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#01 血を好む者
SLOのマップ
このゲームの《町》は全てが城壁に囲まれている
墓地を彷徨う魂の想像するのは容易いだろう。
じゃあそれが仮面だったら?
正に今そこに浮いている仮面が私、ネルだ。
(ふわふわとー周りに紛れてー)
人魂に紛れられる程存在感が薄いわけでもなく、
たまに肝試しに来るプレイヤーと戯れている。
初めは皆警戒するのだが、私もプレイヤーだと分かった瞬間
引き攣った顔が緩くなる。この反応が、驚かすよりずっと面白い。
(ん?また人が来たのか?)
大剣と大盾を背負った幼女と、魔法使いの女の人。
(近づいてみようか)
「・・・え、小面がこっち来てる」
魔法使いの人に気づかれた。
「《強化魔法陣展開》」
(え?殺す気じゃん!!!
やめろぉぉぉぉぉぉ)
左右に付いている紐を振ってみる。
・・・・・効果は無い様だ。
「《フレイムバースト》!」
脇に挟んで前に着きだしている杖から、
頭位の火の玉が飛んでくる。
・・・・・え?バースト?爆発じゃ・・・・
(あ・・・・死んだわ・・・・)
「・・・・え?なんで効かないの?」
「幽霊系の属性は大体火だろ」
そういえばそうでした。
種族スキル《火属性吸収》持ってた。
「もう知らん!《フレイムアロー》」
四方八方から火の矢が飛んでくるが、
スキルが勝手に吸収して経験値にしてしまう。
(あ、レベル上がった)
【チュートリアル《レベルを2上げる》を達成しました。
報酬が配布されます】
スキルロール?ランダムか。
何が出るだろうか。
(何じゃらほい。お?)
【《火属性魔法》を取得しました】
「《フレイムランス》!」
(もうやけくそだな。
《フレイムバレット》)
拳大の火の玉が飛んでいく。
「いた・・・・・くない」
「火属性で痛くないことあんの?」
「格下ならあるかもしれないけど」
(フリフリ)
「これプレイヤーだったりせん?」
(フンフン)
「そうっぽいね」
「喋れないのか?」
(フンフン)
これしかコミュニケーションをとる方法が
無いのが一番悲しい。
「じゃあ、火属性魔法撃ってもいい?」
(フンフン)
「良いんだ」
「吸収だったらレベル上がるし吸収系なんじゃない?」
(そうなんだよ!吸収なんだ!)
魔法使いさんに魔法を当ててもらいます。
「《魔法書庫解放》」
魔法書庫?なんだそりゃ。
でも今は質問する方法が無いので。
魔法が連続で何個も放たれる。
だが、吸収して経験値に変換して逆にレベルが上がる。
傍から見れば只の虐めであるのだが、
ゆっくりと、だが着々とレベルが上昇し続ける。
何ならこの視界の騒がしさも落ち着いてくる様に思える。
「はい、終わり。MP切れたわ」
「この小面付けれんのかな」
「呪われると思うよ」
「まあ、幽霊種だしな」
「どうにかして喋れないものか・・・・」
「進化させるしかないんじゃないの?」
「レベリングか。人魂集めて一気にボンと」
「そうしようか」
と言う事で急遽レベリングのお手伝いが始まりました。
2人がその辺りに居る人魂を集めて、私が魔法で物理的に祓う。
決して祓っている訳では無いと思うのだが、
実際倒したら細かくなってお空に還っていくので
「祓っている」と言う事にしている。
「レベル上がってる?」
(上がってる上がってる)
「上がってそうやね」
【進化条件を達成しました】
お?レベルかな。レベル進化で8は珍しくない?
送り犬か。小面要素何処行った?
