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#07
ルドは照れくささから、さらに深く俯いた。リヨウの優しい手が頭から離れ、少し寂しさを感じたが、それを悟られないよう、カツサンドを頬張るレイラのほうへと視線を向ける。
「な、なんか、カツサンドが美味しそうに見えてきた……」
ルドがぽつりと呟くと、それを聞いたレイラは、はっとしたように自分の持っているカツサンドをまじまじと見つめた。そして、何かを決意したかのように、そのカツサンドを半分に割る。
「はい、ルド!」
差し出されたカツサンド。レイラの口元には、かすかにソースがついている。
「え、でも、お前のだろ?」
「ええねん!半分こや!」
にこやかに微笑むレイラに、ルドは戸惑いながらも、そのカツサンドを受け取った。
「あ、あぁ……ありがとな」
一口食べると、ザンカが腕によりをかけて作ったカツサンドは、驚くほど美味しかった。カリカリに揚がった衣に、ジューシーな豚肉。そして、絶妙な甘辛さのソースが、口いっぱいに広がる。
「うまっ……!」
「やろ?」
誇らしげに胸を張るレイラ。そんな二人を、ザンカは優しい笑顔で見つめている。特別なカツサンドを、特別な相手と分かち合う。そんな小さな出来事が、ルドの心に温かい火を灯した。
「ほら、ルド。お前も負けてられねぇぞ」
エンジンが、ルドの背中をポンと叩く。
「お前には、お前を特別に思ってくれるヤツが、きっと現れる」
エンジンの言葉に、ルドはリヨウをちらりと見る。リヨウも、ルドを見て、にっこりと微笑んでいた。その笑顔に、ルドは再び顔を赤くする。
「な、なんだよ」
「なんでもねぇよ。ただ、お前の笑顔が見たくなっただけ」
リヨウの言葉は、ルドの心をくすぐる。照れ隠しにカツサンドを頬張るルドの姿を見て、また、食堂に笑い声が響いた。
奈落の底から這い上がってきた彼らの日常は、特別じゃないかもしれない。でも、この温かな日常こそが、何よりも特別な宝物なのだ。
それぞれの「特別」が重なり合い、温かい空気に包まれた食堂。ルドは、いつか自分も、誰かにとってそんな特別な存在になれることを信じて、残りのカツサンドを頬張った。その味は、いつにも増して、甘く、温かく感じられた。ルドは照れくささから、さらに深く俯いた。リヨウの優しい手が頭から離れ、少し寂しさを感じたが、それを悟られないよう、カツサンドを頬張るレイラのほうへと視線を向ける。
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