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あの場所で、また君と。
はらり
桜がさく頃、いまでも君を思い出す。
玲桜:ねえ、彩香、見て!桜だよ!ぼく、桜大好きなんだ
彩香:わあ、ほんとだ!桜って、綺麗だよね
僕たちは、幼稚園で初めて出会った。お母さんたちもびっくりするほど仲良しで、どんなときもずっと一緒にいた記憶だけが残っている。
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そこから僕たちは入学し、クラスが離れ離れになった。そのまま6年間クラスが同じになることはなく、何となく2人ともお互いの存在を忘れて、ほかの友達と仲良く過ごしていた。
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そうして僕たちは中学校に入学した。
玲桜:えっと、僕は…1-Aか。友達は…
彩香:やっほ、玲桜。覚えてる?私だよ!わ・た・し!
玲桜:ああ、彩香。久しぶり。
彩香:久しぶりだね。
長い間あっていなくて、ふと見ていたら昔は彩香のほうが背が高かったのにいまでは僕のほうが高くなっていた。彩香は、なんだか昔よりももっと可愛くなった気がする。なんだかかみもサラサラで…
彩香:何、見てるの?
玲桜:いや、なんでもないよ///
彩香:顔がすっごい赤いよ。あーもしかして、私のかみにパンがついてるとか?ごめん、今日の朝パン食べてきたんだよ。そのせいかもしれない
玲桜:あーまあそんな感じ。じゃあ、とりあえずまた教室でね
彩香が鈍感でよかった。僕は足をはやめて教室まで行った。
でも、それから彩香とは特に何もなく、日々だけが過ぎ去っていった。ただ、何となく彩香の方を見てしまう。この気持ちはなんなんだろう。それは、今までに感じたことのない不思議な気持ちだった。
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10月
(教室のドアがあく音)
彩香:玲桜、教室で1人で何してるの?
玲桜:文化祭の準備だよ。お化け屋敷やるんだけど、絵がうまい人が僕しかいなくて任されちゃったんだ。
彩香:ふーん、大変そうだね。私も手伝ってあげようか。
玲桜:彩香が手伝うと大変なことになりそうだから大丈夫。あっでもせっかくきてくれたし、ちょっとお願いごとしてもいい?
彩香:いいよ
玲桜:ロッカーの上にあるペンキ、とってくれない?
彩香:OK、任せて!ヨイショ、ヨイショ
玲桜:…危ない!
ガタッ ドサッ 僕たちの体が重なり合う。途端に顔が赤くなって行くのを感じた。僕らはそのままかたまってしまった。
彩香:…玲桜、とりあえず一旦降りて。
玲桜:ごめん
そこからしばらくかたまって沈黙が続いた。
彩香・玲桜:ねえ
玲桜:あっごめん。先いいよ
そして彩香がゆっくり口を開いた。
彩香:最近なんだか暇さえあれば玲桜のことを見ちゃうんだ。なんかぼーっとしてたら玲桜の方を見ているというか。
玲桜:僕もそうなんだ。なんか彩香のことをずっと目で追ってしまうというか。
彩香:この気持ち、なんなんだろうね。
その日、かわした言葉はそれだけで、それっきり恥ずかしくてあまり彩香と話せなくなってしまった。だが、なんだか不思議な気持ちはいつもかわらない。
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11月
朝、いつもと何も変わらぬように登校すると、僕の下駄箱にこんな手紙が入っていた。
「放課後、屋上にきてください」
僕はなんだろうと思いながらその手紙をポケットにしまった。何事もなかったように自分に言い聞かせるがその日は全然授業に集中できなくて先生に何回も注意されてしまった。なんだか自分の鼓動がいつもより高まって、苦しいわけではなく何かに期待しているような感じ。
放課後、僕は屋上に行った。すると、待っていたのは彩香だった。
彩香:ごめんね、呼び出して。
玲桜:全然だよ、手紙の送り主は彩香だったんだね。それで何、用事って?
彩香:私ね、文化祭で準備をした日から、一ヶ月考えたの。この気持ちってなんだろうなって。それでついに答えが出たんだ。
玲桜:何?答えって
彩香:ずっと前から玲桜のことが好きでした。付き合ってください
玲桜:…!?
彩香:…
玲桜:…もちろんです。僕も彩香のことが好きでした。付き合ってください!
