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第3話
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血の気が引く音が聞こえた。
俺はただ苛つく彼奴を殺してやろうと殴り掛かっただけだった。
そうしたら隣の家まで吹き飛んだ。
家まで吹き飛んだ…
……家まで吹き飛んだ…?
________やっちまった。
心の中でダラダラと冷や汗を流す俺に話しかけたのは、能面の様な笑顔を貼り付けた女だった
二十二時。未だちらほらと人が見受けられる時間帯____しかしこの通りに人影は無く、瞬時に必然的に、
俺が吹き飛ばした家の家主だと確信した
「や"、之は違ェンだよ、」
何も違くねェけど。
その笑顔と事実に圧倒されて否定する
『“之”、って何のことでしょうね?』
思わず笑顔も引き攣って
無念にも目が勝手に泳ぎ始める。
「俺は何も知ら………」
『知ら?』
いや、知っている。全てを知っている。
この手で粉々にしてしまった瞬間がフラッシュバックして、俺は心の中で頭を抱えた
切羽詰まった焦りと煮え切った奴への怒りが競り合っている。
『先ず状況説明から善いですよね』
「い"、や、だから之は誤解だ、ッて」
では誤解の部分からどうぞ?
女が否応無しに笑顔を向ける。俺に黙秘権は無かった。今消去された。
その場に冷たく夜の風が巻き上がり、音を立てながら家の破片を転がして行った。
俺が作り出した、粉々の破片。
「………誤解、だ」
フラッシュバックする風圧。
フラッシュバックする|「重力操作」《一言》
フラッシュバックする打撃音。
フラッシュバックする拳の感覚。
フラッシュバックする_____
「…………」
辛い。
簡単にフラッシュバックしてしまう記憶。
___犯人は確実に俺だ。俺しか居ない。
彼奴のせいでも何でもねェ
数分前、俺が家を吹き飛ばした。
「________本ッ当に悪い!!」
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