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燐とチェイン チェインと【悠那】②
風野芽衣明
--- 事務所 屋上 ---
チェインは |塔屋《ペントハウス》の上で仰向けに寝転がり、両手を頭の下に入れ枕のようにし 右脚に左脚を重ねるようにして月を眺めながら考え事をしていた。|悠那《ゆな》は屋内への出入口付近で直立不動で待機している。するとチェインは右腕で両眼を隠すようにしながら 深く息を吐く。
チェイン:「・・・・・・ __フゥ__ 気づいた時には ヘイルを殴り飛ばし怒鳴ってた。人が苦しんでるところとか 嫌な奴を洗脳して180度様子が変わって【ご主人様ァ♡♡♡】ってワンちゃんみたいに懐いてくるのを見るのが大好きな私が まさか|燐を庇うような言動・行動に出ちゃう《あんなことをする》なんて」
--- 事務所内 ---
|燐《りん》:「みんな お願いがあるの」
|凍矢《とうや》:「お願い? 急にどうしたんだよ そんな改まって」
燐:「チェインと…… ううん 《《お姉ちゃんとサシで話をさせて》》」
ウルグ:「! り、燐 本気なの?」
燐:「うん。 《《絶対に 絶対に手を出さないで》》。《《ついてくるのもダメ》》だから」
ヘイル:「だ、だg うぐっ!!!(鎖で縛りあげられる)」
燐:「ヘイルは黙ってて。 発達障害扱いされたこと 私まだ許してないんだからね」
ヘイル:「そ、それは…… 無神経な発言してしまってすまなかった……」
燐:「プイッ(そっぽを向く)」
凍矢:「奴の居場所はわかるのか?」
燐:「(ヘイルと一切目を合わせない)うん」
凍矢:「・・・・・・ハァわかったよ。燐のことだ、どうせ止めたところで俺達を倒してでも行くって言いかねねぇか。だが! もしもチェインに操られて俺達に牙を向けようものなら その顔をぶん殴ってでも正気に戻すからな」
燐:「お手柔らかにね、信頼してるよ」
ウルグ:「燐……」
ヘイル:「全然目を合わせて貰えない(´;ω;`)」
ウルグ:「言い方キツイけど 自業自得だと思う。突然発達障害とか言われれば誰だって怒るよ」
ヘイル:「(´・ω・`)」
--- 事務所 屋上 ---
12月の夜にもなると 流石に昼夜の寒暖差が激しく 冷たい風が吹くと ぶるっと震える。悠那に会釈すると 向こうも無表情(に見えるが まあまあ睨んでいる)の会釈で返す。
燐:「チェインーーー! そこにいるんでしょーーー! 隣に座ってもいいーーーー?」
チェイン:「! り、燐!!? ・・・・・・ハァ アンタの好きにすれば? 悠那! 手ぇ出すんじゃないわよ」
悠那:「はい お姉様」
ストっと飛び移ると 燐は|胡座《あぐら》に、チェインは片膝を立てて座るような姿勢になる。
チェイン:「アンタよく場所が分かったわね、証拠は残してなかったはずだけど?」
燐:「何も 当てずっぽうで来たわけじゃないよ」
燐が右手首を撫でるとチャランという音とともに月光を反射し キラキラと輝く鎖が出現する、燐の手から辿るように チェインの右手にも鎖が出現する。
チェイン:「(チラッと鎖を見る) へぇーーー 私に悟らせないなんて なかなかやるわね。抱きついた時に鎖を巻きつけたのか、それも透明状態で」
燐:「ごめん…… ストーカーまがいなことして。お姉ちゃんと話がしたかったんだ」