そうか、僕が彩香に対して抱いていた感情は紛れもなく「恋」だったのかもしれない。
なんだか心のモヤモヤがとけたような気がして僕は鼻歌まじりに帰った。
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そうして次の日。僕は教室に入って真っ先に彩香を探した。…いない。いつもだったら彩香は僕より先に登校しているのに。なんだか胸が嫌な音をしてドクンドクンとはねた。いや、まさか。そんなわけない。もう少ししたら彩香が笑顔で登校してくるはず。
先生:座ってください。みなさんに大事なお話があります。彩香さんが昨日、道で…
生徒:…!?
僕は走った。彩香がいるはずのところまで。
玲桜:…彩香!
彩香:ああ、玲桜。きてくれたんだね。
玲桜:どうしちゃったの
彩香:昨日、事故にあって病院に運ばれたらしいんだよ。だいぶ重傷だって。
玲桜:大丈夫なの!?
彩香:命に別状はないらしい。ただ治すには3ヶ月間、病院に入院して、治療をおこなわきゃいけないんだって。
玲桜:そんな…ごめん、僕が昨日用事があって1人で帰らせたから…
彩香:玲桜は何も悪くない!…ただ、気が浮かれててフラフラしてたら車に引かれちゃったんだよね。
その日のやりとりは、あまり覚えていない。ただ、すごく悲しかった事だけは鮮明に覚えている。
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それから僕は毎日、病院に通った。そしてとうとう退院まで一週間。
彩香:玲桜が毎日きてくれてるおかげでもうすぐ退院できそうだよ!ねえねえ、退院したらさ、3/1とかにこの遊園地に初デートしにいかない!?
玲桜:いいね。そのために早く元気になってね!
彩香:うん、絶対に私、元気になるよ!
僕は、悲しみを乗り越えた。もう神様、僕たちをずっと幸せにしてください、もう2度と彩香を失いたくないです。その日は彩香と話すのに夢中で一日中病院にいた。
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もうすぐ彩香が退院だ。楽しみだな。退院したらいろんな思い出作りたい。そんなことを思っていると病院から電話がかかってきた。なんだろう
玲桜:はい、もしもし。
看護師:落ち着いてください。彩香さんが…
玲桜:…彩香
彩香:ごめんね、玲桜。大好きだよ。
玲桜:待って、彩香。いかないで!
僕が握っている彩香の手はどんどん冷たくなっていき、何も言葉を返してくれない。
玲桜:そんな!こんなのあんまりだよ、神様!
そこから僕は悲しみで家に何日か引きこもってしまった。でもある日、何となく病院に行こうと思った。もしかしたら彩香がいるかもしれないって。
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看護師:すみません、玲桜さんですか?
玲桜:はい、そうです。どうかしましたか?
看護師:彩香さんからこんなものを預かっていて、受け取っていただけませんか?
僕は何がなくその封筒を開いてみた。そうすると、中には小さなメモのはし切れ、彩香がかいた絵、そして桜の花びらが入っていた。
玲桜:これは?
看護師:彩香さん、本当はあまり病状が良くなってなかったんです。でも、玲桜さんには伝えないでと言われていて。彩香さん自身も、もうすぐ自分がこの世から去ってしまうことを自覚してたんでしょうね。そしたら、あの日、部屋を覗くと彩香さんがいなくて。病院全体で探したんです。そうしたら、救急車で彩香さんが運ばれてきて。話を聞いて見たら、桜の花びらをつみにいってたらしいんです。でも、怪我は完治していなかったから歩く足が慣れていなくてまた事故にあってしまったんです。その後、この封筒を彩香さんから受け取りました。「これを玲桜に渡して」と。多分、手紙に何か書いてありますよ。
僕は、その手紙を読んで見た。
「玲桜へ いっぱい心配かけてごめんね。このまえ、桜の花びらをつんできたんだ。ほら、幼稚園のとき好きだって言ってたじゃん。また私が元気になったら2人でお花見に行きたいね。絶対に元気になるよ! 彩香より」
みると、彩香のちょっとおぼつかない線で僕と彩香の似顔絵が書かれていた。僕の目から涙が溢れてきた。
玲桜:…彩香のバカ。元気になるって言ったじゃん。
看護師:彩香さんは最後にこんなことを言ってました。「玲桜、泣かないで。私の分まで生きて」って。きっとその桜の花びらには彩香さんのエールが込められてると思いますよ。
玲桜:ほら彩香、今年もきたよ。
僕は毎年3/1になると花びらと手紙と絵を持って、約束していた遊園地にいく。もしかしたら天国から一緒についてきてるんじゃないかと思って。
玲桜:もうすぐここの桜の木も咲きそうだね。そうしたらまた一緒にこようね。約束だよ。