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●第一奏 解放と自由の束縛⑷
柵を乗り越えて校舎裏に回ると、一階の窓が開いていた。
「ラッキー!入るよ!」
「大丈夫ですか…?捕まりませんか?」
「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
確かに奈子さんの言うとおりだ。
前周りをするときの要領で地面から足を離し、半分回転しながら中に入った。
奈子さんなら足を引っ掛けて登れるだろうが、なんせ俺は身長が150cmに満たない。
後ろを見ると、奈子さんが足を引っ掛けて四苦八苦していた。
彼女が下に履いているものがズボンであれば視線はそのままだったが、あいにくスカートを履いていた。それも固い生地のミニスカート。
咄嗟に視線を逸らしたが、スカートから少し覗いた太ももが脳裏に焼きついてしまった。
「よいしょっと…ふぅ…って、ここ音楽室じゃんっ!」
懐かしー、と近くに置いてあった打楽器を手に取る。
その打楽器を貸してもらって叩くと、ぽんぽん、といい音がしてなんの楽器だか気になった。
『キャァァァァ!!!!!!!!』
耳をつんざくような叫び声が廊下から聞こえ、ドタドタと騒がしい音がする。
「行ってみましょう!」
「了解!」
扉を開けて周りを見ると、運動着姿の女子生徒がロボットに追い詰められていた。
「い…いや…」
恐怖に怯える彼女を見ると、足が地面にくっついたように動かなくなった。
助けに行かないとと思っているのに、体が言うことを聞かない。
「律くん!これ持ってて!」
こちらにハイヒールを投げてきたかと思うと、奈子さんは低い姿勢でロボットに突進する。
全体重をかけた肘打ちをかますと、不意をつかれたロボットは壁に叩きつけられた。
「ったた…大丈夫!?怪我ない!?」
「だ、大丈夫ですっ…!あ…ありがとうございます…!」
ロボットが動き出すが、それに気づかず奈子は女子生徒をおぶる。
その瞬間、初めて体が動いた。
「奈子さん!!!後ろ!!!!!」
そう言ってぶん投げたのは、先ほどの打楽器だ。
ロボットの頭にクリーンヒット…かと思いきや、それをかわしてロボットはこちらに突っ込んできた。
「う、うわぁぁぁ!!!!!」
逃げ出そうとしたが、後ろからもロボットが迫っている。
挟まれた。
ロボットの口が、ありえないサイズまで開く。
食われる──!