チェイン:「__フン__ また|お姉ちゃん《それ》か…… まぁいいけど。にしてもお仲間なしなんて 随分と不用心じゃないかしら? わっるーーーーい魔女に魅入られて メロメロにされてしまうかもしれないわよ? 一生戻れないくらい 深ーーーーーい所まで洗脳してあげましょうか? (半目の瞳が怪しく輝き 舌なめずりをしながら 燐の頬を撫でている)」
燐:「やれるものならやってみれば? 私の嫌がることはしないって分かってるからね」
チェイン:「・・・・・・。 チッ! 私もヤキが回ったのかしらね。前はあっさりと アンタのことを操れたのに」
燐:「もしかしたら 《《感化》》されたんじゃないの?」
チェイン:「感化?」
燐:「いや、感化と言うよりは同化なのかな。
多分だけど |駿《しゅん》兄さんに封印される直前 分身体を私の中に潜り込ませて、その時に死んだ双子のお姉ちゃんがいたことを知ったんでしょ? そして 未練として私の中にいた お姉ちゃんの精神体が身体をくれたんじゃないのかな、私のことをよろしくね とかって」
チェイン:「・・・!!!」
燐:「そして守護の|呪《まじな》いが解け、分身体と融合・徐々に変わっていった結果が さっきのあれなんじゃない?」
チェイン:「・・・・・・多分ね」
燐:「私が 初めて心血解放した後 精神世界で会ったチェインは きっとお姉ちゃんの面だったんだね。でも 《《なんでお姉ちゃんの名前が 悠那だって知ってた》》んだろう?」
チェイン:「そんな事 私が知るわけないでしょ? どうせ なんかのタイミングで母子手帳でも見たとかじゃないの? まぁ あのクソ親共が |悠那がいたという事実《そんな証拠》を残すとは思えないけど 。 他愛のない世間話をしに来ただけじゃないんでしょ。
・・・・・・アンタは私に何を望むの? もし ここで死ねと望むのなら 私は喜んで死んでやるけど?」
燐:「(チェインの両手をガシッと握る)そんな事 望むわけないでしょ!!! ただ……一緒にいて 一緒に戦ってほしい、私の別人格:チェインとして ううん 《《私のお姉ちゃんとして これからも近くにいてほしい》》の。もし 凍矢達の顔を見たくない・会いたくないのなら…… 例えば 今の家から一戸建てとかに引っ越して 完全分離の2世帯で暮らす? もちろんすぐ下で私に敵意を向けている方の悠那お姉ちゃんも一緒に。
紆余曲折あったけれど…… チェインと 悠那お姉ちゃんと これからも一緒に生きていきたい、それが 私の【望み】だよ」
悠那:「・・・・・・」
チェイン:「ふーん 一緒にいてほしい・一緒に生きていきたい か。てっきり【さぁ お前の罪を数えろ! 今ここで罪を償うために 死んじまえ!!!】って言われるのかと思ったわ。ちょこっとだけ拍子抜け。
・・・・・・・・・__2世帯……__ __2世帯ね……__ __プッ__ アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
燐:「ちぇ チェイン?」
チェイン:「に、2世帯ってwwwwww 結婚じゃないってのにwwwwww やっぱ |燐《アンタ》はネジがぶっ飛んでるわ 言葉のチョイスがおかしすぎwwwwww ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!
