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みんみん。
「ちっ、またハズレかよ」
そう言って兄ちゃんはハズレ棒を道端に投げ捨てた。僕はその軌道をゆっくり追いかけた。蟻が兄ちゃんのハズレ棒に向かって近づいていった。触覚を振り回している。きっと少し残ったソーダ味のアイスが食べたいんだろう。僕も最後まで食べればいいのにと思う。
「兄ちゃんはやく公園行こうよ」
新しく手に入れた虫籠がカシャリと鳴る。みーーんみんみんみん。近くに蝉がいるみたいだ。
「わーかってるって!」
兄ちゃんは僕の手を引いて森へ入った。ここに来るのは初めてだ。薄暗くてなんだか怖い。でも兄ちゃんが手を繋いでいるから何があっても大丈夫な気がした。みーーーーんみんみんみん。
「蝉近いね、兄ちゃん。」
「あ!!いた」
兄ちゃんは大きな木の幹を指さした。木の色と似てたから気づかなかった。兄ちゃんはすごい。透き通った羽がすごく綺麗だ。兄ちゃんは手で煩く鳴く蝉を掴んだ。蝉は羽を懸命に動かして出ようとした。掴まれたらそう簡単には逃げられない。ミッミッと変な声を出している。暫くそうしていたけど、急に兄ちゃんの手からするりと蝉が出てきて、暗い森の中に消えて行った。蝉の羽のかけらが兄ちゃんの手のひらからポロポロと落ちた。羽が片方折れているのか、飛び方が変だった。兄ちゃんは片手を怪我してるから仕方ない。もう片方も青くなってるとこがあった。お兄ちゃんは悔しそうな顔をしていた。僕も悔しい。
僕はもう夜が近いことに気がついた。お日様が消えかけている。
「兄ちゃん、家行かなきゃ。遅くなると怒られるよ」
兄ちゃんは返事をしなかった。兄ちゃんは笑ってなかった。
「もっかいアイス食おうぜ」
そう言いながら兄ちゃんは並んでいるソーダ味のアイスを取った。走って駄菓子屋を出る。後ろの方で駄菓子屋のおじさんが怒っている声がする。でも兄ちゃんは気にしなかった。べーと舌を出してみせた。僕も真似して舌を出した。
兄ちゃんは大きく口を空けてアイスにかじりついた。食べながら家の方を見た。兄ちゃんは目をまん丸にした。そして急いでアイスを食べて棒を見つめた。
「今日は当たりだな!ラッキー」
そう言いながらアイスを道端に投げ捨てた。まだアイスが残っているのは蟻さんにあげるためかな。半分食べられたソーダ味のアイスから当たり棒が飛び出ていた。蟻がわらわらと集まってくる。兄ちゃんはご機嫌だった。僕が家を見ると、僕の家に警察官がたくさんはいっていった。
「なんでかなあ」
僕は言った。赤色の明かりがくるくる回っていた。兄ちゃんはにこりと笑った。兄ちゃんが笑ってるから僕も嬉しい。
兄ちゃんはお母さんに殴られた腕で僕を掴んでご機嫌で歩いて行った。
みーーーーんみんみんみん。どこかからまた聞こえ始めた。