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終章
『玲へ
あなたにとって私はどんな存在でしたか?
きっと、よく一緒にいる幼馴染、くらいにしか思っていないのでしょう。
あの日、あなたの荷物をぐちゃぐちゃに壊したのは、私です。
他の人にどんなに言われようとも、あなたは私が無実だと信じていたけれど。
あなたは私の自慢の幼馴染でした。
———昔は。
私はいつもあなたの陰にいました。
いつも褒められ、認められるのはあなたでした。
———考えたこともないでしょう?
いつもいつもいつもあなたと比べられ、昔から仲良くしている幼馴染だというだけで比べられ、そのたびにどれだけ私が惨めな思いをしてきたか。
どれだけあなたを妬ましく、憎く思ったことか。
親ですら、私を褒めたことはないんだよ。
あなたと一緒にいるのが苦痛でした。
いつか、小テストが返却されたことがあったでしょう? いつものことだから、きっと覚えちゃいないだろうけど。
いつも通り、あなたは満点を取って、友達たちに持て|囃《はや》され、そしていつも通り、私は半分くらいしか取れませんでした。
家に帰りました。
親に言われてテスト用紙を見せました。親は言いました。
「玲くんは満点を取ったらしいじゃない」
いつも通りの反応です。
でも、それは私を砕くのに十分でした。
あなたを傷つけてやりたいと思いました。
だから、荷物をめちゃくちゃにしてやったの。私、頭が悪いから、それくらいしか思いつきませんでした。
それで。
それで、どうしてあなたは、私を疑わないんですか?
どうして私を、夏祭りになんて誘うの?
私はどれだけ汚れた性根をしているのでしょうか。
でも、もういいです。
もういいの。
もう消えてやります。
私はここにいる価値がないようだから。
さようなら。
もう二度と会いませんように。
川口はるか』