……ふぅ お腹がよじれるくらいには笑わせてもらったわ。2世帯かw 他の奴らが敵対心むき出しだろうけど 障害が多ければ多いほど愛は激しい炎をあげながら燃えていく、__私の寵愛は燐のもの…… だし♡♡♡__ でも 私を野放しにして後悔はないのかしら? いつ私が燐の心を奪うか分からないわよ? 深ァ〜く深ァ〜く洗脳して 私しか考えられない 自我を欠いた操り人形にしたり・ スイッチを仕込んで|連続殺人鬼《シリアルキラー》として操ってしまうかもよ?(胸をドスドス つつく)
それでもいいのかしら?(正面から燐の顔を両手で挟み 見据えるようにしている)」
燐:「その時は 精一杯抵抗してあげるよ、私だって簡単には堕ちてあげないから」
チェイン:「フフッ その綺麗な紅い目を曇らせる日が楽しみね。
・・・・・・さてと(指を鳴らす) 扉を開けてさしあげなさい」
悠那:「はい お姉様」
悠那が扉を開けると ウルグとヘイルが乱暴に放り投げられ、凍矢と拓花は 一言も発することなく虚な瞳のまま ぼーっとしている。先程 チェインが指を鳴らしたことで 凍矢と|拓花《ひろか》は再び|催眠状態になっ《あやつられ》てしまったのだった。
ウルグ:「痛っ!」
ヘイル:「痛ぇ!」
凍矢 拓花:「・・・・・・」
チェイン:「( |塔屋《ペントハウス》から飛び降り 指に髪をまきつけている) まったく盗み聞きなんていい趣味だこと(指を鳴らす)」
燐:「( |塔屋《ペントハウス》から飛び降りて チェインの後ろから覗き見る) み、みんな どうして……!」
凍矢:「ぐっ……(頭を押さえる) また奴に操られていたのか……。__あっ__ り、燐……! その 悪かった!!! 燐の言葉を疑ってたわけじゃなかったんだがな? どうしても奴と2人きりにさせるのが不安になっちまって ドアの影から一部始終 聞いていたんだ」
拓花 ウルグ ヘイル:「右に同じ……です………」
チェイン:「・・・あらあら 沢山の仲間に愛されてて何よりだわ(バックハグで腕をまきつけている)」
燐:「私も みんなのこと大好きだよ 当然チェインも♡」
凍矢 拓花 ウルグ ヘイル:「(もう 2人が飽きるまで このままにさせとこう…… 【報復】が怖い)」
こうして 燐 凍矢 拓花 ウルグ ヘイル のパーティに 改めてチェイン(チェインの召使いとして悠那も)が仲間に加わった、チェインと 燐以外の面々との間にそびえ立つ壁が崩れるのはまた別のお話………。
--- 数日後 ---
あれから賃貸一戸建てへ 本当に引越した。前の事務所と同じく 逢間中央駅に程近い場所・1階を燐達の仕事場兼リビングダイニングにし、2階を寝室スペース・チェインと悠那のリビングスペースにすることになった。1階を通って上がることもできるし 外付けの階段から2階に直接上がることもできるという超優良物件だった。毎食毎食チェインの所へ 持っていく訳にいかなかったこと・チェインも凍矢の作る食事がお気に入りだったため、完全分離と言いつつ 食事は全員でとり たまに1階でも過ごしている。
燐:「チェインーーーーーー。 捜査疲れたよ…… 」
チェイン:「(ソファに座り 雑誌を読んでいる)おかえりなさい、燐。 随分とお疲れね」
燐:「事件捜査がちょっと難航しててね」
チェイン:「(パタンと雑誌を閉じる)ふーーん。 アレ やる?」
燐:「うん」
チェインは 前に|朱星颯《あけぼし そう》/|具現《マテリアライズ》へ使った【紫色の煙を出しながら ゆっくりと怪しく点滅する珠】を出現させる。 |芳香《フレグランス》を濃い煙として放出させたものを吸い、珠の 怪しい光を見つめ続けると 光が消えた とろんとした目で ぼーーっとした様子になり 前後に静かに揺れている、つまり催眠状態に陥っていた。チェインが膝をトントンと叩いて合図をすると 見えない糸に操られるように フラフラと近づいていき チェインの膝に跨り 顔や胸にピトッと顔をくっつけ 時折 顔を擦り付けている、自身の分身体を使うことで 珠を見続けさせ |芳香《フレグランス》の濃い煙を吸わせ続けていた。だんだん燐の瞳の中に濃いピンク色のハートマークが浮かび上がり 、あと僅かで|魅了洗脳《メロメロ》状態は完成するところまで来た。
