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夏とラムネ
透き通るほど青い空。
はっきりと見える白い雲。
遠くに見える鮮やかな海。
今年も、夏が来た――。
「今日も暑いな…」
「そうだね。喉が渇く」
「…ラムネ、持ってくるね」
高い背。夏を象徴するような水色の髪。
白い肌、そして青い瞳。
20代くらいの若い顔をした、私のお兄さんだ。
今年もお兄さんはやってきた。
お兄さんは毎年、夏にだけ現れる。
毎年おもしろい話をするわけではないが、どうやら楽しみにしているらしい。
私も、お兄さんに会える夏を楽しみにしていた。
「ラムネ、好きだよね」
「このパチパチ感が好きなんだ。
初めてだったんだよ、こういう飲み物」
このお兄さんはラムネを知らなかったらしい。
私が昔、プレゼントした飲み物。
初めて飲んだ時、お兄さんはびっくりしていたっけ。
「お兄さん、なんにも知らないんだから」
「…確かに。けど、この村に関しては…君よりずっと詳しいと思うよ。」
「へぇー。じゃあ、山の祠ってなんで立ち入り禁止なの?」
そう聞くと、少し黙って答えた。
「この村の守り神がいるからかな。祠が荒らされないようにしてるんだよ」
お兄さんは少し視線を落とし、手元の瓶をいじった。
「でも…あんな所に守り神は居ないよ。
だって、祀ってるのは海の神様だから」
お兄さんの表情は、珍しく曇っていた。
ちらりと私の顔を見て、すぐ視線を逸らす。
しばらくして、お兄さんは私に何気ない質問をした。
「君は…神様を信じる?」
「神様か…。私は信じるかな。だって、そっちのほうが面白いし!」
「そっか。ふふ、君らしいね」
お兄さんはそう言いながら少し笑った。
けれど、その笑顔の奥に、複雑な色が混ざっていた。
それからもお兄さんと話しているうちに、気づけば夕方になっていた。
もう、お兄さんは帰る時間だ。
結局、お兄さんの曇った表情を晴らすことはできなかった。
「またね! お兄さん」
「うん、バイバイ」
去っていく後ろ姿に違和感を覚えた。
でも、私は呼び止めなかった。
それから、お兄さんはもう来なかった。
来ることのないお兄さんを待つ間に、私は気づいた。
あぁ…好き…だったんだ。
今もまだ、私は甘い水を眺めている。
かすかに笑い声が泡の音に重なるような_
そんな気がした。