサバイバルセットは持ってきていた。今はライセンが持っているが。それを使えば大丈夫なんじゃないか、と響は思う。
「魔物がでるんじゃぞ?」
魔物。それを響は怖がっていない。だってここは地球。たしかに初めにあった魔物というものは恐ろしかったが、本当に恐ろしいものなら放置されているわけがない。そんな期待も、あったかもしれない。
「知っています。」
「食事はどうするんじゃ?」
「我慢します。」
だって、親と会うまでの辛抱だから、そう思う響。
「この近くの村を教えてくれませんか?」
(そうだ、最悪他の村にお邪魔してまた出かければいい。)
「村……あんまり交流はしてなくてなぁ。分からんのじゃ。」
「そうですか……」
その時、響は閃いた。そして、それを実行することにした。
「とりあえず!村にておこぼれをもらえば食事はたぶんできます。心配しなくていいですよ。」
「まあ、それなら。」
どうやら、村長の許可をもらえたみたいだ。
「では、知識は与えましたし……│明《・》│日《・》│か《・》│ら《・》出かけようと思います。」
「うむ、今夜まで泊るんじゃな。」
「はい!」
何を喜ばしげに言っているのか。普通はもうお世話になるべきではなく、さっさと村から離れるべきであろう。そして、村長も村長だ何を当たり前尿に言っているのか……これが、ここの当たり前だったらと思うと、戦慄が走る。