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強制労働省
友達の言い間違いから生まれましたww
東京第三区、午前4時。空はまだ黒く、街灯の光がアスファルトに冷たく反射している。
警報が鳴ると同時に、寮の扉が自動で開いた。灰色の制服を着た人々が、無言で列を作り、トラックに乗り込む。
「労働は義務であり、誇りである」
──強制労働省の標語が、壁一面に赤い文字で刻まれていた。
かつてこの国には「職業選択の自由」があった。
だが、経済崩壊と人口減少を理由に、政府は「労働配分法」を制定。
国民は年齢と遺伝子適性に基づいて職種を割り当てられ、拒否すれば「再教育施設」へ送られる。
主人公・佐伯ユウマは、かつて大学で哲学を学んでいた。
だが、彼の遺伝子は「高耐久性・低共感性」と判定され、廃棄物処理班に配属された。
毎日、腐敗した都市の地下で有害物質を処理し、同僚の死を見届けながら、彼は問い続けていた。
「人間とは、何をもって人間なのか?」
ある日、ユウマは地下施設で古いノートを見つける。
そこには、かつてこの国に存在した「自由労働組合」の記録が残されていた。
彼らは、労働の尊厳と選択の自由を求めて闘ったが、強制労働省によって粛清された。
ユウマは決意する。このノートを外の世界に届けること。
真実を知る者が一人でもいれば、希望は残る。
だが、強制労働省の監視は完璧だった。
彼の行動はすぐに察知され、再教育施設への移送が決定される。
施設の中、ユウマは最後の言葉をノートに書き残す。
「労働は誇りではない。誇りは、自分で選んだ道にしか宿らない」
そしてそのノートは、ある清掃員の手に渡り、密かにコピーされ、地下ネットワークに流された。
強制労働省が支配するこの国にも、まだ火種は燻っている。