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主人公交代
デスゲームが終わり、わたし・大橋結花は帰ることにした。
灰色の空間にある、7つのゲート。上には『雪女との物語』『レイとの遊び』などの、シリーズ名が書かれたカードがある。シリーズ名という名の、各々が帰るべき世界が。
『こちら、悩み委員会』のカードを確認して、わたしはゲートを通った。
--- * ---
わたしのゲートは、自宅にある。自宅の、自室。
「え?」
いつも通りの、白い壁だと思っていた。だが、そこはあろうことか、《《終末世界》》だった。ビルや建物が倒壊し、灰色っぽくなっていた。アニメや映画でよく見るタイプの世界だった。
「待って、ミスった?」
いや、確かに『こちら、悩み委員会』のゲートを通った記憶がある。ちゃんと確認した。戻ろうとして振り返ってみても、ゲートはない。
ゲートは|あいつ《作者》が集めると決めた時のみ存在する。もう|あいつ《作者》は、しばらくは集めようとは思わないだろう。
ってことは、どうやって行けばいいんだろう?終末世界が舞台のシリーズは、『雪女との物語』のはずだ。
「わ、誰?」
少し癖っ毛なボブに、オレンジのTシャツにデニムのズボン、スニーカーに灰色の大きなリュックサック。
「瑠芽、誰なのじゃ」
「知らないよ!ってか、雪菜は?」
「知らないのじゃ」
「雪菜っ」
もう確定的だ。わたしは、雪菜たちが存在すべき『雪女との物語』の世界に紛れ込んでしまった。
「わたし、結花っていいます」
「ユイカ…?なんて書くの?」
「結ぶに、花って書いて結花です。苗字はオオハシで、大きいに川とかの橋って書いて、大橋です」
「へえ、大橋結花。知らないなぁ。雪菜とは知り合いなの?」
「はい。えーと、名前は…」
「羽鳥瑠芽よ。羽に鳥に、瑠璃色の瑠に、芽が出るの芽」
「夜羽夢じゃ。夜に、羽に、夢で夜羽夢じゃ」
羽鳥瑠芽さんに、夜羽夢さん。わたしより年上っぽい。まあ、雪菜さんも16歳ぐらいだし、それぐらいの歳なのだろう。
「わたしは、雪菜さんと知り合いです。そもそも雪菜さんや瑠芽さん、夜羽夢さんたちは、『雪女との物語』というシリーズの中の登場人物です。『雪女との物語』は、|作者《むらさきざくら》が書いたシリーズです。|作者《むらさきざくら》は、他にもたくさんシリーズを作っています。わたしは、『こちら、悩み委員会』という、また違ったシリーズの登場人物です。『クロスオーバー作品』というシリーズがあって、そこで各々の主人公が交流する形になります」
あ、たぶんわかってない。
「まあ、簡潔に言うと、パラレルワールドみたいな感じです。絶対に交わらないけど、神様が世界を繋げると、交流できる、みたいな」
「まあ、なんとなくは」
「それで、各々の世界に帰る時は、ゲートを通ります。そのゲートにはシリーズ名が記載されてあって、ゲートを通って日常を過ごすみたいな感じ…まあ要するに、帰る世界を間違えちゃった、みたいな感じで」
「雪菜も、その…結花、か?の世界に迷い込んでしまった、のかもしれないのか?」
「うーん…よくわかんないんです。わたしも、自分がこの世界に迷い込んだ、ということしかわからなくって。|作者《むらさきざくら》が、集めると決めた時だけゲートが作られるんです」
「ああ…?」
うん、説明は難しいな…
「取り敢えず、わたしは自分の世界に戻りたいんです。雪菜さんも、そうでしょうし」
「まあそうだと思うよ。こんな終末世界、いたくないでしょ?」
苦笑いを浮かべることしかできない。自虐ネタなのかな。
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「は…?」
中学校なのはわかる。坂白中学校、というのが校名らしい。
「八寺先生っ、なんか…」
うん、わかるよ、うん。
わたしは雪菜。先程、『雪女との物語』というゲートを通ってきてここに来た。
「なんか、桜井さんの席に…」
桜井?ってことは、ここは岬の世界・『リアル人狼』の世界か。
まあ驚くよね。同級生の席に、なんかめちゃくちゃ年上っぽい奴がいたら。しかも、制服なんて来てないし、白髪ロングだし、白い着物っぽいやつだし。ザ・雪女だもんね。
「…あはは〜…貴方誰ですか?」
「いや、わたしもよくわかんなくて…」
ああ、これはたぶん、アニメとかで良くある生徒指導室行って、話を聞いてもらうしかないよなぁ。
…面倒くさいなぁ。
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「…えちょっちょちょちょっっと待ってぇええ!?」
待って待って待って、絶対おかしいよね?
