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3.クランは、ただの日々を謳歌する
朝。起床。
そして、着替え、髪の毛の手入れをされながら、サリアとあの日気付いたことは1日言ってはいけない、という「約束」を交わす。
そして、出かける。
カナンとサリアを連れて。
昼。
都の有名なものを食べる。
夜。帰寮。
食堂で夕食を頼む。
◇
あるときは、海に行った。
「これが海なのね!」
「はじめてみました……」
「|私《わたくし》めも僭越ながら初めて海というのを見ました」
「これ、触っていいのよね?」
「「はい」」
そういって海の水を触ってみると……
「冷たっ!」
「おおーこれは冷たいですなぁ」
「冷たっ」
カナンもサリアも触ってくれた。
◇
あるときは、作物を育てる手伝いをしてみた。
「助かりますよ。来てくれてありがとねぇ」
「構わないわ。わたくしもたまには運動もしたいもの。しかも美味しい昼食を振る舞って頂いたもの。気にしないで」
「そうですよ」
「まぁお嬢様ですからなぁ」
カナンは何か言いたげのようだわ。
ちなみに、この日の昼食はとても美味しかった。農家の方がおごってくれたのよ。
(※貴族の場合、農業の手伝いなど普通はしません)
◇
あるときは、学園の図書館に行った。
この日は、新たに買った制服を着ていったわ。
ここからの会話は全部小声よ。
「すごい図書館ね」
「いやはや素晴らしい。今日は一日中いる予定ですか?」
「そうよ」
カナンに答える。
「フィメイア学園より素晴らしいわ……」
そういうわたくしは、本の多さに圧倒されていた。
「ここって、貸し出しは出来るのかしら?」
「どうでしょうなぁ。まだお嬢様は学生ではないですから」
「そうよね……」
本を借りれないことは残念だわ。
その後、
「え!?」
その本の存在を知ってからずっと読みたいと思っていた本を見つけてしまったの!
ずっと昔に書かれていた本で、数がそんなに残っていないと聞いてきたわ。まさか学園の図書館に置いてあるなんて……!
素晴らしいわ。早くこの学園の生徒になりたいわね。そしたらこれを借りられるもの。待ちきれないわ。
◇
またあるときは、森に行ったわ。
魔物も基本的には同じだった。
「あ! コンクルートだわ!」
久しぶりに見た気がするわね。
「ひぇ〜」
あら、サリアが怖がってしまっているわ。そう言えば、サリアもカナンも狩りについてきてもらったのは初めてかもしれないわ。
こんなに怖がっているのなら……連れてこないほうが良かったかしら?
(※一般に、コンクルートが出てくることは平和とはいいません……初心者の場合)
◇
またあるときは船に乗った。
冬だけど、海にも魔物はいるのでそれを倒しに行ったわ。
海にいるから船からでしか倒せないのだけど……それが意外と難しかったわ。簡単な魔物は顔の……呼吸をしているというエラの周りを空気で囲うことで窒息死させられたのだけど、暴れる魔物だとそれを超えて水と触れてしまったわ。そういう魔物には、水刃を差し上げた。水刃はあまり使いたくないよね。便利過ぎて、他のもの使おうとしなくなってしまうから。
この日は、あまり運が良くなかったようで、かなり強いと言われている魔物は出てこなかった。残念になりながら帰った。
そして、次の日もまた船で魔物退治に出かけた。
一応言っておくと、この船は漁で使ってるものにのせてもらっているのよ。本船が留まる場所を決めたら小舟で別行動をさせてもらったの。
そしたら今度は大当たり、|王蟲《オウム》が出てきてくれたのよ! 真下にいたのだけど。これは嬉しかったわ。だって王蟲なんてレアなのよ!
二日目でこれに出会えるなんて、わたくしの運はなんということでしょう? 神々が何かしているのかしら? と思わず疑ってしまったわ。
そして、王蟲を倒して帰ったわ。王蟲は部分が貴重な素材だったり、高く売れたりするから、この日は一日中幸せだったわね。
(※王蟲は普通は一人では勝てません)
◇
そして、そんな風に過ごしていたら、いつの間にか新年になっていたわ。
新年には、このサスティーナ国はお祭りを開催しているみたいなの。
それにも参加してみたわ。
あれは……そう、食べ歩きっていうだったわよね? 歩きながら食事をするの。サリアには公爵令嬢らしくない、と怒られてしまうのよね。
あちらではあまりできないのだから、今、ここでやりたいと思うのは道理ではないかしら?
そんなかんじだったけれど、とても楽しかったわよ。
イベントも行っているようで、魔術競争とかもあったわ。
わたくしはこの前の交流戦の時に大抵で最大のやつを超えてしまったというのにどうやるのかしら? と思っていたら、上に打ち上げて、落ちてくるまでにかかった時間で競争していたわ。
あぁ、それならわたくしも参加すれば良かったわ。そう後悔してしまった。
他の日は……
他の日は……
そう、ずっと平和に過ごせたのよ!
素晴らしいと思わないかしら?
「あら、クラン。どうしたの?」
「あ、ネイラ先輩。いえ、未だネイラ先輩くらいしか学園で喋れる方がいないことにショックを受けているだけよ」
あのあと、ネイラ先輩にはよく話しかけてもらっていて、学園の中では一番仲のいい方になったわ。
……まあ、それ以外の方と、全然話さないからそうなってしまうわよね。
「え? そんなことを気にしていたの? じゃあ紹介しようか?」
「いいのかしら?」
こんな簡単に紹介してもらえるの?
「いいわよ。けれど条件があるわ」
条件? 別に並大抵のものだったら飲むわよ?
「それはね、あなたの実力を教えてもらうことよ」
あら? そんなことでいいの? 至って当たり前の条件じゃない。
「構わないわ。いつがいいかしら?」
「今からでも大丈夫?」
「ええ」
「じゃあ今から行きましょう」
「分かったわ」
それにしても、一体どこに行くのかしら?