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天才ちゃん!10
「さーて、明日が待ちに待った校外学習だ。ここに全班分の行動予定が書いてある。もう変更不可能なので、みんなに見せようと思う。興味があれば、暇なときでも行ってみろ。」
そう言って配ってくれた。
わぁ、みんなちゃんと博物館系に行っている。
科学館に、トリックアート博物館なんてやっているのは私達だけだ。
え!?〇〇博物館!?今、特別展がすごいと人気の!?
いいなぁ。今度行かなきゃだ。
「じゃ、これで授業は終わりだ。」
「|起立《きりーつ》。気を付け、礼。」
「ありがとうございましたー。」
「楽しみだねー。」
乃蒼ちゃんだ。
「ね、この前の博物館のとき私いけなかったから嬉しい。」
うん、かわいい。
「それはうれしいなー。」
当日。
「気を付けてなー。」
先生に見送られて、学校を出る。
「うわ、何この背徳感。楽しー。」
と、大貝くん。
「だな。」
そして、それに同意する高麗くん。
「背徳感?特にそんなのなくない?」
「いやー、あるよー?」
「しずちゃんは持っているわけ?」
「うん、うちは持ってるよ。」
「ふーん、変なの。」
電車に揺られること数分、目的地に着いた。
「ここがトリックアート博物館かぁ。」
「そういや、みんなこんな勉強関係じゃないところ選んじゃっているけど、勉強は大丈夫なの?」
聞いてみた。
「俺は問題ない。」
「僕は問題ありまくりだけど、息抜きとしてこういうのも必要だと思う。」
「私は塾行って何とかなっているし…」
「うちは、大丈夫かなぁ。」
「うちは、大丈夫じゃない」
「…。」
一同、|黙祷《もくとう》を捧げる。
「まあ、去年、このクラス目指して頑張っていたとき見たく頑張ることはできるはず、だよね?いざとなれば。」
「もちろん!」
私の問いかけに勢いよく答えるしずちゃん。
まあ、火事場の馬鹿力ともいうし、なんとかなるだろう…しずちゃんの場合は。
「よーし、うちは楽しみまくる!」
「私も!」
「うちも」
「俺も!」
「僕もだよ。」
「…。あのさー、一応勉強で来ているんだけど?」
それを言わずにはいられなかった。
「え?けど、学ぶところある?」
「しずちゃん…よし、しずちゃん連行してくる。」
「え、え?え?え?え?ぇ? ちょっ、悠ちゃん!」
「すみません。」
「どうしました?金糸雀さん。」
無事顔見知り発見!
「__え?悠ちゃんここでも知り合いいるの?__」
「この人が、今日遊びまくると言っているんですよ。遊びまくるのもそりゃ大切だけど、今日は校外学習としてきているので、トリックアートのいろいろをこの人に教え込んでくれませんか?」
「あぁ…なるほど。それはやりがいがありそうですね。」
「え?ちょっと!?怖いんだけど!?」
「ですよね!2時間コースでお願いしたいんですけど、いいですか?」
「了解です。」
「ねぇ、悠ちゃん置いてかないでー!!!!!」
「じゃあ行きましょうかね。名前は?」
「日暮静香。」
「静香…あんまりその通りというわけでは…なさそうですね。」
「こっちも気にしてんの!」
早速仲良くなっているようだ。安心安心。
「戻ったよー。」
「あれ?日暮さんは?」
「職員さんに渡してきた。」
「は?」
「悠ちゃん、ここにも行ったことがあったの?」
「もちろん。ここらへんの博物館系は制覇しているよ?知り合いも作っているし。」
知り合い、でいいよね?大人の方だけど。いや、ここは私を助けると思って、知り合いに甘んじてもらおう。
「はぁ〜。さすがやねぇ。」
「うん、俺はすごいと思う。」
「…ありがとう?」
「なんで語尾上がるの?」
高麗くんに目ざとく見つけられた。
「なんか、褒められている気がしなかった?」
「変なの。」
「えぇぇ〜」
ひどいなぁ。
「あ、あった!これ、おすすめ!」
私は館内を紹介しながら、順番に見ていっていた。
見るだけじゃなくて、みんな楽しんでいた。
確かに、トリックアートは体験するとより面白いかもしれない。
そんな事を考えるうちに、最後の方まで見終わった。
「あれ?」
「どうした?」
乃蒼ちゃんが気にかけてくれた。
「しずちゃんが来ないな…って。もうすぐ終わるはずだけど…」
「あ、いたー!悠ちゃん助けてよ〜」
「全部見終わったの?」
それに答えてくれたのは、係の方だった。
「2時間、みっちり、教え込みました。これなら次はみんなの博士となるかもしれませんね。」
あぁ…トラウマになっていそう。
「悠ちゃーん…」
「お疲れー。まあ、楽しかったでしょ?」
「うん、楽しかった!は楽しかったけど…」
「アハハ…じゃあ金糸雀さん、またのお越しをお待ちしております。」
「はぁい。またどっかで行きます。」