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Collaboration.12
アリスside
「桜月ちゃん!!」
「アリスさん!?その怪我っ」
私の怪我をどうにかしようとしているけれど、貴方のほうが酷いじゃない。
それに、治させてはくれないみたいね。
五大幹部が2人。
まさか紅葉も来るなんて。
「どこまでも厄介な異能が集まったものね、ジョージ達の組織は」
「…っ本当、です」
血を袖で拭いながら、戦闘態勢をとる。
ルイスの身体なのに無茶しすぎたかしら。
「手前の相手は俺だ…裏切るなんて、一番あり得ないと思ってた」
これは、桜月ちゃんのことよね。
「ふふ、其方、|私《わっち》と会ったことがあるように思わせるのぉ、どこかで見目会うことがあったかえ?」
面識あったっけ、私。
ルイスは確か過去の小説で合ってるけれど──。
まぁ、あの子と似てるからでしょうね。
「アリスさん!きっと__皆の中には矛盾が生じているはず_ですよね」
「ええ、そう思うわ…回りくどいけれど、声をかけ続けるしかないわね」
桜月ちゃんが、遠い。
傷も痛む。
けれど、私は紅葉に立ち向かうことにした。
「治療は後でいいわ!今は2人に集中して!」
「__っわかりました!」
中也君は、桜月ちゃんが止めたいはずだから。
「……私の桜月を誑かしたのはお主かえ?」
「さぁ? 想像に任せるわ」
「それならば、喋りたくしてやろう。心配せずとも、私も部下もそういうのに優れている」
確かに拷問班は優秀だもの。
それに夜叉は“殺戮の権化”で、紅葉自体も戦闘能力が高い。
ちょっとでも隙は見せれないけれど、この怪我はどうにかしたいわね。
「あの子が裏切るとは思えない。じゃか、それが事実であるなら私は首領の命の通りに動くだけじゃ」
夜叉と紅葉の攻撃の隙間を潜り抜けながら、私は考え込んでいた。
正直なところ、紅葉と戦う意味ないと思っている。
どちらかと云うならばテニエル兄弟をどうにかしたほうが良いもの。
『アリス』
「何かしら」
『……桜月ちゃんと中也君を戦わせるのは、本当に正しいこと?』
キョトン、と思わずしてしまう。
ルイスだから分かることよね。
好きな人と戦うことが、どれだけ辛いことか。
そして、矛盾を解くのがどれだけ大変か。
「随分と隙だらけじゃな」
「これぐらいハンデがあったほうが良いでしょう?」
「……そこまで自信があるとは」
「歳を取ると無駄な自信だけがつくから。ほら、先代とは違くとも首領の命の通りに動くのでしょう?」
地雷踏んだわよね、完全に。
煽りすぎ、とルイスもため息をついている。
「荒波を越えてきたもの同士、仲良くしましょうよ」
紅葉は先代の頃、殺戮としたヨコハマを。
私は、ルイスと共に戦場を。
「……お主も異能者じゃろう。使ったらどうかえ?」
「残念ながら、貴女みたいに戦い向きじゃないのよ。でも、ハンデが気に食わないならちゃんと戦ってあげるわよ」
背後に音もなく現れた夜叉の攻撃。
今までは、普通に避けていた。
けれど鏡を出して受け止め、生まれた隙に懐へ潜り込む。
流石に顔面に蹴りを入れるのは良くないと思い、脇腹にして横へ飛ばした。
「……そうか、お主ルイスの──」
「うちのテニエルが攫った時は悪かったわね。ほら、まだ戦えるのでしょう?」
「血だらけの敵に云われる言葉じゃないのぉ……」
煽りに煽りまくって、どうするのかしら私。
『──チェンジだ、アリス』
「え?」
--- side change ---
ワンダーランドから見ていたのは、アリスではなかった。
中也君と戦う桜月ちゃん。
そして僕は今、現実に戻ってきていた。
