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4.完成品と試作品
すず
はぁ、はぁ、とはげしい息の音が、静かな廊下に響く。
右も左も、真っ白な壁。窓一つない。
振り返ると、遠くの方で「カチャ、カチャ」と、あの偽物の両親が歩くような、硬い足音が近づいてくる。
「……っ、どこまで続いてるの、ここ!」
私は必死に角を曲がり、目の前にあった銀色の重い扉に飛び込んだ。
部屋の中は、うす暗い緑色の光で満たされていた。
大きなガラスの筒が、何十個も並んでいる。
その中には、薄い液体に浸かった「何か」が浮かんでいた。
私は、一番近くの筒に歩み寄り、息を呑んだ。
「……え?」
そこにいたのは、今の私と全く同じ、燃えるような赤髪と青い瞳を持つ少女。
隣の筒にも、その隣にも。
全部、今の私と同じ顔をした「私」が、眠るように浮かんでいた。
筒の足元には、ラベルが貼ってある。
『No.001』『No.002』……。
私は『No.000』。
鏡を見て「綺麗だ」なんて一瞬でも思った自分が馬鹿みたいだ。
私は、ただの試作品に過ぎなかった。
「……ようやく見つけたよ。ユキ」
背後から、あの両親とは違う、もっと若くて冷酷な男の声がした。
「おめでとう。君は、唯一『心』というバグを持ったまま目覚めた、最高傑作の試作品だ」