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優しい人
花火
カナエさんの死を立ち直るしのぶ。
「胡蝶妹いるか?」
「はいいます!もしかして稽古をつけてくれるんですか!」
「時間が縫えた」
「待っていてください」
そこから少しして、木刀をもってしのぶはきた。相変わらずだれもいない道場で。
「相変わらず、水柱様は厳しいですね」
「休憩はとらせている」
「そうですが!でも少し以外です無理をしてでも血反吐をはいてでも、鍛練しろ。と前は言ったのに休憩をとるんですね」
「自分の限界を知って、適度に休憩をとれそうしないと体に限界が来て、がたがくるそれはあってはいけないことだ」
「それもそうですね」
案外こういうところが常識的なのだ。
「再開するぞ!」
「はい!」
基本的に稽古は突きの練習だで踏み込みの練習や突きの量を増やす練習から、
基本的な肺を鍛える訓練、走る訓練いろんな練習や訓練を、一日で回していく。
そして姉が止める。姉がいないと、いつまでもこれを繰り返す。
「冨岡君、しのぶがこわれるでしょうが!」
「すまない」
「姉さん!」
「わかったならいいわ、どう一緒にご飯を食べない?」
「……断わ」
「あら、いいのじゃ早速食べましょう!」
今日のご飯は味噌汁と梅干し付きのご飯少しもの足らない感じがするが、カナエも義勇も柱だから時間がなく、手っ取り早くはらを満たすらしい。
時間がないなら誘わなければいいのに……
「ありがとう!冨岡君また一緒に食べようようね」
そういってそそくさと義勇は、立ち去っていった。
「姉さん、時間がなければ別のときに誘えばいいのに」
「しのぶあのね、鬼殺隊にはねまた今度、別のときにが通じないのよ。冨岡君も私だって、明日いる保証なんてない。だから、誘えるときに誘うのよ」
「姉さんは明日もいるよ」
にこと曖昧な笑みをカナエはこぼした。
「そういえば冨岡君は優しいわよね!」
「そうかな」
「わかるわよしのぶにもそのうち」
それからも毎日自分で鍛練をした。たあの人が来て稽古をつけてくれる時もある。そして姉によく止められる。義勇が来たときよりは稽古ができていないがそれでも確実に一歩ずつ進んでいっている感じが嬉しかった。
それに今のしのぶには認めてくれる人がいる。
だけど、こんな日々もずっとは続かない。永遠などないのだ。
雪が降っていた。肌にさわる風がとても冷たく、冷えていた。それでも、姉は柱である以上鬼殺に向かう。
柱は、年末年始は一般隊士が大勢いなくなるぶん、働くそうだ。
そして日が短くなるため、仕事も多くなる。だというのに、さらには遠方の任務にまでいくとか。なので、蝶屋敷には柱の人たちが、包帯や絆創膏など大量に補充に来るなだとか。もしかしたら、としのぶが心を踊らしていた。
「胡蝶妹か」
「はい!水柱様、最近は突きを一度に多くできるように鍛練をしておりまして、その結果一度の踏み込みで三度させるようになりまして。それに鬼も順調に殺せまして、毒の調合もうまくいってるんです!」
「そうか、頑張っているな」
「はい!水柱様のおかげさまです」
この人に誉められるのは、姉とはまた違うよさがあるのだ。
「補充をしにきた」
「そう……、でしたね水柱様」
「……それとだな、その呼び方を変えてくれないか」
「じゃあ、冨岡さま?冨岡さん?」
冨岡さんの時にうなずいたので、冨岡さんとよんでほしいのだろうか。そっちの方が、呼びやすいので嬉しいのだが。
「だったら、私の呼び方も変えてください!」
「……わかった。しのぶ」
「ありがとうござます!冨岡さんこちらです」
