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ドブ色のブロンズ
楽天家がいた。
年齢が分からない外見をしていた。
分かるのは伸びた髪がブロンズ色だということ。
ブロンズは花を売った。
道で拾った花を飾り、普通の花屋と同じ値を付けた。
少し売れた。
ブロンズは近所の花屋に行った。
花束を買い、ドブに捨てた。
自分の店の花も同じようにした。
ブロンズは側溝を掃除した。
ドブからは色んな物が出てきた。
幾つか磨いて持って帰った。
ブロンズは図書館に行った。
本を借りた。
二冊借りた。
期限内に返せる気がしなかった。
ドブから出た物と借りた本をモデルに小説を書き、店の空いた場所で売った。
返却期限は守れなかった。
本も道に落ちていればいいのにと思った。
本を買った客がパクリだと訴えて来た。
どうでもよかった。
残った本もドブに捨ててしまおうと思った。
間違えて借りた本も捨ててしまった。
本が読みたくなった。
金はなかった。
道端に落ちていた本を盗る。
道端の書店から盗んだのだ。
ブロンズは花屋を建てた。
適当に道端の草を詰め込んだ。
独自性がメディアの目に留まり、有名店に成長した。
あと、彼の外見からかけ離れた年齢は驚かれた。
店が有名になると、ブロンズは店をドブに捨てた。
不思議な位爽快に沈んだ。
ブロンズは他人のアイデアをドブに捨てていった。
世界各国の時間に合わせた時計を売った。
旬の野菜を大きさ順にして売った。
文具をドミノのように展示した。
全て商店街の老中達が頭を捻って出したアイデアだった。
本を返せなかった図書館の、本の一行目を展示する企画、あれを盗んだ時は痛快だった。
繁盛したら全てドブに沈めた。
街の噂話が側で囁かれている様に聞こえる。
素性を隠し、髪をドブの様なグレーに染めた。
ブロンズはまた店を畳み、いつも通りドブに沈めに行くと周辺が封鎖されていた。
何でも沈むドブを学者達がキャンプを設営して調査していたのだ。
調査団を見張れる位置に花屋を構えた。
半年後、ドブは地質学的重要物だと公表され関係者以外立ち入り禁止となった。
ブロンズは絶望した。
普段からドブを一番使っているのは俺なのに。
ブロンズは初めて人から何かを奪われる感覚を知った。
学者共のアイデアもドブに捨ててやりたい。
道端で花を拾う、花束を買う、花瓶から生花を盗む、全部同じだろ?
ブロンズは道端のナイフを握った。
凩、嘲笑、ナイフの錆