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迷ヰ兎とチョコマフィン
今日はこれを投稿するから最終章はお休み☆
因みに最終章のネタバレ的なの含むよ☆
No side
今から十年以上前の2月14日。
そう、その日はルイスとロリーナが英国軍に入って初めてのバレンタインだった。
しかし、戦場に立っていた軍人達にはチョコレートを贈り合う余裕なんてない。
送り合うのは互いの国の兵士。
型にチョコレートを流し入れることはなく、ただ血が流れる。
ロリーナ「甘いもの食べたい」
ルイス「急だね」
戦闘と戦闘の合間。
二人をはじめとした英国軍異能部隊はつかの間の休息を取っていた。
ロリーナ「だって今日は2月14日だよ? バレンタインだよ?」
ルイス「それぐらい知ってる」
ロリーナ「対して美味しくない料理を毎日食べて、戦って、寝て、奇襲で起きて。今日ぐらい甘いものが食べたい!」
ルイス「君、それ何かの行事ごとに云ってるよね」
だって、とロリーナは手に持っていた剣で地面に絵を描く。
ケーキにプリン、果物。
地に描かれた食べ物達を見て、ロリーナは微笑む。
ロリーナ「いつか一緒に食べようよ、ルイス」
ルイス「……僕と?」
ロリーナ「うん。ルイスは英国軍のご飯しか知らないでしょ? この戦争が終わったら、私のおすすめのお店に連れてってあげる!」
ルイスは少し首を傾け、そして小さく笑った。
ルイス「──……楽しみにしてるよ」
ロリーナ「あ、ルイスが笑った!」
ルイス「……。」
ロリーナ「あぁ! いつもの真顔に戻っちゃった!」
シャルル「楽しそうだな、二人とも」
ルイス「あ、隊長」
ロリーナ「隊長! さっきルイスが笑ったんですよ!?」
シャルル「……そうか」
笑ってー、とルイスの頬を引っ張るロリーナ。
シャルルは二人の様子を見て、優しい笑みを浮かべるのだった。
その日の夜食。
ロリーナ「なっ……!?」
コナン「どうしたんですか、このチョコマフィン」
シャルル「秘密だ」
コナン「……まぁ、隊長が用意したものなら毒の心配はないか」
シャルル「全員分あるから、焦らずにちゃんと並んでくれ」
ロリーナ「はーい!」
ルイス「……これ、何?」
ロリーナ「チョコマフィン!」
ルイス「美味しい?」
ロリーナ「美味しい!」
じゃあ、とルイスはシャルルから貰う。
そして一口食べてみた。
ロリーナ「ど、どう……?」
ルイス「……美味しい」
ロリーナ「──っ、そっか」
コナン「お、ルイスが笑ってるじゃねーか。珍しい」
シャルル「……最後の一つも食べていいぞ、ルイス」
ルイス「隊長の分は?」
シャルル「私は毒味で食べているからな。余っていたこれはルイスが食べるといい」
ルイス「でも……」
コナン「最年少なんだから我慢すんな」
ロリーナ「私も最年少なんですけど!」
ルイス「じゃあ、ロリーナが食べたらいいよ」
コナン「心配すんな、ルイス。ロリーナには俺のやつを渡すからな」
ロリーナ「良いんですか!? いや、でも一人一個だし……」
コナン「正直、俺は甘いものがそんなに好きじゃない。遠慮するな、ロリーナ」
ロリーナ「あ、ありがとうございます……!」
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「……懐かしい夢を見たな」
時は現在に戻り、英国軍の拠点のある一室。
シャルル・ペローは少し首を回したりした後、窓の外に広がる青空を眺めた。
窓を開ければ、少し冷たい風が部屋に入り込んでくる。
「失礼しまーす」
そんな声と同時に扉が開く。
シャルルが振り返ると、そこには箱を持ったコナン・ドイルがいた。
「チョコマフィン、食べません?」
「……頂こう」