【《送り犬》に進化します】
「うわ眩しっ」
「ワン!」
「犬んなったのか」
「ワン!」
【ステータスを更新します】
---
ネル Lv8
種族 送り犬
属性 火
【通常スキル】
《火属性魔法Lv4》
【種族スキル】
《火属性吸収Lv6》
---
火属性でしかない。
「今何時だ?」
「えーお昼だな」
「やべ、妹のご飯作んないと」
「じゃあ一旦お開きにするか」
「ごめんねポチ。またあとで」
ポチ?まあまあ犬だけどさ・・・・・・
じゃあ一人で狩り行こうかな。
夜も明けてきた。
墓地の横にある森へ行って見る事にした。
実をいうと墓地から出たのはこれが初めてだったりする。
「ワン!(フレイムバレット!)」
巨大な熊と戦い始めて10分程経った。
やっと力尽きた様だ。
私が実際に熊にあったことは無いのでどれほどかは分からないが、
|現実《リアル》に居たら明らかに異常だと言う事は分かる。
それにしてもこのゲーム、死体は残るし火魔法でちゃんと死体も
焼けてるからお腹が減って来る。
(あそこまで持って行くか。)
墓地の真ん中にある藤棚。さっき2人と別れた所だ。
せっせと熊を咥えたまま引き摺る。
藤棚下に死体を置いて、また森に入って行く。
今度は熊以外が良い。体力が非常に多いのだ。
(鹿か?)
全高約2mの鹿。2mも大きいが3m級の熊に比べたら可愛いもんよ。
火系魔法を絶え間無く撃ち込む。むこうも反撃こそしているが、
遥かに小さい犬には掠りもしない。
あ、死んだ。良い匂いする。主に焼き肉の。・・・・ん?『主に』?
【条件を満たしたことにより、称号《狩人》《猟犬》《狂犬》《血を好む者》を
獲得しました】
狂犬病んなったの私?色々人としてやばい気がする。
取り敢えず説明を・・・・・・・・・
《狩人》
獣を狩る者。
効果なし
《猟犬》
狩りをし続ける犬。生存本能からでは無い。
効果なし
《狂犬》
何を考えているのかわからない。奇行を繰り返す。
効果:《大量流血》の敵が居ると《興奮》常態になる。
《血を好む者》
血液嗜好を患う者。
効果:血液を見ると《興奮》常態になる。
人としてどうなん?それは(※血液嗜好症の方を否定してるわけではありません)
一回無視して狩り行こ。もうちょっとでレベル10だし。
・・・・鹿!《ファイアランス》!
火属性魔法のレベルが上がったからだろうか。
一撃で死んではいないが、弱って倒れ込んでいる。
(焼けるから血は出てないな)
体力残り1桁の鹿の首を引っ搔いてみる。
鹿は体力が無くなって死んだが、血は・・・・・・・・?・・・・・あ?
急に思考が飛んで傷口から目が離せなかった。
食欲ではない不思議な感覚。
(何・・・・かが・・・・・・・・・・・変・・・・・・?)
辛うじて目が離せない状態で留まっている。
(・・・・・・・・離・・れ・・・・・ないと・・・・・)
鹿を見つめた儘、後ずさる。
木に視界が遮られた時、頭が動かせる様になった。
もう動物を狩ってレベリングするのは控えた方が良いかもしれない。
(戻ろう。取り敢えず)
戻るといっても藤棚近くには行けない。
さっき熊の死体を置いてきてしまったから。
__「ポチー。どこー?」__
__「おーい」__
「ワン!」
「あ!いた。もー心配したんだよ?」
「ログインしたら熊死んでてびっくりしたわ」
「人魂咥えてるし」
「ポチは幽霊種だから物理的に干渉できんのか」
「取り敢えずいつものとこに」
脇下で抱えられ反抗しても逃げれそうにない。
あそこには熊の死体が・・・・・・・
【進化条件を達成しました。
・吸血人狼
・人狼
・妖獣(狼)
1分以内に選択されなかった場合、自動で **吸血人狼**になります】
・・・・・え?今進化?えちょやばい
「ほら着いたよポチ―」
「あ・・・・・・・・・・・・・」
「ポチ?」
「なんか変だぞ」
死んで暫くしたからか、滲み出ている血の量が多くなっていた。
【進化が終了しました。
種族スキル《吸血》を獲得しました】
__「ポチが進化した!」 __
__「進化前はぼーっとすんのかな?」 __
__「人間は進化しないもんねー」 __
__「てか人型だから喋れんじゃね?」 __
__「そうじゃん!おーい。ポチ―」 __
「・・・・・・・・ア゛・・・・?」
「これまずい。熊から遠ざけろ!」
あれ?・・・・・勝手に血から遠ざかって・・・・・・・・・・
血・・・・・・・・・吸いたい・・・・・・あれ・・・・・・・・
「ポチが暴れてる!」
「じっとしてろ!」
「え?人の形してる?」
「ポチ!」
魔法使いさんに地面に降ろされ、強く抱きしめられる。
・・・・・相変わらず胸はどでかい。
「お前どうしたんだよ。熊の事見つめて動かなかったけど」
「ああ、あのですね。」
「「なに?」」
「狩りしてたらヤバイ称号付いちゃって」
「なんだよ」
「《狂犬》と《血を好む者》」
「やばそうね」
説明欄が表示されている画面をそのまま2人に見せる。
「吸血鬼んなっちゃったって事?」
「そうですね」
「そうですねじゃないが?
