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雑文恋愛「勇者と魔王の密談~囚われし王女をさらえっ!~」
Fランクから始めよう
ここは異世界。誰がなんと言おうと異世界である。そして今、そんな異世界におけるスタンダードとも言える広大な魔王城の中を謁見の間目指して駆けるひとりの少年の姿があった。
少年の目的はただひとつ。魔王を討ち果たし人間たちと魔族の間で殺しあっている戦争を終わらせるのだっ!
その為に少年は幾多の敵を倒しここまで来たっ!残るは魔王のみっ!そして最後の扉の向こうにいたのはっ!
勇者「魔王よ、今日が貴様の最後だ!覚悟しろっ!」
魔王「ほざけっ!今日の余興にわざとここまで進ませたのだ。己が実力で辿り着いたと思うなよ。」
勇者「見苦しいぞ、魔王っ!四天王たちは全て倒した。最早貴様を守るものはいないっ!」
魔王「ふんっ、あやつらは全て偽者である。本物の四天王たちには有休を与えた。なので今頃温泉旅館でドンチトャン騒ぎの最中だ!」
勇者「なっ!馬鹿な・・。でも確かにいつもの四天王よりかなり弱かったかも・・。」
魔王「城の守備兵たちも金を払って集めた農民たちだ。お前が疑念を抱かぬように数だけは揃えたからな。気付かなかったであろう。」
勇者「なっ!た、確かにあいつら全然向かってこなかったな。」
魔王「全てはお前をここに呼び寄せる為の手筈である。誘い込まれたとも知らず啖呵を切るとは恥ずかしいのぉ。」
勇者「くっ、うるさい!過程がどうであろうと貴様を倒せばいいことだっ!いざ、尋常に勝負だっ、魔王っ!」
魔王「断るっ!」
勇者「あ~っ、てめぇ!それは本来俺の台詞だろうがっ!勝手に使うなっ!」
魔王「勇者よ、少し頭を冷やせ。お前はサボっていたから聞いておらんだろうが、人間界とは半年間の停戦が締結したのだぞ。しかも1ケ月も前にだ。」
勇者「なっ!そんな話は聞いていないぞっ!」
魔王「そら、そうだ。お前、軍議にも出ないで女兵士の尻を追い掛け回してばかりいたそうじゃないか。」
勇者「なっ、何故それを貴様が知っているんだ!はっ、まさか陣内にスパイが?」
魔王「停戦交渉に来た人間界の使節が言っておった。軍議に出ないアホ勇者が一人いるから気を付けてくれとな。軍が動かないことを良い事に抜け駆けするかもしれないと。お前、可哀想だのぉ。行動を読まれておるぞ。」
勇者「ぐわらっ!参謀のやろう、このタイミングで告げ口かあ!」
魔王「お前あっちでも浮いていたそうじゃないか。悉(ことごと)く他の勇者の案に反対したそうじゃのぉ。」
勇者「くっ、・・だってあいつらいつも俺のことを味噌っかす扱いにして前線から外そうとするんだぞっ!俺は勇者なんだ!常に先頭を駆け抜けたいんだよっ!」
魔王「お前アホじゃな。戦争と魔物討伐がごっちゃになっておる。お前の区画だけが突出しても、空いた脇から別働隊が挟み込んだら終わりじゃろうが。」
勇者「そんな部隊は返す刀でなぎ払うっ!」
魔王「やれやれ、人間界の参謀もとんだお荷物を抱えていたのじゃな。あやつがやつれていたのはお前のせいか。」
勇者「魔王よ、貴様、参謀の言うことを信じたのか?油断させておいて奇襲をかけて来るとか思わないのかよっ!」
魔王「確かにお互い戦争をしている身だ。相手を信用する訳にはいかぬ。だからと言って疑ってばかりでは話が進まぬ。故にお互い人質を交換した。これでお互い抜け駆けはできん。」
勇者「人質?聖王は一体誰を差し出したんだ?」
魔王「あーっ、名前はマリアンヌ王女と言ったかな。」
勇者「マリアンヌおうじょーっ!何考えているんだ聖王はっ!そもそもこの戦争の発端はあいつの我侭からだろうがーっ!」
