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第4話
なあと_🎲
青視点
「んぅ...」
一人しかいない仮眠室で寝返りを打つとギシっとベッドがなる音が響く。
今日の当直は俺なのだ。
俺は不眠症で、今日は薬を服用してもなかなか寝付けない。
そのまま寝れず、徹夜するときもあるし、寝たと思ったら2時間もしないで起きてしまうこともある。
薬を服用してもそこまで変わることもなく、すぐに起てしまう。
実は縁の太い眼鏡をつけているのは目の下にある隈を隠すためでもある。
視力は悪いが、眼鏡に度は入っていなく、いわゆる伊達メガネ。普段はコンタクトを入れている。
(もう起きるか...)
壁にかかっている時計は3時を指している。辺りはオートライト以外の光はなにもない。
頭に自分が担当している部屋の子供がよぎる。少し覗いていこうと考え、台に置いていたものを身につける。
そして、ベッドを整え、部屋を出た。
オートライトがあっても薄暗い夜の廊下を静かに歩く。ここまで静まり返っていると音を出すのに少し躊躇してしまう。子供の頃はこういう薄暗く、静まり返ったところが苦手だった。
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目が暗闇に慣れてきた辺りで病室の前についた。
起こさないよう、静かにドアを引く。
子供達の小さな寝息が聞こえてきたが、俺は一つのベッドに目が止まった。悠佑のベッドだ。
頭まで深く布団を被っているのが見える。
近くに寄って顔を見ようとしたら、物音に気づいたのかベッドの中から振り返った。
「...ぁろ...せんせぃ...?」
小さく、少しかすれた声が俺を呼んだ。
「まろ先生やで〜起こしちゃった?」
「んーん、ずっと起きてた」
「そっか、じゃあ後でな、」
「ぅん、おやすみ」
そう言い周りを見渡し、部屋を出た。
暗くてよく見えなかったのだが、目元が腫れていて、頬に涙の跡があったのは気の所為だろうか。
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あの部屋を担当している俺達には専用の部屋を用意されている。
部屋は何個かあって、俺達 医者が3人で共同作業する部屋もあるし、ベッドが置いてある患者用の部屋があったり、内側から開けられない部屋があったり...と他にも何部屋かある。
作業部屋を使って勉強などをしようと思い、体の向きを変える。
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部屋の前についたので、ポケットからカードキーを取り出し、リーダーにかざす。
カチン、と鍵が開く音がしたのでドアを押し開ける。
真っ暗な部屋に明かりをつける。
暗闇に目が慣れていたので少し目が眩む。
自分のデスクに付いている引き出しを漁り、大量に溜まっている論文を引き出した。
眼鏡やコンタクト、白衣などの身につけているものをデスクの空いている場所に起き俺は論文を読み始めた。
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規則正しく鳴る秒針が気になるくらい静まり返った部屋で一人、論文を読む。
いつの間にか日は出初め、窓から見える道路には、車が多く走っている。そして、いつの間にか点いていた廊下の電気に照らされて歩く看護師。
時計を見るとあれから4時間立っていた。
「うわ、もうこんな時間やん...」
独り言をつぶやきながら廊下に出る。
ドアに付いている窓から見た時よりも結構明るくなっていた。
そして、ドアに出た瞬間に左側から声がした
「あ、おはよぉいふくん!」
「ん?...あぁほとけか...おはよ」
ぼやけた視界に映る目一杯の水色。
「いふくん当直お疲れ様!眼鏡かけないの?」
そう言いながら顔を覗き込んできた。
「あー、忘れてた...」
クスクスと笑い声が少し聞こえてきたが気にしないで部屋にあるデスクに戻る。
4時間前とは変わって、デスクの上には論文が散らかっている。
大量の論文の下からコンタクトと眼鏡のケースを発掘する。
手鏡を出し、両目にコンタクトを入れ、眼鏡をかける。
視界の端では、ほとけが自分のデスクに荷物を置くのが見える。
「お、いむくん今日は早いんやな!」
部屋に入って第一声がそれなのは、信頼関係があってこそなのだろうか....
