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小説「聖夜の奇跡」 No.2
登場人物
・カイ
・アヤ
時が少し経ち、完全に日が落ちて夜が始まる。
イルミネーションで有名な駅前が街が彩られた。
家族や恋人など、皆が大切な人とこの時間を過ごしている。
そんな中、一人でベンチに座る影。
気まずいとは思いながらも影は人を待っていた。
スマホを開いては閉じる。
また開いて、ため息をつきながら閉じる。
「うーん、既読つかないな」
マフラーを巻いていてもまだ寒く、鼻の先が赤く染まっていた。
冷たい手に、温かく白い息をかける。
「カイ!」
自分の名前を呼ばれた影は顔を上げる。
懐かしい声と姿に、スマホをしまって立ち上がったカイ。
「お、お待たせ。結構待たせちゃったよね」
「大丈夫、今来たところだから。一度来たことがあるとはいえ、迎えに行ったほうがよかったか?」
「二回来たことあるよ!」
悪い悪い、とカイは笑う。
頬を膨らませて怒っていたのはアヤ。
遠く離れたカイの地元から来た、幼馴染だ。
「それにしても東京は人が多いね。カイと離れないようにしないと」
初めて東京に来たような反応を見せるアヤ。
そういえば、とカイは疑問に思った。
数日間東京にいるのに小さな荷物しかない。
駅のロッカーに入れてきたのか聞こうとしたが、手を引いて走ったアヤに聞くことは出来なかった。
やっと止まったかと思えば、イルミネーションに目を輝かせている。
カイは息を整えながらスマホを構えた。
自身やアヤの母親に写真を送る約束をしており、撮らないと後が面倒くさいのだ。
No.3は2022/09/15/12:00公開予定です