公開中
あの人に憧れて~真乃過去編
私には憧れの人がいた。
その人は年下だけど、すごいバンドに所属している。
その人の名前は
「|Hanu.《はぬ》」さんと言う。
バンドグループ「|Clock×2《クロッククロック》」のキーボード担当だ。
何回もLIVEも行ったし、握手会だって行った。グッズも出来るだけ買った。
そんな私ももう、大学四年。
夢はボイストレーナーだったから、
就職する会社を探さなくてはならない。
---
私が就職活動を始めた頃には、もう難関で知られている大手のstart musicの採用説明会しか枠がなかったんだ……。
ここで出来なければ私は夢を諦めるつもりで挑んだ。
たしか、採用担当はRutoさんだったっけ?
自分の名前、長所、短所。
自分の全てをさらけだす。
合否発表の日が待ち遠しい。
そして、合否発表。
私は合格していた。
そのつぎの日から音楽インストラクターとしてstart musicで働き始めた。
---
気付けば私は23歳。
ある夜に町を歩いていると、派手な男二人にナンパされた。
でも、話を聞いた感じ、私を遊び相手にしようとしている。
「お嬢ちゃぁん…?遊ぼ~よ…!」
「ちょ…。やめてと言ってますよね?」
大声で言う。
そこへ、派手な格好のウルフカットの男性(?)が来る。
「Hey。俺の女になんか用?」
「なにって、この嬢ちゃんが遊んでくれねえんだもん」
一歩も引かない両者。
そんなとき、私は小声で言う
「ここから遠回りをして、私の会社まで連れていってくれませんか?」
と。
彼も小声で「はいっ…!」
と言ってくれた。
「俺の女が困ってるだろ?散れよ」
「はぁ?散るもんか」
「なら……。」
「走り去ってやるよっ!」
そうして、彼と一緒に私の働いている|会社《start music 新宿校》まで走り去る。
---
「ありがとうございます!私ここの会社の真乃と言います!」
私の名前と正体を言う。
そして、彼は|Clock×2《クロッククロック》のSara.だと言う。
気になる疑問を言う。
「君さ、入社内定もらえてるの~?」
「いいえ。」
えっ?マジか…。だから勧誘する。
「じゃあここで働かない?」
「えっ…?良いんですか?業界1のstart musicに、僕が。」
否、君十分すごい所のバンドだよ?とツッコミたくなる。
「いいの。君のこと、LIVEで見たことあるし。」
「僕の活動知ってるんか…。」
そりゃ知っている。何故なら、推しのバンドのメンバーでボーカルだからね。
「なめないで~?私こう見えても23だから~」
「#writer.harmony.の傍ら、Clock×2クロッククロックでボーカルとギターしてるんでしょ?」
も~すごいなと思いつつ語ってしまうのは、私の悪い癖だ。でも、彼は不思議な顔をしていた。まるで、ここで働いていいのか?と言いたそうだ。
「不思議な顔してる~(笑)良い顔してんのに~!」
またもや、キョトンと不思議な顔をする彼。
「ここのLIVEの演奏してくれてたじゃん!」
これも事実。前のstart Fesで演奏してくれていた。彼はボーカルだが、トランペットや、ギターが出来るから招待したんだ。
今や私も採用担当。こんな招待、何てことはない。
「本当にいいんですか?僕が…。推薦で。家族に驚かれちゃう…。推薦なんて滅多にないし。」
彼は言う。
「いいのっ!もう大学卒業したでしょ?ならいいの!丁度募集してたから」
「…!はいっ!よろしくお願いします!」
そうして、彼はここで働くことになった。
---
私は今、LIVEに出ているほど有名だ。個人活動も出来るようになったし|Clock×2《クロッククロック》のLIVEや|light up!《らいとあっぷ!》のLIVEにもゲスト招待されるほどだ。
それぞれのグループのメンバーと仲良くするなど、これ程夢みたことはあるだろうか。
夢と現実の区別をしなければな、と思いつつ、今の幸せを逃さないと誓う。