わたし・桜井岬は、今、ピンチだった。あの人狼ゲームに参加したときぐらいピンチだ。
なんかめちゃくちゃ本が置いてあって、高い建物。ツリーハウス的な。図書館の貸出コーナーみたいなのがあって、わたしはそこにいる。隣にはなんか、ロボット。
「誰ダ」
「うわっ!?」
しゃ、喋った…
「また借りに来ましたよ〜って…だだだだだだ誰ぇええっ!?」
やばいって、戸惑ってる間に誰か来たって!なんかめっちゃ地味系図書室系女子なんだけど!?
「フーク…?じゃないよね」
「あ…桜井岬っていいま〜す…」
フーク?ってことは。
わたし、『境界の図書館』の世界に紛れ込んだ、ってこと?フーク曰く、「ログ(という名前のロボット)は頭がかったいのよねぇ〜。良美もいい子だけど、ちょっと融通がきかないのよね」とか言ってた気がする。
…やっばぁ…語彙力皆無のわたし、どうやって説明しよう…ハードモードすぎるでしょ…
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「いやちょっと待って…」
辺りを見渡すとブレザーと学ラン。その中で1人、和風メイドっぽいコスプレイヤーっぽい変質者(←は?)
ふざけないでもらいたい。
たぶん、ここは中学校だ。周りは幼さと大人っぽさを兼ね備えている。ちなみにわたしは300歳を超えているから、だいぶ年下。赤ん坊同然だ。
近くにあった地図みたいな掲示板で確認をする。なるほど、この中学校は『楠木山中学校』か。ここは楠木山中学校が目の前にある、柵を超えたところ。下校中みたいだ。
楠木山中学校…結花は楠木山小学校だから、暦か。確かに、ときどき暦は同じような制服で来る。
「あれ…暦ぃー?」
暦の名を呼ぶ人がいた。
「暦を探しているのかしら?」
「うわ…」
面倒くさい奴に絡まれた、とでも思っているのだろう。まぁ当然だろうな、こんなオタクっぽいやつ。
「わたしはフークっていうの。貴方は?」
「え…橘紫」
むらさき…?|あいつ《作者》の手先でもあるのだろうか。
「橘は一文字で橘。紫も普通に紫で、橘紫です。暦は後輩だけど…」
「暦、知らない?」
「知らないから探してます」
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ちょっと違う、というのは容易にわかる。第一、制服が違うのだ。
大崎中学校らしい。わたし・歴暦は、今ちょっとだけ戸惑っていた。別に偉人にタイムスリップするほど大ピンチではない。
ただ。
わたしは、楠木山中学校に通っている。大崎中学校は無縁…でもない。繋がりがふたつある。
まず、橘先輩の知り合いの…あっそうそう、田町彰子が通っている。
そして、知り合いの小柴結月が通っている。
というのはわかる。結月が言っている優恵もいるみたいだ。わたしは、たぶん結月の席にいる。
「わたし、今優恵の隣の席なんだぁ〜」と言っていた記憶があるから。
「…誰?」
「あっえーと…歴暦です」
「れきこよみ…?」
「歴史の歴に、暦は暦です」
「結月は?」
「わたしも探してて…」
あーもう、どうやって言おう。切り口が見つからない。とにかく、授業が始まる前になんとかしなければ。春原先生だったか?あの先生、結月の口ぶりからすると、割と理解がありそうだったはずだ。
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「わ〜…」
ここ、どこだろ。なんか遠くに小学校が見える。
わたし・小柴結月は、学校に向かって歩いてみた。そもそもわたしは、大崎中学校に通う中学1年生なのだが…
「待って、何ここ?」
『遊ヶ丘小学校』
…めちゃくちゃ遊んでそうな小学校だな。苦笑する。
すると、記憶がフラッシュバックする。
〝いやぁ、遊ヶ丘小学校に遭遇するとは思わなかったわ〟
確か、レイはそう言っていた。
ということは…
わたし、レイの世界に異世界転移しちゃった!?他のシリーズと違って、固定メンバーいないし、やばくない!?超ハードモードじゃん、やだぁ!