そんな事を思いながら、声の主の方を向く。
「あ、まろちゃん今日当直だったっけ?お疲れ様〜〜」
こちらをチラっと見て、荷物を置く。
ふと時計を見ると7時半を指していた。
「病室行ってくるな〜」
返事をしたのを確認し、部屋を出る。
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ガラガラと音を立てながら、ドアを引くと同時に自慢のクソデカボイスで喋る
「おはよ〜!!」
そう、元気に言うと返事が帰って来る。
「ん...おはよぉ、まろ先生」
「おはよ、りうら、調子どう?」
「...元気だよぉ」
初めに返事をしてくれたのはりうら。寝起きだから少し反応が遅いが、いつも通り元気そうだ。
「ッ....パクッパク...ッ」
「ないこぉ〜おはよ〜! 喉痛い?」
「ッ....コク」
「そっか〜痛み止め飲もうね〜 他に調子悪いところある?」
「...フルフル」
ないこは、声は出てないが、パクパクと口を動かす。
薬を出し、水と一緒に持たせると、すぐにゴクっと飲む。
ないこの頭を撫で、もう一つのベッドに向かう。
「悠佑〜おはよ〜?」
「...おはよういふ先生」
いつもと違う表情、言葉遣い、『いぶき』だろう。
いぶきの見た目は主人格より目が細くなって平行眉になる。目が悪いので、いぶきの人格の時は、眼鏡を渡す。
15歳で悠佑より1つ上。主人格がうつ状態になっているときによく出てくる、いわゆる『保護人格』だ。
「いぶき、おはよ〜 悠佑はどう?」
「今日は調子悪いみたい....さっき泣いちゃってて...」
「そっか...いぶきの調子はどう?」
「元気だよ」
全員の健康チェックを終わらせ、朝食の準備を促すとゆるく返事を返してくれる。
全員中学生なので反抗期とか思春期とかでもおかしくないのに、何故かみんな素直に従ってくれるのだ
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「ん〜お腹すいたぁ」
いつもの定位置に座り伸びをしながら言うりうら。
後に続いて、ないこ、いぶき、と座る。
途中から合流したほとけと初兎もいる。
「いただきます」と声に出し、器用に箸を使い、食べ始める。
ニコニコと笑いながら幸せそうに食べるのを見ていると、自然に笑顔になる。
みんな全部食べ終わり 薬を飲まして片付けをする。
食堂を出て廊下を歩きながら、ほとけが喋る。
「今日の予定、覚えてる?」
ほとけがみんなに聞くが、みんなだんまりだ。
少し後ろを歩いていた初兎が何故か吹く。
「やっぱみんな嫌だよね〜」
そんな呑気なこと言っているが、俺らも大変だ。
だって今日は.....
--- **「持続性注射剤打つんやな」** ---
初兎が笑いを堪えながら言うとその言葉にないこりうらの肩が跳ね上がる。
月に1〜2回打たないといけないのだ。
「うわぁ〜注射やだぁ〜」
「ッ.......パクッ!...パクッ!...ッ」
「ないこは無理やり声出さんとってな〜」
あからさまな嫌だと駄々をこねる。まぁこんなのは可愛いものなのだが...
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「ねぇ〜、ほんとに注射するの〜?」
嫌そうにりうらが言う。子供は誰もが嫌がるだろう。
「しゃあないやろ〜、せんとやし〜...」
これはもうどうしようもない。やらないといけないことなのだ。
「ないちゃん、すっごいブサイクやで〜...w」
ないこは声が出ない代わりに、仏頂面で不満を表現している。
それを面白おかしく頬をつつく初兎。それにもっと不機嫌になるというループが始まろうとしていた。
いぶきは今、悠佑のカウンセリングをしてくれているのか、ずっと上の空だ。
「お、準備できたみたいやで〜行こか!」
ほとけから連絡が来たようで、ほらほらと急かすように廊下に出す。
そんな初兎を見て、腹黒いと思いながら悠佑こといぶきを起こす。
「いぶき〜〜注射行くで〜」
は〜い、という返事をし、ベッドから降りる。
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水くん目線
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「ちょっと冷たくなるよ〜」
「....ッ」
アルコール綿をりうちゃんの二の腕につける。
綿は痛くないけど、その後の細い注射針が嫌で、少し不機嫌な感じ。
「力抜いて〜そうそう上手上手! 少しチクってなるよ〜」
できるだけ優しい声で話しかける。
ここからが僕の腕の見せどころ。
元麻酔科医で注射は得意分野だ。
「りうちゃ〜ん!痛くないからね〜〜!僕、注射うまいから!ドヤッ」
「ほとけ先生何いってんの...」
「そんな冷めた目で見ないでよぉ〜(泣)」
「ww」
「はい!りうちゃん終わったよ〜頑張ったね〜!えらいえらい!」
そんな会話をしている中でさり気なく打つ。これが僕のやり方。
りうちゃんは会話している間にもしっかり力を抜いてくれているので、とてもやりやすかった。
もう終わったの? という顔をして戸惑っているのを気にしないで、注射針などを片付ける。
「よし!じゃあ戻るよ〜!」
「あ、うん...」
すこし戸惑いながら後ろをついてくる。
その姿がとてもかわいらしい。
おはようございます!こんにちは!こんばんわ! 僕です!(?)
今日は長いんじゃないかな!?
感想待ってます!!