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次は私がヒーローだから
登場人物
園部愛衣 若宮真琴
その他モブ
バレーボールのボールを打つ音と大きな歓声、緊張する心臓の鼓動がじんわり聞こえる、3時間目の体育の時間。体育館はスポーツの熱気で蒸し暑くなっていた。そこから追い討ちをかけるように窓から覗き込んでくる昼の光が床に当たって暑さを増している。
皆、口々に「疲れた」「暑い」「お腹すいた」など愚痴を言い放っていた。園部愛衣と若宮真琴もその愚痴を言っていたうちの2人である。2人はバレーボールの試合が終わり、次の試合を隅っこの方で見ていた。
「んー、、お腹すいたぁ。早くお昼にならないかな、ねえ愛衣?」
「ん〜?私もお腹すいた。4時間目ってなんだったっけ、、、?」
「4時間目って、、、。社会Aじゃん!?うわぁ、あの先生眠いから嫌なんだよなぁ」
「私もあの先生の授業眠い、、」
「え、愛衣も授業が眠たいって感じることあるんだ」
「そんぐらいあるよ(笑)」
そんな他愛もない会話をしていた時だった。
「危ない!!!!!」
はっと気がついた時はもうボールが目の前に来ていた。
私は元々運動神経が良かったから避けることができたけど、運動が苦手な愛衣はそうは行かなかった。
ドン、と鈍い音がして後ろを振り返ると床に横たわっている愛衣が居たーーー
「園部さん大丈夫!?」
「園部さん、、?ねえ大丈夫なの?」
周りには愛衣が心配で見にきた大勢のクラスメイトが愛衣と私を囲んでいた。
どうやら、クラスの人が投げたサーブが運悪く話していた私達の方向に行ってしまい、そのまま愛衣にボールが当たったと言うことらしい。
あいにくその時先生は体育館から席を外していた時で、先生を待つわけには行かない。
「どうしよう、園部さん保健室に連れて行かなきゃ」
学級委員の女の子が不安そうに言う。
「でも誰が行くの?」「私連れて行けないよ〜!」
みんなパニック状態。
今、何をすればいいのかさえわかんない。
そんな騒音の中、私の声が響いた。
「私が愛衣を保健室に連れて行く。だからだれか先生に言っといて!」
私は考えるより先に言葉が出ていた。
クラスメイトは一瞬固まっていたが、すぐにそれぞれやるべきことを理解して行動していった。
普段仲があまり良くないクラスだが、いざとなるとこう言った団結力があるところが流石だなぁと感じる。
愛衣をお姫様抱っこして保健室へと向かう。いつも走ったらこけるところも今日はこけなかった。
ーーー
「んー、、?」
あれ、私、何してたんだったっけ、、?
確か、ボールが急に飛んできて、、?あれ?それで?
見慣れ無い天井が目に映る。そこに、私の大好きな人の顔が見えた。
「真琴、、、?」
掠れた声でゆっくりと呼ぶ。
「!愛衣〜!目覚めたんだよね、よかった!愛衣、今痛いところない?記憶ちゃんとある?私の声聞こえる?」
明るいながらも優しい声でそう問いかけてくれた。
「真琴、、うん、今は何にも支障無いよ。心配ありがとう。」
「あー!愛衣が元気そうで良かった!」
「ねえ真琴」
「ん?」
「真琴が保健室まで運んできてくれたの、、?」
「ん〜?それはどうかなぁ?」
「ええー!真琴教えてよぉ」
「教えてあーげない!」
「真琴〜〜ちょっとだけ教えてっ!」
「教えないもん!」
「真琴ぉぉ」
幸せそうな声が保健室中に響き渡っていた。
そういえば今は何時なんだろ?随分時間が経ったように感じるけど、、。
「そういえば真琴?」
「ん?」
「今何時?」
「今はね〜4時!」
「え4時!?」
嘘ぉ。私そんなに意識なかったの?なんか、真琴に申し訳ないなぁ、、、。
「え真琴真琴」
「ん?」
「部活って大丈夫そう、、、かな?」
「あ」
「え」
え、、?真琴大丈夫そうな感じ、、?
吹奏楽部は基本的に自由な感じだけど、学校で有名なぐらい時間厳守な部活である。
少しでも遅れたら、遅れた分数×原稿用紙の反省文を書かないといけない。
かなりきついらしいけれど、、?
「やばい!!吹部4時5分からなのに!」
「え嘘!急いで行っておいで!」
そう、吹部の部室、、いわゆる音楽室は何故か別棟にある。
「うん!あ、でも愛衣が心配、、」
「心配じゃない!今は真琴の方が心配!」
「あ、ええっと、、じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!、、あとありがとう!」
最後まで私の心配をしてくれるなんて、いい恋人を持ったな。
後に養護教諭の先生に話を聞くと、授業中以外はずっと保健室に来て私の心配をしてくれてたらしい。
ちゃんとしたお礼もできなくって申し訳ないけど、また今度しよう。
いつもドジだけどこういう時はかっこいいの、ほんっと好き。
なにかあったら次は私が助ける。今度は私がヒーローになるよ。私のヒーローさん。
まだ空がオレンジ色に染まっていない4時頃。
書道部へ行こうとした道中、トロンボーンのチューニングの音が響いていたーーー
お疲れ様です!
第3話、如何でしたか!
自分で読み直してみたところ、展開が思ったより早くて、修正しようと思ったんですけど急にめんどくさくなっちゃって(?)そのまま公開することにしました()
また第4話もお楽しみにお待ちください!
では、また会いましょ〜!