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#7
昼休み、誰もいない渡り廊下
「あー!もう、九郎のバカ! 意地悪ばっかり言って!」
はじめがぷくっと頬を膨らませて怒っていた。
さっきクラスの男子とはじめが楽しそうに話しているのを見て、九郎が
「あいつ、お前のことバカにして笑ってたぞ」
なんて意地悪な嘘をついて追い払ったからだ。
「……別に。本当のこと言っただけだろ」
九郎は壁にもたれかかって、そっぽを向いている。でも、その目は少しだけ寂しそう。
「嘘だもん! 九郎、私のこと困らせて楽しんでるんでしょ!」
はじめが詰め寄ると、九郎はいきなりはじめの肩を掴んで、自分の方へ引き寄せた。
「わっ……!?」
勢い余って、二人のおでこが「こつん」とぶつかる。
あまりの距離の近さに、はじめの言葉が止まった。
「……。お前、鈍すぎ」
九郎の声が、おでこを通じて直接脳に響くみたいに低く響く。
おでこをくっつけたまま、九郎がじっとはじめの瞳を覗き込んできた。
逃げようとしても、九郎の手が肩をガッチリ固定していて動けない。
「……九郎、近いよ……顔、全部見えちゃう……」
「見ろよ。……お前が他の奴と笑ってるの、俺がどれだけイラついてるか、これで少しはわかったか?」
九郎の瞳は、いつものクールさとは正反対に、熱くて、独占欲でドロドロだった。
「おでここっつん」したまま、九郎がさらにぐいっと自分の額を押し付ける。
「……俺だけ見てろって言っただろ。……バカはじめ」
「……っ。……うん。九郎だけ見てる。……見てるから、そんな悲しそうな顔しないで?」
はじめが九郎の服の裾をぎゅっと握ると、九郎はやっと小さくため息をついて、おでこを離した。
でも、その顔は耳まで真っ赤。
「……。……放課後、アイス奢ってやる。……だから、あいつのこと思い出して笑うなよ」
九郎ははじめの頭をガシガシと乱暴に、でも愛おしそうに撫でて、足早に歩き出した。