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**好きが重なった日**
金曜日の夕暮れ。
蓮から、ぽつりと一言だけLINEが届いた。
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「会って、話したいことがあります」
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駅で会ったとき、蓮は少し緊張したような顔をしていた。
「……向日葵さん。僕……もう一度、ちゃんと言いたくて。」
柚子月は、息を飲んだ。
「昔の思い出だけじゃなくて、“今”の君が好きです。……もしよかったら、僕とちゃんと向き合ってくれませんか。」
——返事は、決まっていた。
「うん。……私も、あなたが好きです。」
その瞬間、電車が通り過ぎて風が吹いた。
それはまるで、紫陽花の花びらを優しく揺らすような——
“はじまり”の風だった。
第1章完結(1話〜10話)
——ふたりの再会と、気持ちが重なりはじめた“はじまりの章”。