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本編21
「…………」
いつの間にか、スマホの通知が溜まっていた
しばらく電源を落としていたからか…
ネットはすでにやめているし、ニュースもまともに見ていない
なんて言われるか怖かった
たくさんのファンの方を、不安にさせてしまった
「…よく考えたら最低じゃないか」
自分勝手だろうか
正解も不正解もわからない
「とりあえず既読だけ…」
何日かぶりにスマホを開いてメッセージをチェックする
彰人や冬弥からの通知がすごいな、電話もかかってきている…
「…冬弥も、知ったのか」
憧れの先輩がこんなになっていて、失望しただろうな
あいつが好きなのはキラキラしたオレだ、今のオレには取り繕う余裕なんてない
「どんな風に返信すればいいのだろうか…」
---
爽やかな風が吹く
蒸し暑い空気とは違い、初夏を感じられる心地いい風
「こんなんじゃ夏、思いっきり楽しめないよ…」
とーやくんから教えてもらった
お兄ちゃんが、人を切ったという話
そんなことするわけない
ましてや、お兄ちゃんがいじめられる理由なんてそう思いつかない
その女の人は何が気に入らなかったんだろう
「…わかんないなあ」
ぼーっとスマホを眺めていたら、通知が鳴った
「うわわ!?マ、マナーモードしてなかった…!」
恥ずかしい…とか思いながらアプリを開く
「……………」
「あ…話題になってたミュージカル、明後日からなんだ…」
「お兄ちゃんと…観に行きたかったな…」
今お兄ちゃんにショーやミュージカルの話をしてはいけない
きっと、思い出させてしまうから
そんなの嫌だ
「…我慢しないと」
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司先輩から連絡がきた
心配かけてすまない、俺は大丈夫だ…と。
「…そんなわけがない」
学校もキャストもやめたくせに
大丈夫だなんて無理矢理すぎる
俺は何をすればいいのだろうか、司先輩は何を求めているんだろうか
もっと積極的に行動した方がいいのだろうか
「おっはよー!」
教室の扉がガラッと開く
聞き覚えのある明るい声
「暁山…?」
「あ!冬弥くん久しぶり!今日は気が向いたから学校来たんだよね〜♪」
「そうか…久しぶりだな」
「…?なんか元気なくない?大丈夫?」
「えっ、と…」
「…司先輩のことで…」
「……冬弥くんも知ってたんだ」
「ああ、つい最近教えてもらったばかりだが…」
「ボクもちょっと悩んでるんだよね〜、なんとか司先輩と会いたくてさあ…なんかイベントとかないかな?」
「……………」
「…あ、そういえば、来週駅前に新しい雑貨屋がオープンするって…」
「えっ?」
「…それじゃん!それだよ冬弥くん!司先輩と一緒に行こ!!」
「え…先輩と…?」
「あー2人っきりは緊張する?それだったらボクもついてくけど…」
「というか普通に雑貨屋さん行きたいから一緒に行くね!」
「あ、ああ…それは構わないが…」
「…そんな簡単に会ってくれるか…?」
「大丈夫大丈夫!ボクこの前司先輩とカフェ行ったし!」
「昔から仲良い冬弥くんとなら尚更来てくれるよ!」
「そう、か……」
「…わかった、俺の方から誘ってみる」
「うん…きっと大丈夫だよ、普段通りね!」
「ああ、じゃあまた後でな」
「はーい!じゃあ冬弥くん、授業頑張ってね〜♪」
授業、出ないのか…
…とりあえず、暁山もいつも通りでよかった
「あとで彰人にも話しておかないとな…」