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【1】暗殺者
___|東野 天音《とうの あまね》。
幼き頃から暗殺者として過ごし、数えきれないほど人を殺めてきた人間である。
最近殺した人間は14になる少年。
その少年がどんなに命乞いをしようと何の感情も沸いてこないのが彼。
ちなみに彼は「悪い事してると殺しちゃうゾ☆」と、狂っ...明るい性格をしている。
...そんな彼にも悩みがあった。
職業柄で隠さなければいけないものではないが、彼はとんでもなく困っていた。
それは、《《この世ならざる者が見えてしまう事》》だった。
何年も人を殺しているとそういう奴に呪われていくわけで。
そいつらの姿が視界の端にチラついたり、声が聞こえたり。
だが、彼はどんなこの世ならざる者が見えるわけではなく、
誰かを呪い、恨み、憎んでいる霊しか見えないのだ。
こんな職業なため、誰かに呪われることや恨まれること、命を狙われることは覚悟の上だった。
だが毎日毎日同じような状況だと疲れが出るわけで。
そんな中、彼は事故現場に出会ってしまう。
そこで巻き込まれて死んだであろう女の霊と目があってしまうのだ。
そこで目があったのを理解し、己が天音に見えていることを理解し、微笑んだのだ。
そして女の霊は光の粒になって天へ上っていき、無事(?)成仏した。
見知らぬ少年を任された所で天音には何も出来ない。
そのまま数ヵ月の時が過ぎた。
あの少年とはあれ以来会えないまま。
当たり前だ、あの後救急車に乗って何処かへいってしまったのだから会えるとは思っていない。
だが、あの託された【約束】のようなものを忘れられないままでもあった。
あの事を忘れずに覚えている自分が不思議に思う。
___何徹であろうか。何徹か分からない程徹夜明けの昼。
霊によって重さが増した肩を回しながら昼飯を考える。
視界の端でチラつく霊に腹をたたせながら横を通る。
天音が殺せるのは生きた人間だけだ。流石にこの世ならざる者は殺せない。
故に何も出来ないのだ。
ただ重さの増す肩に腹をたたすことしか出来ない。
猛烈な眠気。「流石に疲れたな」と呑気に考えコンビニへ向かう。
あくびをしながら人気のない道を歩いていく。
重いままである肩を回して空を見上げる。
そこでとある少年と擦れ違う。
擦れ違った後、天音はその少年の腕をつかんだ。
「おい。」
「...?」
少年は「何かしましたか?」と言わんばかりの顔をしていた。
彼からしたら初対面の男かもしれないが、天音はその少年と初対面ではないことが分かっていた。
かつて涙に濡れていた瞳は大きく見開かれ、天音を見つめる。
「...お前、今俺に何をした?」
天音は《《すっかり軽くなった肩》》に手を当て、少年に問いかけた。