魔王「なんだ、お前知っていたのか。まぁ、聖王もさすがに娘の我侭で戦争しますとは言えんからな。なので表向きの大義は異端種の討伐にしたそうじゃないか。ちょっと理由としてはこじ付けがバレバレだったが宗教系の理由なら大抵の者は意見出来ぬしのぉ。」
勇者「だからって神の恩名を神輿にするなぁーっ!」
魔王「そうじゃな、わし等もさすがに神の名を騙(かた)られては黙ってはいられんからな。まったく、神とは厄介なものじゃわい。」
勇者「魔王よ、俺はお前に寝返るっ!さっさと王女の首を刎ねよう。そうすれば双方遺恨なく戦争を終えられる。俺にやらせてくれるなら金貨を12枚くれてやるぞっ!」
魔王「お前、しょぼいな。」
勇者「しょぼい言うな!俺の全財産だぞっ!」
魔王「全財産が金貨12枚とは・・。因みにわしが差し出した人質はどうなるんじゃ?」
勇者「戦争に犠牲は付き物だ!諦めろっ!」
魔王「お前、正直というか周りの迷惑を顧みんやつじゃな。それでよく勇者を名乗れたものじゃ。」
勇者「俺は世界の正義の為に生まれてきた。故に俺の行動は全て正義だっ!俺の行動こそが正義なんだっ!そして正義に犠牲は付き物なんだ。しかし、それは殉死だ。正義に殉ずるのだ。だから喜んで死んでゆけっ!」
魔王「いやはや、お前に正義を説いた者の頭をかち割って見てみたいものじゃ。さぞかし真っ直ぐであろうのぉ。」
勇者「なんだ、俺の師匠に会いたいのか?だがそれは無理だよ。当の昔におっ死んだからな。」
魔王「ただのぼやきだ。真にとるな。やれやれ、やっと停戦までこぎ着けたのにこんな隠し玉を用意していたとはな。神もえげつないことをするものだ。」
勇者「ふんっ、さすがは魔王だ。この期に及んで神を愚弄するとは自身の立場を心得ている。俺は正義、お前は悪。このふたつは相容れないもの。いざ、尋常に勝負だっ!」
魔王「お前、先程、わしに寝返ると言っていなかったか?」
勇者「あれっ、そう言えばそんな事を言ったような気が・・。なんで?」
魔王「やれやれ、鳥頭であったか。」
勇者「でも何で魔王は俺を誘い込んだんだ?俺は勇者だぞ?近くにいたら危ないだろう?」
魔王「まあな、これはわしにとっても賭けであった。しかし、見事に外したようだ。よもやここまでお馬鹿であったとは・・、抜かったわっ・・。」
勇者「なっ、人を馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞっ!昔、先生が言っていたっ!」
魔王「あまり言葉の隅をほじくるな。話が進まんっ!お前はどこぞの野党かっ!っと、また話が横に逸れるな。いやはや、面倒だのぉ。」
勇者「ひとりで話して自分だけで納得するなっ!ちゃんと俺に判るように説明しろっ!」
魔王「あーっ、判った、判った。今説明するからちょっと落ち着け。」
勇者「魔王よ、ここって客用の椅子はないのか?お前だけ座っているのはずるくないか?」
魔王「落ち着いた途端それか・・。ほれ、そのカーテンの裏にあるから持ってこい。」
勇者「おっ、あるじゃないか。うひょ~、こんなふかふかの椅子に座るのは初めてだ。何だか偉くなった気分だぜっ!」
魔王「もういいか?今から話すことは真面目な事だからな。聞き逃すなよ。」
勇者「おうっ、でも難しい言葉は使うなよ。参謀たちはすぐ俺が判らない言葉を使って誤魔化そうとするからな。あいつら、嫌いだよ。」
魔王「それはお前の方にも問題が・・、いや突っ込むのは止めよう。では本題に入る。お前、マリアンヌ王女を連れて帰れ。」
勇者「へっ?何で?あの馬鹿王女は人質なんだろう?逃がしたら駄目じゃん。」
魔王「うむっ、確かに通常ならそうなんだが、あれは些かわしの手には余る。はっきり言うと迷惑でしかない。だからお前が引き取れ。」