そのあと包帯と絆創膏渡しそそくさと冨岡さん行ってしまった。本当は稽古をつけてほしかったのだが、柱が忙しいのは知っていたので止めることはなかった。
「あ、冨岡君!しのぶとはあった?」
「……胡蝶か、あったぞ」
「ありがとう!でも、しのぶ最近頑張りすぎて止めるのが大変なのよ」
「……すまない」
「別にいいのよ、でもねいつか止められなくなっちゃうのかなって」
カナエはどこか遠い儚げな目をしていた。まるで、死を覚悟いるようなそんな目だった。
「……任務はどうだ」
「そうね、今年は少し厳しそうね。かなり大きな町なんだけど、女性だけいなくなるんだって。……そしてね、前に調査した甲の隊士も戻ってきてないんだけどその隊士カラスは目に数字が、入っていたって」
「っ本当か」
コクりとカナエが頷く。数字が入っていた場合異能持ちの鬼だ。下弦だろうか上弦だろうか。もし上弦だとしたら、最悪……
「たからね冨岡君、もし私が死んだらしのぶのことを見てほしいの」
「……」
「しのぶは頑張りやさんだけどたぶん鬼は切れない。しのぶには、普通の女の子として幸せになってほしいの。おばあさんになるまで、生きてほしいの」
「胡蝶」
「でも、たぶんしのぶはそうなってくれない。だからね、冨岡君しのぶのことを見てほしいの」
「胡蝶は死なない」
そこなのという顔をカナエがしている。そこ以外はないだろうに。
「カナエは柱だ」
そういって立ち去ろうとしたのだが、手が掴まれた。振りかえると、カナエがなんとも言えない顔をしている。いつもは笑顔なのだが、今日に限って、本当に表情がコロコロ変わる。何を考えているのか分かりやすい。
「冨岡君、この任務上弦かもしれないの」
「そうか」
「この遺言書冨岡君が持ってて、しのぶに今渡すべきだと思ったところで渡してお願いね!」
そういってカナエが立ち去る。お願いねと言うカナエは笑顔だった。カナエのお願いは強制だ。はぁとため息をつく。とりあえず預かっておこうカナエに必要はないと思うが。だってカナエは本物の柱なのだから。
蝶屋敷から『行ってきます、朝方には帰ってくるわね』と元気よく蝶屋敷の主人カナエが元気よく言って出ていった。その間は、妹の胡蝶しのぶが蝶屋敷を管理することになっている。洗濯物を干したり、食事の準備をしたり。それに加え主人の仕事である、患者の様態の記録などの業務も加わる。姉はこれをいつもしていると思うと頭が上がらない。
今日は鍛練をしていない。すこしでも鍛練をしようと部屋からでると、不穏な噂を聞いた。どうやら姉が危険任務に当たっていて、上弦が出るかもだとか。
その噂を聞いたとたん、しのぶは走っていた。姉の任務の場所は、ここから峠を3つ越えた先にあるそうだ。普段なら呼吸が激しくなるが、そんな場合ではない。
姉さんが上弦と?
上弦は百年ほど目撃情報がない。というのも、上弦とあった隊士が誰一人帰ってきてないのだ。姉の実力は認めているが、いくら何でも上弦は。そう考えるほどにまた、足を早く動かす。一刻も早く姉さんと会いたい。
今は日が沈もうとしているところだ。そろそろ鬼の活動が始まる。
峠をようやく越えて、朝日が上ろうとしている。カラスから報告が来る。今一番聞きたくない報告だった。
「カァカァ胡蝶カナエ胡蝶カナエ上弦の弐と交戦奮闘し、死亡寸前カァカァ」
姉さん、姉さん!
「姉さん!」
「しのぶ鬼殺隊をやめなさい貴方は頑張っているけれど本当に頑張っているけれど多分しのぶは……」
「姉さんしゃべんなくていい!大丈夫だからね隠をよんだから」
「普通の、女の子の幸せを手に、入れて……おばあさんになるまで生きててほしいのよ、もう十分だから」
やだ、やだ!
