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夜の縁側。
似た様なネタだね、多分。
後短いよ。
いつもなら任務がないこの時間、すやすや寝ている筈なのに今日は妙に胸騒ぎがして寝付けなかった。
何か嫌な事を思い出したりしたっけな、とか思いながら縁側にちょこんと座る。
この時間帯の縁側は気持ちが良い。
なんせ静かに冷たい夜風がたまに吹いて、身体を少しだけ冷やしてくれるから。
それに、自分のことをしっかりと考えられるからだ。
そういえば、今日は満月だったっけか。
だから縁側が月明かりで照らされているんだな、なんて考えたりしながらもぼーっと月を見上げる。
─────ふと、背後に誰かがいる気配がした。
続いて、優しく
「……眠れないのか」
っていう義勇さんの声が聞こえてきた。
びっくりして背後を振り向くと、いつの間にか義勇さんが立っている事に気付いた。
でも、それ以上に安心感が身体中を包み込んだ。
「……少し、胸騒ぎがして……」
少し小さい声でそういうと、少しだけ笑った様な気がしたけど、その後ゆっくりと近づいて私の横に座ってきた。
しかも、肩と肩が触れ合うんじゃないか、って言える程の近さだった。
それのせいで心臓が少しうるさくなる。
……でも、心臓はうるさくなるけどそれでも落ち着くような感覚になる。
月明かりに照らされている義勇さんの横顔を見ると、胸がぎゅっと締め付けられた。
─────いつもは慣れているのに、なんで今日はこんなにドキドキするんだろう。
「っ……」
恥ずかしくて、目をふっと逸らしてしまう。
でも義勇さんからは少しだけ不思議な視線を感じただけで、何も言ってこなかった。
気付けば恥ずかしさより眠気が襲ってきて、思わず義勇さんの肩にもたれかかっていた。
自然と暖かさを感じて、安心するなって思いながら目を閉じる。
「どうした?」
義勇さんが優しくそう聞いてきた。
私は弱々しく
「うぅん……」
って言う曖昧な返事しか答えられなかった。
「……そうか」
ふと、自身の手に暖かくて柔らかい感覚が来るのがわかった。
少し眠い目を薄ら開けながら確認すると、手を重ねられているのがわかった。
義勇さんが、私の手の上に自身の手を重ねていた。
「っ、え……?」
声を小さく漏らしたが、義勇さんは何も言ってこない。
だけど、優しい視線を向けているのかなって思ってしまう。
でも暖かさを感じてしまって、何も言葉が出てこなくなった。
そのまま眠気がドッと襲ってきて、耐えていた重たい瞼が遂に降りてきた。
そして、こくんと眠りの世界に落ちてしまった。
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隣から、澪の静かな寝息が微かに聞こえてきた。
少し視線を向けてみると、気持ちよさそうな寝顔をしながら寝ている澪が見えた。
そんな澪の手は、小さくて暖かい、そして力が少し入っていることがわかった。
安心しているのか、それともまだ少し不安だったのか。
真偽は分からないが、少し可愛く見えて思わず頬が緩む。
─────おやすみ、澪。
囁くと同時に、俺は澪の手をそっと握り返した。
手を握る理由など必要なかった。
ただ、触れたくて、守りたくて、離したくなかった。
夜は静かに更け、夜風が頬を静かにくすぐった。
澪の寝息が少しだけ心地よくて、夜明けまで見守り続けた。
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「ん、……」
空がある程度明るくなった頃、私はぽやっとした頭で何とか目を開ける。
ずっと同じ体制で寝ていたのだろうか、少し身体が痛い。
……ん?同じ体制?
ふと気付き、眠ってしまう直前に重ねられていた手を見る。
それと同時に、気付いてしまった。
重ねられていただけの手は、いつのまにかしっかり握られていた。
「っ!?!?」
隣では少し襖の方に寄りかかって寝ている……というか、目を閉じている義勇さんが居た。
わざわざ縁側に居てくれたのかな、って思うのと同時に、ずっと手を握っていてくれたのかな、なんて考えてしまう。
兎に角、手を一旦離さないと……
「……っ、ぎ、義勇さっ……?」
手を引こうとすると、逆に指先の方に力を入れられて離せなくされる。
どうしよう、なんて思っていると、不意に義勇さんが
「……もう少し、いいだろう」
って、優しいような……それでいて低い声で言ってきた。
その声で胸が嬉しい気持ちでいっぱいになって、思わずぎゅっと手を握り返した。
でも心臓は鼓動がうるさくて、少しでも気持ちを落ち着かせようとふいっと視線を外した。
そんな私を見てか、
「どうした?」
って聞いてきた。
言葉に詰まりそうになりながらもなんとか、
「いや……義勇さんが綺麗で……」
まで言葉を絞り出してから気付いた。
私は何を急に言い出したんだ、という事実に。
「……そうか、」
小さくそれだけ言ったのが聞こえてきたのがわかった。
どう思っているのかな、とか思っていると急に握っていた手を優しくぐいっと引っ張られた。
「えっ、どうし……?」
義勇さんの方を向いて、不思議そうに見つめると、不意に目が合った。
ちょっとびっくりしたな、って思った次の瞬間、
─────私の手の甲に優しく口付けをしてきた。
……口付けをしてきた!?
「えっ、あ……え!?」
顔が急激に真っ赤になるのがわかった。
心臓の鼓動もあり得ないぐらいうるさくなっていて、本当に恥ずかしい。
「ちょ、っと……本当に……」
恥ずかしくなりすぎて、義勇さんの方を見れなくて視線を外した。
義勇さんが何も言ってこないのがさらに恥ずかしい。
はぁぁぁ……と息を吐いて、その場に蹲った。
「なんで急にしてきたんですか……」
ちっさい声でそう聞くと、
「……嫌だったか?」
って少し申し訳なさそうに聞いてきたから、慌てて顔を上げて訂正する。
「いや、そういう訳じゃないんですけど……」
顔を赤くしたまま、また視線を外した。
本当に恥ずかしくて、言葉が出てこない。
「じゃあどうしたんだ?」
「もう……やめてください……」
「じゃあやめるぞ?」
「うぅ……」
少しだけ涙目になりながらも、どうしたらいいか分からなくてまた手をギュッと握った。
それを見てかは分からないが、微かに義勇さんが笑ったのが聞こえてきた。
本当に顔が熱い。
夜から朝までずっと義勇さんと居れて、しかもこんな事をしてもらえて。
私は幸せなのかもしれないな。
既存キャラの視点って難しくない?
義勇はこんなキャラじゃない。
今回は本当に妄想です