勇者「嫌だよっ!俺だってあいつとは顔を合わせたくないよっ!あいつったら俺と顔を合わせる度に嫌味を言うんだぞっ!それも毎回違う事でさ。よくもまぁ、ネタが尽きないもんだと思えるよ。どんだけ俺に嫌味を言うことに情熱を傾けているんだってんだっ!」
魔王「くくくっ、お前好きな子にわざとちょっかいを出してしまうお子ちゃま感覚を理解しておらんな。」
勇者「何だ、それ?訳わかんねぇ。」
魔王「お前はそうゆうが、マリアンヌ王女に初めて会った時はお前も電撃に打たれたように固まっていたそうじゃないか。」
勇者「だっ、誰がそんな事をっ!」
魔王「王女のお付の侍女が言っておったぞ?右手と右足が一緒になって歩いてたとな。」
勇者「ぐわ~っ!侍女めっ!確かにあの時は可愛いと思ったんだっ!でもあいつって見た目と性格は一致していないからっ!超我侭だからっ!性格サイアクだからっ!」
魔王「ほうっ、そうなのか?それにしては別の勇者たちからは慕われておるような事を言っておったぞ?」
勇者「あいつは裏表があるんだよっ!他の勇者たちにはいい顔しかしないんだっ!俺にだけ本性を現すんだよっ!」
魔王「お前にだけのぉ。にしてはお前も王宮に入り浸っていたのだろう?」
勇者「あいつがなんやかんやと俺に無理難題を押し付けるからだっ!本当は側になんか居たくなかったんだからなっ!本当だぞっ!」
魔王「くくくっ、まぁいい、とにかく王女はお前に預ける。但し、王国には連れて行くな。お前の言う通り王女は人質だ。その人質が戻っては聖王としても議会を抑えておけぬからな。せっかく成立した停戦合意を不安定なものにしてはいかん。」
勇者「だったら貴様が縛り付けておけよっ!何だったら俺がお尻ペンペンしてやるっ!日頃の恨みを晴らしてやるぜっ!」
魔王「だから先程も言っただろう?あの王女はわしの手には余る。かと言って聖王に人質を代えてくれとも言えんからな。だからお前が連れ出せ。そして事が安定するまでふたりしてどこかでひっそりと隠れておれ。」
勇者「何でそうなるんだよっ!俺だけ貧乏くじじゃんっ!」
魔王「勇者とはみなの幸せを望むものなのだろう?お前ひとりがハズレを引けばみなが幸せな世界が訪れるのだ。」
勇者「訳わかんねぇ~。」
魔王「勇者よ、此度の人質交換によって人間界と魔界の争いは一旦矛を収めることとなった。大規模な合戦を行なう前にな。これはつまり双方まだ十分な戦力を有しているという事だ。ここでわしが王女を亡き者にしたらその巨大なチカラがぶつかり合う事となる。その結果はお馬鹿なお前でも想像がつくだろう?」
勇者「お前らの惨敗だっ!」
魔王「そうか?まぁ、それでもよい。しかし、我らとてただでは負けぬぞ?ひとりでも多くの人間を道連れにしてやる。さて、戦いが終わった時に人々はこの争いのきっかけとなったお前と王女をどう見るかのぉ。」
勇者「英雄と性格ドブスだっ!」
魔王「・・。そうだな、お前はそうゆうやつだった。参謀も大変じゃったのぉ。」
勇者「とにかく、俺は英雄になりたいんだっ!」
魔王「いやはや、アホ一直線じゃな。仕方ない、ほれ、喉が渇いたであろう。茶でも飲め。」
勇者「おっと、悪いね。うんっ、うまい!くそ~、魔王ともなるとこんなにうまい茶を飲んでいるのか・・。やっぱり許せんなっ!」
魔王「お前、茶を貰っておいてその言い草か・・。それはそんなに高いものでもないぞ?」
勇者「そうなのか?因みに幾らくらいなの?」
魔王「そうさのぉ、1杯、2銅貨くらいか?」
勇者「2銅貨って俺の日当じゃんっ!」
魔王「お前、参謀にピンハネでもされておるのではないか?その額って新兵の日当より安いぞ?」
勇者「うーっ、実はこの前壊した城壁の修理代を天引きされてるんだ・・。本当なら1日5銅貨なのに・・。」