チェイン:「燐は この香りや珠の光を見るのが、つまりは《《私に洗脳されるのがだーーーいすき》》だものね。 アンタは |芳香や珠の光の《コレらの》中毒者…… 私のことしか考えられないわよねぇ?(以前と同じチョーカーを首につける)」
燐:「お姉ちゃんの……匂い……♡♡♡ 大好きな……甘い……香りで…… せんのう……される♡♡♡ わたしは……おねぇ……ちゃんの……あやつり……にんぎょう…… おねぇ…… ちゃんの……とりこ……♡♡♡ しあわせ…… もう…… もどりたく……ない……♡♡♡ おねぇ……ちゃんの……ものに……なりゅ♡♡♡(胸に顔を埋める)」
チェイン:「あっけないw こ〜んなあっさりと|洗脳され《堕ち》るなんて |何《な〜に》が【精一杯抵抗してあげるよ、簡単には堕ちてあげないから】よ、どの口が言ってんだかwww (|声色《ボイス》で より蕩けさせる)捜査のことなんか忘れて、永遠に私のものになりなs……」
凍矢:「(ドアを蹴り開けて入ってくる) チェイン!! 燐を返せ!!」
チェイン:「チッ アンタか、なんの用? 今 燐は幸せな中にいるのだから」
燐:「♡♡♡♡♡♡」
凍矢:「テメェ 結局はそうやって燐を洗脳して 悪事を働かせようとしてんじゃねぇか!!! チョーカーまで着けやがって!!!」
チェイン:「(燐の頭や体を触りまくる)確かに洗脳しているのは認めるけど 別に なーーーーーんにもしないわよ。 燐の顔を見てると 前みたいに《《何かを企むのもバカバカしくなった》》わ。それに! あの後 アンタの|消《イレイズ》を受けたの 忘れてないでしょ? これはあくまでも【遊び】、ただのヒーリングなんだから。燐とも合意の上よ」
凍矢:「ふん、何が合意だよ……」
チェイン:「今度こそ 何かを企んだりなんかはしていないわ」
凍矢:「正式に俺たちの仲間になった ってことでいいんだよな」
チェイン:「別に好きにとれば? アンタに了承を得ようとは思ってないから」
凍矢:「あっそうかよ」
燐:「(メロメロ完了)お姉ちゃん♡♡♡ お姉ちゃん♡♡♡ お姉ちゃん♡♡♡ だいしゅきだよ♡♡♡ しゅきしゅき♡♡♡♡♡ お姉ちゃん チュー♡♡♡♡♡♡♡」
チェイン:「!!!!?(いきなりディープキスされる)」
凍矢:「うわぁ……」
あまりの惨状に気が遠くなり ふらっと倒れそうになるが 咄嗟に |形態変化《モード》:アルラウネを使い 怪人態となることで|魅了・洗脳《目の前の出来事への》耐性を付与した。 袖を突き破ったり意識が乗っ取られることこそ無くなったが、頭にクリスタルのような花が咲いたり 服に移った鎖の模様から花が咲いたり 全身に鎖の紋様が見え 目にハートマークが浮かぶのは健在だった。
チェイン:「あら 久しぶりにその姿を見たわ。そうか 自在にコントロールできるようになったんだっけか、魅了耐性も付与できるのね。目にハートマークが浮かんでるけど?」
凍矢:「怪人態になったら|目にハートマークが浮かぶ《こうなる》んだから放っとけ!! それよりも《《燐様》》は 大丈夫なんだろうな!!?」
燐:「あっはははぁ♡♡♡♡♡ おねえちゃん♡♡♡♡♡ 今夜は寝かせないからねぇ♡♡♡♡♡」
チェイン:「うーん、流石にやりすぎたかもしれないわ……。しっかり時間をかけて|消《イレイズ》を使えば影響は残らないはず。 もうちょっと2人で遊んだら そっちに行くから 夕食よろしくね♡♡♡」
凍矢:「ハァ〜 わーったよ……。 燐様のこと頼むからな(人間態に戻る)」
チェイン:「はいはい。燐は メロメロ状態になるとキス魔になるのね…… 知らなかったわ。これではシリアルキラー化させるのは無理そうかな、罪を犯しすぎて私たちが路頭に迷っちゃう。洗脳しておもちゃにするのが限界ね。
それにしても怪人態って言い方に 燐様か、意識こそ保ってるけど 案外染まってるじゃない」