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はい。遊びじゃない感じがして、今わたしはちょっとだけピンチ。
「誰?」
いやまあそうですよね、としか言いようがない。
「えーと、わたしはレイっていうの。一応…」
あぁやばい。
確か、この子たちは小6、結花の友達だ。本読み女子が鈴原心葉、男子が彼氏(早くね?)の足立宙。
ちなみに、わたしは一応小6だ。正確には、20年前に死んだ小6だが。肉体は小6だが、中身は…はいそこ、それ以上言わない。
「結花の友達よ」
「結花の?いたっけな」
「あ…ここって、『むらさきざくら』って奴が書いた、『こちら、悩み委員会』っていうシリーズ…世界なの。貴方たちは、そこに住む人。わたしは、『むらさきざくら』って奴が書いた、また別の世界の人。『クロスオーバー』ってところで、各々の世界が交わるの。パラレルワールドって感じ」
「ああ」
流石です、本読み女子。その後、心葉は宙に淡々と説明をしていった。
たぶん、この様子だと、他のメンバーもやられちゃってるんだろうな。そう思いながら、心葉の力説を軽く耳で流した。
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「まあ、やるにはやる方法はあると思う」
「え?」
良美が言った。ログも頷く(ふりをした)。
「どうやって」
「いや、この境界の図書館って、本を貸出できるの。その本に入ることもできるから、本に入って色々すれば…」
「でも、|あいつ《作者》って、ネット公開でしょ?」
「いや、パソコンでもなんとか行けたと思うし…それに、フークはネットで公開されたやつに許可取りして書き起こすから。気に入ってなかったとしても、主人公に抜擢されたことに浮かれてると思うよ」
意外だ。
「『リアル人狼』の世界線だっけ?」
「うん」
「ログ、検索、『リアル人狼』」
そう言うと、「『本探知機』ヲ使エヨ」と言った。「ああそうね」
『本探知機』という機械的なもので、検索したようだ。すると、手書きと思わしき『リアル人狼』が運ばれてきた。ふわり、ふわり。
「あ、これか」
「やっぱり。作者検索でもして、かき集めときましょ」
「うん」
6つの手書き本を集め、並べた。
「まずどこ行きたい?」
「『リアル人狼』に行く。そこにフークがいたら、交換されている可能性が高い。そこに違う子がいたら、ランダムの可能性が高いと推理できるし、説明だってしやすい」
あそこに雪菜かフークかレイがいることを祈るしかない。あそこのメンツは人生経験豊富だろうし。えーと、引く確率は2分の1、50%か。とんでもないギャンブルだな。
「ま、取り敢えずやってみるっきゃないでしょ」
そう言って、わたしはばたん!と入っていった。
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「___というこt「ったぁ…っ!」
どすん、と思いっきり打ちつけてしまった。続いて、良美とフークがどんどんっと。
「きゃああっ…って、桜井さんじゃ」
「ああそうです、桜井岬で…っしゃっ!」
目の前にいたのは、滑らかな白髪ロングに長身の、この学校にはとてもじゃないけど合わない着物っぽいものを着た、雪女。雪菜。
「あ、50%に勝ったんだ」
「うふふ、うふふ、うふふふふ。やっぱ勘ね!」
「何?どういうこと?」
取り敢えず、語彙力が高い良美にまかせておいて、と。
「さ、桜井さん、どうしたんですか」
「あ、あはは〜。えーと、雪菜から来ちゃったこと聞きました?」
「ええ」
「わたしも雪菜と同じい環境で、どうにかして自分のところへ帰ってきたって感じですね」
「ええええ?どういうことどういうこと??」
もう面倒くさそうだ。
「雪菜!世界線に帰るよっ」
「え、どういうことよ、まだ説明もろくに理解していないのにっ!」
「取り敢えずもう面倒くさいし、えーと誰だっけ?ルリだっけ?ルリさんに会いたいでしょ!」
「ルリじゃなくてルメ、瑠芽よ!」
そう言って、良美が広げてくれた手書き本に、状況が飲み込めない先生を置いて飛び込んだ。
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「あだっ」
「あら、慣れていないの?」
「2回目だよ」
ふわりとわたしは着地して、ゆうゆうと飛んでみた。するとやっぱり、瑠芽はいた。
「あ、ここは結花なのね」
こんな終末世界に紛れ込まされて、可哀想に。
「結花ー?」
「あ。雪菜さん!この乾パンおいしいですよ」
あ、そうか。瑠芽も夜羽夢も何も食べなくても生きられる肉体になったけど、結花はなってないのか。めちゃくちゃ遅かったら、結花は飢え死にするとこだった。危ない。
「うん、そうそう。ほら、雪菜も飢え死にしないとはいえ、なんかは食べたいでしょ?」
降り立って瑠芽がくれた乾パンを食べると、意外と美味しかった。
「最近、備蓄もおいしいですよね〜」
「え?もう数年前からこうなっているのじゃ…ああ、お主の世界はこうなっていないのじゃったな」
もそもそと乾パンを食べ終えると、良美と岬とロボットがよろよろで走ってきた。
「飛ぶのはっ…反則っ…」
「ごめんごめん、幽霊になると色々と感覚がズレるのよ」
「ひどいっ…あ、ここは結花なんだ、行く?」
「待って、乾パンだけ食べさせて」
「貴方よく食べるわね」
「せっかく冬期講習とか勉強とかしなくていいチャンスだから」
もぐもぐと結花は乾パンを食べていた。
「あ、もう行かなきゃじゃないかしら?元の世界に戻るために」
「ああ、もうやっといたよ。面倒くさいし、そろそろダレてきてる頃合いだろうし、飽きてきてるだろうし?」
「それもそうね」
そう言って、もそもそと乾パンを口に入れ込んだ。
1回データ吹っ飛んだので最後雑☆
一応 主人公→世界
結花→雪女との物語
雪菜→リアル人狼
岬→境界の図書館
フーク→偉人に転生なんてできません!
暦→不登校の日常。
結月→レイとの遊び
レイ→こちら、悩み委員会