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アステシアの探し物 2 焼きたてのパンと旅の目的
一日二話公開できた!
翌朝。街の片隅にある小さなパン屋に、場違いなほど鋭い銀髪の少女の姿があった。
シアは陳列棚を凝視し、獲物を定めるような手つきで、丸みを帯びた黄金色のパン――クリームパンを手に取った。
「シアさん、それにするんですか? すっごく甘そうですけど……」
クレアが不思議そうに覗き込むと、シアは眉一つ動かさず、事務的なトーンで断言した。
「……勘違いしないで。このパン切り込みにより食べやすくなっていて、食べるのに時間をかけずに栄養がとれる。つまり、戦闘時間を考慮して選んだまでよ。」
「へえ! さすがシアだ! パン一つ選ぶのにも、戦場での生存戦略が組み込まれてるんだな!」
感心して拳を叩くカイルがトレイに乗せたのは、パンからはみ出すほど巨大なカツが挟まった厚切りカツサンドだった。
「俺はこれだ! シンプルに肉。肉を食えば力が湧く。これこそが、大剣を振り回すためのもっとも原始的で強力な攻撃力ブーストだろ? なあ、シア!」
「……短絡的ね。けれど、タンパク質を短時間で大量摂取するという点では、評価できなくもないわ」
シアが冷淡に、しかしどこか肯定的に評すると、最後にクレアが、色鮮やかなといちごとブルーベリーのデニッシュをトレイに置いた。
「もう、二人とも理屈ばっかり! クレアはこれです。見てください、このベリーの輝き。朝から可愛いものを見て、心が弾めば、索敵の集中力も上がるっていうものです。これこそが、クレアの心の運用効率を上げる秘策なんですよ!」
三人はパンを購入すると、近くの公園に向かった。シアは効率の無駄よ、と切り捨てたが、強引なクレアに抗えなかったのだ。ベンチに座ると紙袋を開けてパンを頬張った。
シアは、溢れ出しそうになる濃厚で甘いクリームを受け止める。彼女のガラス玉のような白い目が微かに、でも確実に泳いだ。
かつての「死神」の指先が、今は血の匂いではなく、温かなパンの温もりと砂糖の香りに染まっている。クレアとカイルも美味しそうにパンを食べている。
「ところでこの旅の目的って何なんだ?」
カイルが言う。三人は仲が良さそうにしているが、旅を始めて三ヶ月。まだまだ知らないことの方が多いのだ。
「世界一美味しいクリームパンを探すことよ」
シアが冷静に告げる。
「えっ、本当ですか!?」
驚いたのは聞いたカイルではなくクレアだった。
「冗談よ。これがクレアの言う心の運用効率よ。」
口の中に広がる甘いの香りが、記憶の扉を叩いた。かつて、同じ匂いの中で誰かが言った言葉が蘇る。
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「君は私がいなくなったら、世界一美味しいクリームパンでも探すといい。」
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「もう!本当は何ですか?」
シアが少しだけ沈黙してから答えた。
「生きる意味、かな」
「何ですか、それ」
ぽかんとする二人を置いて、シアは続ける。
「行くわよ、早くしないと効率が落ちる」
「はい。」
「おう!」
二人は弾んだ声で返事をする。
シアは少しだけ重くなった足取りで、二人の背中を追った。次の街まで、あと少し。エネルギー効率は、悪くないはずだった。