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悲恋コンサル氷浦さん
一昨日とかの日替わりですね。
めちゃ遅くなりました。
悲恋コンサルタント。それは失恋をした人、叶わぬ恋をしている人から話を聞き、アドバイスをする。いわば恋愛のプロフェッショナル。
今日はそんな恋愛コンサルの氷浦蓮の生活をご紹介します。
朝は七時起床。
私の朝は少し早め。洗顔をし、手ぐしで神を少し整え、軽くストレッチ。
朝食はバナナ。私はバナナが大好物でして。暇さえあればバナナと名のつくものを食べております。
九時には家を出ます。
私は歩く、という行為が好きでして。電車に乗れば数十分で着くところを一時間かけ、今の季節ですと蝉の声などを感じるのです。そのためにこの立地に店を開いたのです。お気に入りのコースで、気分を上げるために。
最近は家の近くのキッチンカーでバナナスムージーを買うことにもハマっています。
十時に出社。
出社すると、制服に着替えます。
白いシャツに黒のスラックスとベスト。この制服は新たな門出を祝うため、数年前にオーダーメイドで作ったものです。
次にすることは本日の予定の確認。十一時、十三時、十五時に予約があります。本日も予約がいっぱい、有り難い限りです。
十一時鈴谷様ご来店。
特別に、仕事シーンを公開しようと思います。今回だけですからね。
本日一人目のお客様、鈴谷明(二十一)様がご来店されました。
紅茶とバナナケーキをお出しし、早速話を聞かせていただきます。
「…俺ぇ、昨日彼女に振られたんすよ。突然ですよ!1週間ぶりにデートした帰りに。初彼女だし、嬉しくてぇ、ネットで見たのとか試してみたんですけどぉ、鬱陶しいって!」
半泣きになりながら言う鈴谷様。こういう時にこそ私の出番ですね。
「鈴谷様、お辛いとは思いますが、お相手の性格と、インターネットで得たという情報、教えていただけますか」
冷静な私の声を聞き、少し落ち着いたようで、鈴谷様は話し始めた。
「彼女は、俺と同い年で、ゼミで一緒で気が合って。そしたら段々好きになって、告白したらオッケーしてくれて。葵は物静かで本を読むのが好きで、友だちといるのはあんま見たこと無いですね。でも、見る時はいつも同じ人とですね。二人」
「読書好きで、友好関係は狭く深く、という感じですかね」
話を聞きながらメモを取っていく。
「ネットで見たのは、これです」
こちらに向けてきたスマホを覗く。
『女のコにすると喜ばれることを三つ紹介します!一つ目は〜』
長かったので要約すると、
①おはよう、おやすみから、何か行動を起こすたび連絡。
②デートの帰りは必ず家まで送る。
③仕事学校のない日は全てデート。
「コメント見てください。みんな『カッコいい!』『そんな彼氏欲しー!』って」
スクロールしコメントを見せる鈴谷様に思わずため息を一つついてしまう。
「鈴谷様、一つ質問よろしいでしょうか」
「…はい?どうぞ」
「ありがとうございます。では、お聞きします。お相手様はそのような動画サイトにコメントをするようなタイプですか」
「…いえ。でも、無言は肯定っていうじゃないですか!サイトのこの言葉は、女のコ全員の思いじゃないんですか!」
どうしても自分が見つけたネットの情報を信じたいらしい鈴谷様。
いい加減気づきませんかね。
「鈴谷様、貴方は男性だから、と巨乳が好き、オフショルが好き、ミニスカートが好き。それが男性の総意だと思われてもよろしいのですか」
「…いや、俺ワイドパンツとか履いてる子のほうが好きですし…」
「でしょう。それは女性も同じなのです。女性だから、これをして欲しい、あれをして欲しい、なんてそんな物無いのです。おそらくコメントしている女性は悪い言い方ですが夢を見がちな方です。鈴谷様は、お相手様がそのようなタイプに見えますでしょうか」
「…いえ」
ちゃんと、否定してくれて良かった。そうじゃないと話が進まないところでした。
「元々友人だった鈴谷様の告白をオーケーしたということは、鈴谷様の素を気に入っていたからではありませんか」
「そう、ですかね」
「えぇ、きっとそうですよ。最後にもう一度、連絡してみてはどうですか」
「…はい、そうします。氷浦さん、話聞いてくれてありがとうございました」
十二時昼食
昼食廃棄にコンビニで買ったサンドイッチとバナナケースに入れたバナナをいただきます。
この時間は、個人営業、ということを最大限に活用して、プロジェクターでドラマを見ます。
毎日浴びるように恋愛話を聞くので、気分転換に事件ものをみていることが多いですかね。
時々不倫が理由のものもありますが。
十三時香月様ご来店。
皆さん、ここからも全て見せるとお思いでしたか。話を聞いていなかったみたいですね。鈴谷様の際に「今回だけ」と申しましたよね。
ここからの二名は冒頭のみですが、楽しんでくださると幸いです。
「私、彼氏を振っちゃったんです。『鬱陶しい』と。でと、彼のこと好きで、でも付き合ってからどこか変わってしまって…」
是非復縁してほしいものです。
似たものカップルは長続きすると言いますから。
十五時山田様ご来店。
「…俺、好きな人が居て。昨日は振られたってグループメールで暴れ回ってたんですけど、ついさっき復縁したって。前までは絶対無理だってあきらめられてたんすけど、一瞬光が見えちゃったっていうか。諦め方を教えてほしいんです」
ここでは、同性との恋愛の相談も承っております。
では、本日はこのあたりで。
私の生活はいかがだったでしょうか。
またいつか、会えることを楽しみにしております。
最初全然気づかなかったんですけど、ラブホの上野さんっぽくなりましたね。
上野さん好きが出てしまった…!
この小説は日替わりお題なんですけど、鈴谷の彼女が振った理由、私が常々思っていることでして。
私は一人が好きなタイプの人間なので、あまり得意ではなくって。
皆さんの感想もお聞きしたいです!