てか種族は?」
「えーと、吸血人狼ですね。
狼種の獣人。狂犬を発症し・・・・血液に対して性的興奮を覚えた・・・・」
「・・・・町帰ろうか」
「可愛いわんちゃんを我が家に招こうじゃないの」
「性癖ひん曲がってるけどな」
「取り敢えず目隠しね」
「あっ、はい」
目隠しをつけて運ばれること15分。
町が見えてきたそうです。
「そういえば御2人は何と言うんですか?」
「私はフレア。そのまま魔法使い。
この合法ロリはナギサ。タンクで、こんななりだけど25歳」
「私はネルって言います。メイン火力は火属性魔法です」
「よろしくな。|時化《しけ》たさん付けはやめろよ」
町に入ったようで。だが目隠しは取れず、
抱えられてるのはそのまま。
「姐さん。サンプルよー」
「え゛?」
フレアに売られた。
まあ、私と同じ種族は中々居ないだろう。
「何の子?」
「人狼と吸血鬼。性癖ひん曲がってる」
「性癖?」
「種族説明が『血液に性的興奮を覚えた』だからね」
「なるほど」
「何されるんですか私」
「実験だよ?性的興奮の範囲とかね」
「お願いします獣医さん。うちのポチを見てやってください」
「いやだっ♡」
「可愛く言っても駄目です」
「なんで・・・・・・」
「じゃあまず口開けて?」
ひとまず言う事聞いておきます。
もっと面倒くさい事になったら嫌なので。
「犬歯か凄い大きい」
「犬だから?吸血鬼だから?」
「両方だね」
「あほいはふはっへひあ(顎痛くなってきた)」
「ああ、ごめん。もう良いよ。
次は興奮の度合いだね」
「多分固定してからの方がいいですよ」
「じゃあこのベッドに寝てもらって」
言われるがままに寝転がり、四肢を固定される。
「昨日の狩りの時の血が未だあったはず。はいこれ」
「あ・・・・・・・・・・・・ちょっと・・・・・・あの・・・・・・・・」
「飲む?」
「・・・・んあ・・・・・・・飲む・・・・・・」
瓶に入った血を口に流し込む。
決して美味しい訳でも無いが、謎の感覚に襲われる。
「美味しい?」
「おいし・・・くはない」
「てか、飲んだら落ち着いたね」
「興奮はしてますよ?」
「暫く飲んでなかったらぼーっとすんのかな?」
「姐さん、もう終わり?」
「うん。お持ち帰りしな」
「やったね!ポチ!」
「ナギサは?」
「先に帰った」
「狩りしてきていい?」
「ああ。どうぞー」
ネル Lv10
種族 吸血人狼
属性 火
【通常スキル】
《火属性魔法Lv7》
【種族スキル】
《火属性吸収Lv6》《吸血Lv1》
【個人称号】
《狩人》《猟犬》《狂犬》《血を好む者》
あとがき
前書き部分にSLOの設定。
あとがき部分のはじめに
その回の最終的なステータスが載っています。
更新不定期。文字数まばらです