「いやだ絶対にやめない姉さんの仇はかならずとる言って!どんな鬼なのどいつにやられたの」
「カナエ姉さん言ってよ!!お願い!!こんなことされて私普通に何て生きていけない!!」
「姉さん!!」
このあと、姉の葬式が開かれた。姉は花柱だったこともあり多くの人が訪れた。やはり、葬式にあの人もきた。だが任務帰りに急いできたのだろう。かすり傷やた衣服が少し傷ついたいた。姉ならどうしただろう。
『冨岡君が珍しいはね、ちゃんと寝て食べるのよ!』
あぁいいそうだ。葬式が終わったあと、しのぶにはいろんな人に
『鬼殺隊をやめな』
『姉の仇はとらないほうが』
『ないてもいいんだよ』
泣けるなら泣きたいのに!姉の仇をとるななんて!皆がそういう。寄り添っている振りをしているだけなのに!
本当は今すぐにでも泣き出したい。でも、ダメなのだ。もう蝶屋敷の姉は胡蝶カナエではなく、胡蝶しのぶなのだ。姉の代わりにならなければ。なら、泣いてはならない。強くならなければ。
しのぶは道場に向かった。そのあとの鍛練は、止めてくれる人がいないものだから、自分の限界がわからず、ひたすらがむしゃらにやっていた。目眩がしようが頭痛がしようが、血を吐こうか関係ない。
限界は知らないうちにくる。あぁと体が崩れる駄目だこんなのじゃ駄目だ。もっともっと鍛練をしなければ。
「自分の限界もわからないとは、落ちたものだな」
「冨、岡さん?」
「ひどい有り様だな」
「貴方に何がわかるんですか!姉さんを失って。いきなり蝶屋敷の主人で!鬼の首も切れなくて!」
駄目だ、姉はこんなこと言わない。姉なら強い言葉を使わない。でも、八つ当たりをしてしまう。
「貴方はいいですね!強くて!貴方の方が姉の仇をとれるんでしょうね!」
「仇を、とろうとしているのか」
「当たり前でしょう!貴方もとめるんですよねどうせ!」
そうだ皆やめろと言うこの人も例外ではないはずだ。なのにこの人は止めないんだろうなと頭の片隅で思っている、自分がいる。そんなことないはずなのに。
涙が出そうになる。駄目だ駄目だ。
キュと誰かに体を抱き締められる。寄り添ってくれている、泣いていいのだろうか、もう泣きたい辛い苦しい。
「泣いていいんだよ」
その言葉が告げられたあとはもう、溢れんばかりの涙が、出てくる。
「わたしは姉の代わりにならないといけないんです。でも、無理なんです。私には」
「そうか」
ただその人はきいているだけだった。相槌をたまに言って、変な慰めすらもない。でも、それがしのぶには嬉しかった。
この場に他の人がいなくてよかった。もともとこの道場にはあまり人が来ないし、今日は葬式があった。この二人以外人はいないだろう。だから思いっきり泣ける、愚痴をいえる。
「落ち着いたか」
「はい、ありがとうござます」
「鍛練はやめろ、仇をとるつもりなら、明日だ。明日道場で。
あと、俺はどんな胡蝶でもいい」
そういって出ていってしまった。でも、落ち着いてみるとバカなことをしたものだ。自分の限界を知って適度に休憩をしろ。前あの人に言われた言葉だ。
そして、さらりと姉の仇をとることを否定しなかった。仇をとるなら鍛練しろ。それだけだ、あとそのあとに付け足された言葉はきっと、弱音を吐いたときの私の言葉についての返事だろう。姉が言った言葉を思い出す。
『冨岡君は優しい人よ』
当時は理解できなかったが、確かにいつも私がつらいときはいつもいてくれて。私のことを認めてくれて。さらには姉の仇をとることも否定しなかった。本当に貴方は
「優しい人だなぁ」
だれもいない道場に声が響く。