紅葉に攻撃される前に移動する。
「──コナンさん」
「どうしたルイス……って、お前なぁ!?」
周りの敵を飛ばして、コナンさんはすぐに僕の治療に入った。
重症じゃないし、与謝野さん忙しそうだから此方に来て正解だったな。
『ルイス! 桜月ちゃんが──ッ』
「……すみません」
「おいルイス、まだ治療は──」
「僕は、助けないといけないので」
戦場を潜り抜け、僕は桜月ちゃんのもとへ向かう。
中也君も重力で加速しながら攻撃しようとしていたが、彼女に戦闘する意思はない。
小刀が落ちる音が僅かに聞こえた僕は、急いで僕ごとワンダーランドへ送った。
「…え、?」
そんな不思議そうな声が聞こえる。
目を閉じていた彼女の前に立っていたは良いけど、まだちゃんと傷は塞がっていない。
ま、いいや。
「…ほんと、君って無茶ばかりするよね」
「いやっ、それはルイスさんの方が…!!__ワンダーランド、?」
「嫌な予感がしたから咄嗟に」
「ぁ、ありがとうございます…」
間に合ったか、と少し安心する。
また救うことが出来た。
一息つくと桜月ちゃんが此方を見ていたので、苦笑いを浮かべておいた。
やっぱりちゃんと治療してもらったらよかったかな。
「それで、これからどうしようか」
「みんなにかかった異能は私をルイスさんが殺すことでしか解けない、ですよね」
「フランシスみたいに解除条件が気づくこと、とかだったら良かったんだけど」
何事もそう上手くはいかない。
本当、厄介な異能の持ち主が集められてるな。
「…異能の持ち主を、殺したら、戻るでしょうか」
「…保証はないけれど、可能性は低くないね」
ま、色々な理由でオススメはできないけれど。
「必要な殺しではないですから、やっぱりやめておきます」
僕の考え読まれたかな。
「…まぁ、そう気に病まないで。もしかすると殺すことで異能力が一生解除できなくなってしまうかもしれないんだから、元からリスクの高すぎる賭けだよ」
「…ありがとう、ございます」
「ところでさ、僕に一つ案があるんだけど…上手くいかないかもしれないけど、可能性は小さくはない」
「え…!どんな方法ですか、?」
「その前に教えてほしい。君の異能は…遠隔発動できる?」
それさえ出来れば、後はそう難しくない。
唐突な質問だったけど、彼女は頷いた。
「今はもう携帯無しでも異能を遠隔発動させられます」
「…じゃあ___」
--- 「__________」 ---
「っえ…り、リスクが高すぎます!それに、それじゃあルイスさんが…!、」
「大丈夫。これでも僕はこう云うのは得意だから」
「…気をつけて、くださいね」
「君も、無理だと思ったらすぐに中断して…次無茶したらアリスに無理やり止めてもらうからね」
「ええ!?」
桜月ちゃんには様々な異能がついてる。
ワンダーランドに来れる異能者がいても、きっとアリスが力になってくれる。
「…少し話をさせてくれない?」
僕はワンダーランドから出てそう切り出した。
テニエル兄弟にその声は届いたらしく、怪訝な顔をしながらも動きを止めた。
マフィアの面々は探偵社と話している。
決して友好的とは云えないものの、戦闘している様子はない。
残党も僕のかつての仲間が抑えてくれている。
「僕が桜月ちゃんを殺す。これがイライザが戻って来る条件だよね?」
「……そうだが?」
「じゃあ僕が此処で死んだらどうなるんだろうね」
手には拳銃。
前回よりも指は震えていない。
桜月ちゃんがワンダーランドで待っていてくれているからだろう。
彼女の異能も信じている。
僕は、一人じゃない。
「おい、まさか──!」
「そのまさかだよ。君達はテニエルが失敗した過程を全て知っておくべきだった」