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第八章 初めての学校
「愛を知らない私には」第八章です。
杏ちゃんの学校での1日を描きました。
読んでいただけると嬉しいです。
「杏ちゃん、もし何かあったらすぐに生徒会室か3年1組に来てね。」
ほがらかな笑顔でそう言ってくれる優斗さん。
「俺は同じクラスらしいからなんでも聞けよ。」
胸に手を当てて言ってくれる悠斗さん。
「杏ちゃん!僕が呼び出しLINE送ったらすぐ来てね。」
初めて杏ちゃんと読んでくれてなんかいつもと全然雰囲気が違う蓮斗くん。
私たちはそんなことを言いながら玄関を歩いていた。
(ううっ、さっきからやたら視線を感じる……この三人、何者なの……?)
肩身狭く思いながら歩く私。
「ねえ見て!幸川三兄弟……!!今日も目の保養でございます……」
「ねえ、幸川くんたちが女の子連れてるよ……」
「え、誰?……ちょっとあの子可愛くない?悔しいけどあの子なら諦めつく。」
「え、あの生徒会長の横にいる女子、可愛くね?あんな子いたっけ?」
そんな私にはこのたくさんの視線の中に私に向けられているものがあるなんて到底知らなかった。
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「じゃあ杏ちゃん、またあとでね。」
生徒会長だからね、と言って職員室まで送ってくれた優斗さんが自分の教室に戻って行く。
(はぁ……職員室入らなきゃ……嫌だなぁ……)
そう思いつつ職員室のドアを三回ノックする。
「失礼します、今日からここに転入する睦月、じゃなかった……ゆ、幸川杏です。」
そう言ってぺこりと頭を下げると一人の先生が私のもとへやってきた。
「私が今日からあなたの担任を務めます、坂井です。よろしくね、幸川さん。」
身長150cmぐらいの少し小柄な女の人でさらさらできれいなミディアムの黒髪を肩にたらしている。優しそうな雰囲気の先生だ。
「杏ちゃんのクラスは二年三組ね。幸川くんもいるから、あんまり緊張しなくて大丈夫よ。」
見るからに緊張している私にそう声をかけてくれる坂井先生。
(悠斗さん、同じクラスなんだ……よかった……)
友達ができなくてもなんとかなるという事実に少しだけ緊張がほぐれた。
世間話をしながら歩いていると二年三組の教室についた。
「杏ちゃん、ちょっとここで待っててね。」
そう言って教室に入っていく坂井先生。
ちなみに、私が幸川家に住むようになった次の日から新学期は始まっていて、奥さんは間に合わせようと頑張ってくれたけれど手続きと試験が間に合わなく、私は新学期が始まって一週間後の今日から通うことになったんだ。
(自己紹介何て言おう……友達できるかな……いじめられないといいけど……あぁっ、緊張してきた……)
その場でぐるぐると考えていると教室のドアの奥から「入ってきて」と言う声が聞こえる。
(……よし、ひっそり暮らせるように頑張ろう……)
意を決して教室のなかに入るとこれからクラスメイトになる人たちがいっせいにこっちを向く。
(よし、今朝奥さんに習ったように前を向いて、笑顔で。頑張ろう。)
「ゆ、幸川、杏といいます。趣味は、えーと、家事全般です。特に料理が得意です。
……よろひくおねがいします。」
(噛んじゃった……私の高校生活終わった……ひっそり生きていきたい……)
下げた頭を向くりとあげると悠斗さんと目が合う。
(悠斗さんがいるとちょっと落ち着く……)
「じゃあ杏ちゃんは幸川だから……幸川くんの隣の席に座ってね。」
出席番号順らしい席なので、悠斗さんの隣に座ることができた。
「悠斗さん、よろしくお願いします。」
一応そう伝えると悠斗さんが焦った様子でこう続ける。
「ちょっ、バカお前、名前で読んだらばれるだろ……名字で呼べ。」
(あっそっか、回りの人には内緒なんだ。)
「分かりました。幸川さんって呼べばいいんですか、悠斗さん。」
「ちょっバカ野郎。だから、『悠斗さん』がダメなんだって。幸川さんでいいから!!!」
(あぁっそうだよね。私ってば本当にバカなんだから。)
「分かりました。はる……幸川くん。」
私はそう言い直してもう大丈夫だと思ったが時すでに遅し。
「幸川さん、幸川くんのこと『悠斗さん』って呼んでる……」
「名字一緒だし……もしかして……」
クラスメイトにばれていることを私が知るのはもう少し先の話。
愛を知らない私には第八章楽しんでいただけたでしょうか?
ここまでよんでくださり本当にありがとうございました。
次回は優斗くん視点のお話を書こうと思っています。
次回も読んでいただけると嬉しいです。