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最後のありがとう
病院内での「ありがとう」。
実際にあった話を元に作りました。私の祖父母の物語です。
「もう病院に来なくていいんですよ、大変でしょう?」
「俺が来たいから来てるだけだ。」
「ご自分の体を大切にしてほしいんです。」
「俺だってそう思ってる、いつまでも生きていてほしい。」
「私は長くないですよ、いくらなんでもその頼みは聞けません。」
「…わかってる。」
今にも妻が埋もれそうなくらい機械がベッドの周りに置いているのだからわかっている。でも、癌だなんて受け入れられるはずがない。
「また明日来る、何かあったらすぐに言ってほしい。じゃあ。」
「あなた、私…して欲しいことがあります。」
「なんだ?」
「好きと言ってほしいんです。」
「また、また今度な。」
ー次の日ー
「え…体調が急変…?」
「はい、今夜までだと思います。」
医者が淡々と話す中、俺だけ理解ができてなかった。今夜まで?明日はもういないのか?
「妻の…妻の最後を見届けてさせてください…」
ふらついた足取りで病室に向かう。一分一秒でもそばにいたい。
「来たぞ、体調はどうだ?」
「今夜までの命…とても体調がいいとは言えませんね…」
「苦しいなら無理して喋る必要ない。」
「私は喋りたいです、最後ですから…」
「最後ならしっかり言っておこう。好きだ。これからも、ずっと。」
妻は嬉しそうに「ありがとうございます」と言った。そして、その言葉を聞けて安心した様に目を閉じ、帰らぬ人となった。
今までありがとう…
失って気づくものってたくさんあると思います。
だから、後悔する前に「ありがとう」の一言を言ってみませんか?