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帰宅
家の前に車がなかった。母親は今出かけているらしい。鍵出さなきゃ。
玄関でリュックをまさぐる時間が、もったいないと思った。カチャカチャと二回の解錠音、ドアを引っ張って、リュックは背負い直さないまま、靴を脱ぎ捨てた。リビングの電気スイッチをさわる。片手でドアを開けると、使ったままのヘアアイロンが床の端にあるのが視界に入った。あ、家出る前、片付けてなかったんだっけ。机の上には水の入ったコップ。朝ごはんのあとに薬飲んだやつの残り。トレーに乗った皿は、お弁当のおかずを乗せていたもののはずだ。
朝のままの光景。時間の流れに取り残されたような部屋に、一人。
手が痛くなってきた。リュックを、がつんと床に落とすようにおろした。乾燥機がぶぉぉんと鳴りつづけている。ヘアアイロンは、拾いかけて、やっぱりお姉ちゃんのだから放っておくことにした。放置されてかわいそうな水は、台所のシンクに流す。
テレビをつけると、午後のニュース番組が流れていた。無性にほっとした。