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ツンデレな私。
『|緋彗《ひすい》ちゃんって、ツンデレだよね〜!』
『わかる〜!』
昔から、私は友だちに、『ツンデレだよね』と言われる事が多かった。
そんな私の、恋物語。
そんな私も、高校生になってーー。
「ひーすいちゃんっ!かーえーろっ!」
「いいよ…なんて、思ってないんだからっ!」
「もう、緋彗ちゃんてば今日もツンデレちゃんだな〜。」
(また、今日も、一緒に帰りたいって、言えなかった…。)
小学生のころからずっとこう。
何も変わってない。
(今度は本音を言えるように、恥ずかしがらないように、頑張ろう…。)
「緋彗さん!さようなら!」
「ひゃっ!」
声をかけてきたのは、勉強も運動も平凡的な、
|宇月 陽太《うづき ようた》。
最近、帰る時に声をかけてくる。
(ちょっと、変な、気持ちになるんだよね…。)
確か、陽太くんが、おじいさんを助けていたり、
人助けをして授業を遅れちゃった頃から気になって。優しいなって、思っている。
「変なの…。」
「え?何が?緋彗さん。」
「な、なんでもないんだからっ!」
家に帰って、恋愛漫画を読む。
(こんな恋、してみたいな…。)
ーー私には、一生、無理だろうけど。
はあ、とため息をつく。
(ツンデレじゃ、なかったらよかったのに…。)
いつも、こう悩んで、無理だろうな、って自嘲する。
(バカみたい。そんな事、できるはずないのに…。)
次の日、学校に行くと…。
下駄箱に、手紙が入っていた。
『|柊木 緋彗《ひいらぎ ひすい》様。
今日の放課後、屋上で待っていてください。』
と、書いてあった。
(………!??!)
脳が追いつかない。
ら、ラブレター?これ。
え、なになに?いたずら?いたずら?
混乱していると、友だちの紅葉が来た。
「あれ〜緋彗ちゃ〜ん?ラブレターもらったのぉ?」
「べ、べちゅにそんなことっ!?」
(か、噛んでしまった…。)
「お〜焦ってる焦ってる〜。」
「そんなこと、ないんだからっ!」
「もう〜緋彗ちゃんたら〜!」
結局、放課後になった。
(屋上に来たけど…。)
誰もいない……。
(もしかして、からかわれたのかな…。ショック…。)
そして、帰ることにした。
ーーガチャ。
屋上のドアが開いた。でも、緋彗は開けてない。
「遅れて、ごめんなさい!」
え、と緋彗は思った。
ドアを開けたのは、最近、会うたびに変な気持ちになってしまう、陽太だったのだ。
「へ、あ、ふぁあ…?」
「大丈夫ですか!?緋彗さん!」
「だ、大丈夫、だ、けど…。」
もしかして、下駄箱に入ってた手紙を書いたのって…?
「私の下駄箱に入ってた手紙を書いたの…陽太くん、なの?」
「え…違う、けど。緋彗さんこそ俺の下駄箱に、手紙を入れたんじゃないですか?」
「「え??」」
「ふっふっふ〜!ネタバラシをしようじゃないか〜!」
そこにいたのは…紅葉!?
どこにいたの!?
「紅葉、どうしてここに?」
「説明するね!まず、言いたい事あるんだけど…」
「陽太と緋彗ちゃんって自分が片思いしてるって、気づいてないでしょ!?」
「?」
緋彗はハテナマークが浮かんだ。
陽太もそのようだ。
「ねえ、紅葉…つまり、どういう事…?」
「緋彗ちゃん、理解してな〜い!」
紅葉は私に寄ってきて、耳打ちする。
「つまり、最近陽太見ると『変なの…』、言ってたじゃん!それ、恋、って言うんだよ!」
「恋?な、なんて…」
「してないんだからっ!」
「いやいやしてるよ〜。噂になってるよ!緋彗ちゃんが陽太のこと好きで陽太も緋彗ちゃんの事好きって!」
……つまり両片思い、ってこと?
漫画でよく見る?えっ…えっ、陽太くんが!?
「ん…?んん…?」
陽太くんは話に追いついていけないみたい。
「緋彗さんが、俺の事好き……?」
「そっ、だから紅葉は二人を紅葉が書いた手紙で屋上に来させたってわけ!」
「だから、紅葉、朝ラブレターが来た〜って言ったんだ…。」
「じゃあっ、邪魔者は消えま〜す!」
「えっ、ちょっと、紅葉!」
紅葉が出ていって、しーんとした屋上。
でも、沈黙を壊したのは、陽太くんだった。
「緋彗さん!俺、緋彗さんの事が好きです!
絵が上手なところや、運動神経バツグンで!」
「えっえ…!」
パニック状態におちいる私。
「ツンデレな緋彗さんが!大好きです!」
心が、ぽかぽかする。この気持ちーー!
「私も、陽太くんのことっ!」
好きっていう、気持ちじゃないの?
「好きだなんて、思ってい、ない、いや!」
つい、ツンデレが出そうになる。けど。
「好きです!」
はっきり、伝えられた。陽太くんに、好きだって気持ち!伝えられなかった、この気持ち!
言い終わったときには涙がぶわっと出てきて、
止まらなくなった。
「緋彗さん、大丈夫!?ハンカチあるよ!」
ああ、やっぱり、
「優しい陽太くんが、大好きっ。」
「俺も、緋彗さんの事、好きだよ。」
「緋彗さん。緋彗って、呼んでいい?」
「う、うん。」
その後、私たちはずっとおしゃべりをした。
でも、気になる事があった。
「あのさ。…付き合って、くれる?」
「もちろんです!よろしくお願いします。」
「よろしくね、陽太くん。」
私の、ツンは陽太くんの前ではデレるようになった。
ありがとう、陽太くん。
恋を教えてくれた、初恋の人。
きっと最初で最後の、彼氏くん。