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EP2 妖精バジルのマルゲリータ 〜暴れるオリーブフラワー〜
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「はぁ!?ンでそんな重要なこと見落としてたんだよォ!」
「はぁ…すでにピザの焼く直前まで作っちゃったのに…このままじゃ味が落ちる!」
「嗚呼、このままではお客様にお料理が提供できないじゃ〜ん」
「おやおや、困りましたね。」
カレシスプ、レイ、ヴィアン、ジョンの4人は目の前に置かれたオリーブフラワーを見た。そしてそのうちの2人はジョンを睨んだ。
「いつもはすでに下処理が済んでいたものを使用しており、この過程は必要なかったので…すっかり忘れてました!」
ジョンは悪びれる風もなく、茶目っ気たっぷりな様子で微笑んだ。
レイとカレシスプの2人はジョンを軽蔑するような白い目で見たあと本へと視線を戻す。
「他にやり方はないのかなぁ?」
ヴィアンが凄まじい速さで只今のハプニングをノートに書き記しながら呟く。
「ありませんね。」
これまた凄まじい速さでジョンが即答する。
「他に魔法使いを見つけるほかありません。」
「つか、暴れたとしても押さえつければ良くね?そしたら他の協力者見つける必要もねぇし。こっちの方が現実的。」
「仕方ありませんね。それでは、みなさん頼みましたよ。」
カレシスプの言葉に頷き、ジョンは早々に退散しようと出口の扉の方に向かう。
しかし全力で3人に阻止されたので結局ジョンも参加することとなった。
「いきます!」
レイが|萼《がく》からオリーブフラワーを摘み取る。
「あ、意外に行けそうかも…」
その時であった。
オリーブフラワーが振動し始め、やがてその震えは大きくなり、ハリーポッターのクイディッチの試合に使う金のスニッチのように飛び回り始めた。
「ガフっ!」
暴れ出したオリーブフラワーが顔面に突進してきてよろめくレイ。
オリーブフラワーを掴もうと手を伸ばすカレシスプ。
メモを書いているノートで叩き落とそうとするヴィアン。
そしてそれをにこやかな表情で楽しそうに眺めるジョン。
まさに混沌の状態であった。
その間にも厨房は飛び回るオリーブフラワーによって荒らされていく。
その時であった。
「失礼します!」
何者かが厨房に侵入してきてオリーブフラワーの傍に走り寄った。
その途端、オリーブフラワーの暴走は止まり、厨房内が一気に静まり返る。
厨房に侵入してきた男、茶髪のハーフアップで整った顔立ちをしており時計などの裕福そうなアクセサリーをつけている、はオリーブフラワーを両手で包み込んでジョンに手渡す。
その様子を4人はぽかんとした顔で眺めていた。
「ぇあ…ジョ………、オーナーさん、おはようございます。大きな音が聞こえたもんだからつい…」
しどろもどろな様子で話しているが、なぜかジョンと目を合わせようとしない。
「…お客様、誠に申し訳ありません!そして誠にありがとうございます。まさかお客様に助けていただくとは…店として恥ずべきことですね。心からお詫びをさせていただきます。」
ジョンはその客の男に向かって深々と頭を下げる。
男は慌てふためいてジョンに顔を上げるように言う。
「…いっ、いえ……そんなことより…私のこと、覚えていないんですか?」
男は殴られたような顔を一瞬だけした。
しかし被りを振って元の表情に戻す。
「お客様のことを…でしょうか?………大変申し訳ありません、お名前を教えていただいても差し支えないでしょうか?」
その言葉を聞いてその男は何やら悲しそうな表情をしたが、すぐに微笑んで答えた。
「私は…クロード・アウストリア、って言います。あなたも私に見覚えはない、かぁ…。いえ、気にしなくて良いですよ。」
ジョンとクロードが話している間にカレシスプとレイはこそこそと話をする。
「でもなぁ、クロードが入ってきてからスニッチ…じゃなくて花の暴走が止まったっつーことはつまり…あれは魔法が使えるってことか?」
「なるほどですね〜!メモメモっと。」
「…え、あ、そういうこと?………あと、カレシスプ、お客さんを『あれ』と呼ばない。」
レイはオリーブフラワーによって赤くなった頬を氷で冷やしながらカレシスプに白い目を向ける。
「クロード様、怪しい者などとんでもありません。この度は当店の騒ぎに巻き込んでしまい誠に申し訳ありませんでした。お詫びと感謝のしるしに今日限り全品全て無料でご提供させていただきます。」
ジョンはクロードをエスコートして店の席に案内した。
その間に料理長のレイは調理に取り掛かる。
「まさかお客さんに助けられるなんて。」
「これはメモ案件ですね。」
「メモすんなァ、働け。」
そんなこんなで『妖精バジルのマルゲリータ』は無事完成した。
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「お客様、お待たせいたしました。こちら、『妖精バジルのマルゲリータ〜暴れるオリーブフラワーを添えて〜』です。今日のピザはいつもとは一味も二味も違う特別な品となっております〜!なぜかと言いますと実は〜………あ…いえ、隠し味は秘密の方がよろしいですね。では、どうぞごゆっくり〜。」
ヴィアンが裏での出来事をベラベラと喋りかけたが、後ろからのジョンの無言の圧を感じ取り咄嗟の判断で口を止めたのであった。
「では、いただくとしよう。」
キャメロンがピザを一切れ片手に取り、口に運ぶ。
「うむ!これはいつもより格別に美味いじゃないか!なんというかオリーブが新鮮に感じる。」
キャメロンのピザを口に運ぶ手は止まらない。その様子を店内の従業員たちはほっと胸をなで下ろして眺めているのであった。
<キャラ原案>
クロード・アウストリア(常連)_窒素さん
ありがとうございます!