魔王「なんだ、そんな馬鹿な事をしたのか。しかし、城壁を壊すとは・・。やはり馬鹿にチカラを持たせてはいかんな。」
勇者「うーっ、ちょっとチカラの加減を失敗しただけなのに・・。そもそもあんなところに城壁があるのが悪いんだ・・。いや、というか、あれってマリアンヌがやって見せろと言ったんだった!なら全てはあいつが悪いんじゃんっ!俺って全然悪くないよなっ!」
魔王「そう興奮するな。薬の回りが速くなってしまう。」
勇者「くすり?」
魔王「いや、こっちの話だ。うんっ、その茶は気持ちを落ち着かせる効能があるからな。一種の薬みたいなものじゃ。」
勇者「ふ~ん、そうなんだ。」
魔王「しかし、そんな安月給のお前がなんで金貨などを持っておるのだ?しかも12枚も。」
勇者「あっ、それは・・。その・・、マリアンヌがくれたんだ・・。」
魔王「ほうっ、それはまたなんで?」
勇者「俺の夢が師匠の墓を建ててやることだって話したら足しにしろって・・。」
魔王「ほうっ、あの王女がのぉ。」
勇者「あっ、でも別に特別じゃないからなっ!別の勇者はもっとすごいの貰っているんだからっ!」
魔王「どんな?」
勇者「えっと、聖騎士の剣とか領土とか・・。」
魔王「それって国費からじゃよな?国王の代理として授与しただけだよな?だからお前が貰った金貨のように王女本人の財布から出た訳ではないよな?」
勇者「いいんだっ!あいつ小使いをたんまり貰っているんだから、あれくらい大した事ない・・はずだ。」
魔王「お前が貰った金貨って結構使い込まれていたそうじゃないか。侍女が言っておったぞ。」
勇者「うっ、だからなんだよっ!」
魔王「王女がアルバイトをする訳にもいかないからな。では王女はその金貨をどうやって調達したのかのぉ。さてはパンツでも売ったか?」
勇者「そんな訳あるかっ!っと言うか王女のパンツならもっと値がつくだろうっ!」
魔王「まっ、そうじゃな。さて、ならばそんな王女の首を刎ねにいくかのぉ。」
勇者「なっ、何でだよっ!貴様さっき不安定になるって言ってたじゃないかっ!」
魔王「言ったな。しかしのぉ、あの王女はやはりわしには手が負えぬ。まっ、魔法で影武者でも作って誤魔化すから当分はばれぬじゃろう。あーっ、勇者が引き取ってくれればこんな事はしなくてもよいのじゃがのぉ。」
勇者「くっ、判ったっ!マリアンヌは俺が引き取るから手をだすなっ!」
魔王「あっ、引き取ってくれるの?いや~、お客さん。あんた良い買い物をしたよ。よしっ!ここは奮発して砂金も1キロ付けちゃおうっ!魔界と王国内のフリーパス券もサービスしちゃうよ。」
勇者「何で貴様が王国内のフリーパスを持っているんだよっ!」
魔王「あーっ、参謀がくれた。というか魔界の通行券と交換したのだ。話し合うにはお互い行き来せねばならぬからな。」
勇者「新幹線のフリーパスはないの?」
魔王「あれは日の丸国の国会議員用じゃからな。あやつら恵まれておるのぉ。というか新幹線ってなんじゃ?」
勇者「くっ、参謀のやろう、俺は歩いてきたのに・・。ブルジョアめっ!」
魔王「さて、ではお前の気が変わらぬ内に引き渡すとするか。こっちじゃ。付いて参れ。」
勇者「ううっ、なんでこんな事になっちゃったんだろう・・。」
魔王「日頃の行いの報いじゃ。天は常に見ておると言う事じゃな。お前の気持ちも王女の祈りものぉ。」
勇者「あいつの祈り?そうかっ!あいつは俺をもっといじめたくて祈っていたんだなっ!」
魔王「何でそっちにいくかな。まぁいい。ほれ、着いたぞ。」
勇者「へっ?ここなの?地下の牢獄あたりに鎖で繋いでいるんじゃないの?」
魔王「仮にも王国の人質じゃぞ?そんな訳ないだろう。いや、出来るならそうしたいくらいなんじゃがな。全く、あやつは手に負えん。我侭が過ぎるわい。」
