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6人目の猟犬は元組合 第参話
私は、生まれはカナダだし、実家もカナダにある。幼稚園のときまでは普通に現地の子と同じ幼稚園に通ってたから、日本語も話せなかった。両親がそれを心配して、小学校からは日本人学校に通った。父親が人と異能だけを作れる異能力者で、母親が人と異能以外のものを作れる異能力者だから、その2人の血を引いて私にはこの異能を持って生まれたんだろうな。12歳で、初めて来日した。あ、横浜にも行ったよ。それで、ショッピングモールに行ったんだ。そしたら、爆破予告がされて、黒ずくめの服を着て刃物を持った男達が何人もいて、立てこもり事件が起きたんだ。私は状況をすぐ理解して異能力を使って事件を解決した。少し遅れて軍警が到着して、そこで猟犬に勧誘された。でも両親に止められて、年齢のことを考えて14歳で入隊した。それから1年後、組合に入った。軍警から、フィッツジェラルドの監視のために潜入しろ、との命令を受けたからね。組合に入るために、勧誘されるために自分で仕向けた。ま、その方法は内緒だ。知ってるのは福地だけだよ。私ももう、誰かに話すつもりはないけど。
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『…………』
アヤカが話し終えてからは、静寂だけが流れていた。12歳で立てこもり事件を解決、14歳という若さで猟犬に入隊し、その翌年には組合に入るという異色の経歴。その驚きで、ルーシー以外の全員が固まっていた。
「ていうか、なんでそんな黙ってんの?なんか聞きたいことない?」
「………お前は、探偵社の味方か?猟犬や、世論の味方か?」
少し間を置いて、国木田が問いかけた。これからの運命を左右すると言っても過言ではない質問に、全員が息を呑む。
「…………なんだ、そんな話か。私は別にどっちの味方でもないよ。探偵社の無実も、世界のことも、私はどうでもいい。私が信じてるのは私だけだからな。私は団長と同じで、勝ちそうな方に味方する。ただ猟犬っていう立場である以上、簡単にお前らに味方する事はしない」
ハッキリとした言葉に、また全員黙る。
「じゃ、私はそろそろ行くから。あの作戦じゃ、私は協力しない。考え直して、また連絡しろ」
アヤカはそう告げて、アンの部屋を出ていった。
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「アンタ、組合であのアヤカと一緒だったんだろ?アンタにとってアヤカはどんな所が凄いんだ?初対面のアタシ達には、イマイチよくわかんないよ」
与謝野がルーシーに問いかける。ルーシーは少し考えて、こう答えた。
「一番に出てくるのは、異能だけじゃないあの子本人の強さね。私、あの子が組合に入ってきた時、一度このアンの部屋に入れたことがあるの。それもこういう形でじゃなくて、そちらの社員とマフィアのおじ様も一緒に入れた時みたいにね。アンに追いかけられながら鍵を奪って出る、っていう形で。そしたらあの子、異能を全く使わずに部屋から出ることに成功したのよ。最初は本当にびっくりしたけど、今思えばあの子、猟犬に入って訓練を積んでいたからあそこまで出来たのよね。あとは、語学能力かしらね。日本語と英語はもちろんだけど、ヨーロッパの言葉とかアジアの言葉とかは、仕事で必要な言葉だけらしいけど、覚えてるそうよ。書類仕事はルイーザちゃんに押し付けてること多かったけど、あの子自身の頭脳はルイーザちゃんよりも上なんじゃないかしら」
「組合の作戦参謀よりも上……?じゃあ何でアヤカさんがいながら、あの戦いで組合が負けたんだ?」
敦がルーシーに聞いた。
「あの子、見ての通りあんな感じでしょう?組織に所属して前線に立つこともあるけど、向上心はないし勝敗にも興味は無いの。逆に、あんな感じだから組合でも猟犬でも上手くやって行けてるのね。それにアヤカは自分が納得しない限りちゃんと協力はしないし、納得してないのに協力してくれたとしても本気は出してくれないのよ」
そして、アンの部屋に沈黙が流れる。数十秒後、敦が口を開いた。
「まずは、アヤカさんを説得することから始めませんか?一筋縄では行かないと思いますけど……」
「しかし、そんなことをやっている暇があるのか?身を粉にして頼む時間があったら自分達で作戦を実行した方が早いだろう」
国木田が厳しい顔で言う。
「でも、アヤカさんが味方についてくれれば僕達もきっと有利に立ち回れるはずです。説得と、少しだけ作戦の見直しをしましょう」
「わかった。作戦は僕が練り直すから、君らはとりあえずあの子の説得を優先にして」
「わかりました」
そう乱歩が声を掛け、アヤカを説得するための話し合いが始まった。
どうも、千葉にある某ネズミの国のランドの方に行ってきたぱるしいです。カチューシャ買えました。このお話10月ぐらいから書いてたんですけどめっっっちゃくちゃ時間かかりました。ここから先の展開全然考えてないです。やばいです。