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10.それだけで
「人に言われる人生じゃないんだよ、君の人生なんだ。」
静佳さんは僕の手を包み込むと、笑ってそう言った。
優しくしてくれたのに、僕は少し否定したくなった。
「…っでも、僕は…そんな…それだけで…いろんなことから逃げてきたんです…。」
自分と向き合うこと
人を信じること
誰かに、こんなふうに打ち明けること。
「うーん、でも君は悪くない。」
「へ?」
「それは君のせいじゃない。誰だってね、そういうことは怖いから逃げようと思うんだ。それは、悪いことじゃなくて普通のことなんだよ。」
友達、親に何を言われたかだとかそういうことを結局心の中で自分のせいにしていた。
そっちの方が楽だったから。
静佳さんに言われて、初めて気づいた。
涙が止まらない。
「ありがとうございます。」
アパートのドアを開け、振り返って軽く会釈をした。
「…いつでもおいで」
何も言わずに頷くと静佳さんの家のドアを閉めた。
わああ、なんかちょっと方向性変えちゃった…!?
あわわ…おれやっちゃったかも
担当:瑠澄都(るすと)