勇者「だろうっ!やっと魔王とも話が合うようになったなっ!」
魔王「それはそれでどうかと思うが・・。じゃ、後は任せたぞ。」
勇者「えっ、魔王は来ないのか?」
魔王「わしが出てはお前がさらった事にならんじゃろう。あくまで表向きはお前にさらわれた事にしておかないとな。でないと王国から叱責されてしまう。わしは王国の好戦派に停戦破棄の糸口などくれてやる気はない。」
勇者「うーっ、そうかも知れないけど・・。黙っておくから一緒に会おうよ。」
魔王「ごめんじゃ。さて、わしは四天王たちがおる温泉に行く準備でもするかのぉ。あっ、こんな所に城内から裏口に出る地図が落ちておる。まっ、いいか。後で片付けさせよう。それよりも温泉じゃ。ああっ、王女の相手で肩が凝った。早く行ってゆっくり湯にでも浸かりたいわい。」
勇者「うーっ、なんかあんただけ得してないか?」
魔王「そんな事あるまい?そもそもお前、勇者なのだろう?なら言った事はきっちり守れよ。それじゃな、さらばだ、勇者よっ!」
勇者「あうっ、行っちまった・・。何だよ、みんなして厄介ごとを俺にばかり押し付けやがって・・。くっ、やってやるさっ!俺は勇者なんだっ!英雄になるんだっ!」
王女「うるさいわよっ、魔王っ!頼んでおいたシルクのドレスはまだなのっ!いつまでこんなセンスのないドレスを私に着させておくつも・・、あら勇者じゃない。何であなたがここにいるの?」
勇者「いや、その・・。魔王を倒しに来たんだけど・・、何か廻りまわってここに来ました・・。」
王女「魔王を倒しに?あなた今停戦中だって事知らないの?」
勇者「いや、その・・、はい、知りませんでした。」
王女「全くっ、本当にあなたって馬鹿ね。」
勇者「くっ、やっぱり殺そう・・。」
王女「何か言った?」
勇者「いやっ!何も言ってないよ!うんっ、言ってないっ!」
侍女「まぁ、勇者様っ!姫様を助けに来てくださったのですねっ!なんて勇気がおありな事でしょうっ!さぁ、姫様っ!善は急げです!早速逃げましょうっ!あっ、こんな所に城の見取り図がっ!これさえあれば簡単に脱出できます!さぁ、急ぎましょうっ!勇者様はこのカバン持って下さい。」
王女「えっ、侍女?駄目よ、私が逃げたらまた争いが始まってしまうわっ!」
侍女「大丈夫ですよ、姫様。勇者様は王国側。王国には魔王の差し出した人質がいますから魔王は王国と事を起こせません。あっ、でもこのまま姫様が王国に戻ると王国内の好戦派が活気付いてしまいます。なのでここは勇者様と共に暫く身を隠しましょう。丁度この前カードゲームで私がフランネル男爵から巻き上げた別荘が魔界の近くにあります。あそこなら人目もありませんからそこへ行きましょうっ!」
勇者「魔王めっ、侍女とも話がついていたのか・・。手抜かりないな。」
王女「えっ、何のこと?」
勇者「いえ、何でもないです・・。侍女、荷物ってこれだけでいいのか?」
侍女「はい、後のは替え玉が使いますからそのままにして行きます。さっ、姫様っ!急いで下さいっ!」
王女「ちょ、ちょっと何なの?ちゃんと説明しなさ・・。」
侍女「ささっ、説明は後です。ほら、ちゃちゃっと歩いて下さい。あっ、そこの扉を開ければ裏口です。多分馬車が用意されていますから失敬しましょう。」
王女「何なのよ、もうっ!いいわっ、ほら勇者っ!さっさと扉を開けてっ!」
勇者「う~っ、何かいつもと同じなんだけど・・。まっ、いいか!よしっ、あの丘の向こうに向けて出発だっ!」
かくして勇者と姫様とお付の侍女による新たな物語がここから始ま・・。あれっ?終わっちゃったよ?続きはないの?予算の関係?人気がいまいちだった?なんだかなぁ~。
-完-