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奇病患者が送る一ヶ月 七日目
以前、翠ちゃんの保護を一年遅くしたのですが、
ちょっと言い方が悪かったみたいなので、こちらで説明させて頂きます!
えっとですね、まず奇病病院の創立が四年前なんすよ。
で、現在の翠ちゃんの年齢は十二歳。
創立して間もないぐらいに保護されたのなら、八歳が最低年齢になる…。
要するに年齢と年が合わなくなったって訳っす。
これ以上若くするなら、創立を五年に変える必要等があったので、
ある意味作中に大きく関わってしまうんです。
なんか、誤解を招くような言い方をしてすみませんでした‼
定期的に意味不明な発言をすると思うので、
言ってもらえればこうやって説明を補います!
何かあればまた気軽にどうぞ‼
[灰山視点]
「いって!」
稲妻が走ったような痛みが、全身を駆け抜け、思わず俺は声をあげる。
「大丈夫っすか?」
心配そうに菱沼は俺の目線まで身を屈めた。
「あぁ、ちょっと足ぶつけただけだから、大丈夫!」
俺はまさか心配されるとは思ってなかったため、慌てて涼しい顔を見せてみる。
「怪我人なんだから気をつけなよー?」
シエルも続けて言った。
お前らが俺に心配するなんて驚天動地だな…。
「応、あんがとな。」
そんな事は口に出さずに礼を言うと、菱沼は安心したようにため息をつく。
「…あ、そういやシエルってやっぱ外人?」
俺がふと問うと、シエルは若干嫌そうな顔をした。
何その顔。
「急に何…?」
「いやぁ、なんとなく思ってさ。」
「変なの。…まぁ院長が適当に思ったように捉えたら?」
彼女はそう言うと、面倒くさそうにあしらった。
そんな嫌だったか?
まぁ、お言葉に甘えてそう捉えよう。
「んー…、『シエル』だからフランスか。フランス語でシエルは空だったっけ?」
「へぇー…そうなんっすね。」
「『空』って由来は希望とか、自由、無限の可能性を意味する事が多い。
あー、そう思ったら、やっぱシエルにぴったりの名前だな‼」
「うえぇ…、やめてよ…。ちょっと気持ち悪いんだけど。」
俺が得意気にニヤリと笑うと、シエルは決まり悪げに苦笑する。
「灰山サンってそう言うのに詳しいっすよね。
意外と博識って言うか…、一見馬鹿なんすけど。」
「どいつもこいつも失礼だな…。
まぁ俺は暇だったから、昔はよく調べてたんだよ。」
「人の名前の由来を?」
「違う。それは昔、患者の名前に空って子がいたから知ってただけ。」
「でもフランス語分かるってカッコイイっすよね。」
「フフフ…、これでも俺は英語とイタリア語、カタロニア語
あとスコットランド・ゲール語も話せるぜ‼」
褒められた事に鼻を高くしていると、シエルは呆れたような笑いを見せた。
シエルに代わり、菱沼が口を開く。
「変なところで凄いっすね…。よく海外行ってたんすか?」
「え?うーん…、まぁ短期留学があったからボチボチかな…。」
「院長、意外と真面目だよねぇー。」
「意外って…、そんなに意外か?」
俺がそう言うと、二人はうんうんと頷く。
やめろ、虚しくなるだろうよ。
俺は昔から中途半端に色々とかじってたからなぁ…。
なんとなく興味が出たら、少しだけやってみて…、
ある程度出来るようになったら、また別の事を始めて…みたいな。
だからこそ、こうやって俺が医者を専門としてやっている事が、
自分で言うのもなんだけど凄いと思う。
昔は、色々挑戦するのが楽しかったなぁ…。
褒めてもらったり、喜んでもらえるのが、とびきり嬉しかった。
まぁ、今でも笑顔を見たいからこの仕事を続けてるんだけど…。
でもやっぱ、歳を重ねると褒められる事が無くなった。
褒められる……、か…。
不意に頭蓋に亀裂が入るかと思うような激しい痛みが俺を襲う。
思わぬ痛みに俺は顔を歪めてしまい、それを隠す事が出来なかった。
俺は菱沼達に気付かれぬように、顔を伏せて頭を抱える。
痛い…、痛い。これはきっと傷の痛みじゃない…。
ただの頭痛だ…。薬の副作用だろうか……。
痛みでろくに目も開けられず、
机の上に置いてあるはずの頭痛薬を手探りで探す。
だが、何も見ていない状況では当然、そう簡単に見つけることが出来ず、
俺は医務室を飛び出した。
壁に体を預けながら、俺は死ぬ物狂いで進んだ。
---
[菱沼視点]
ジブンがフエラムネを隠れて食べていると、突然灰山サンが部屋を出た。
「どこ行くんすか?」
そう聞いたものの、灰山サンには届かなかったのか、彼は振り向きもしなかった。
顔色がかなり悪かったように見えたが、…一瞬だったから分からない。
大丈夫だろうか…。
「…なんか顔色悪かったよね…。」
シエルサンが呟くようにポツリと言い、
ジブンは思わず、心の高ぶりと焦りを抑えきれない乱れた声で、
「そうっすよね‼」
と、つい食い気味で言ってしまう。
「そういえばさ、院長って昔からあんな感じだったの?」
シエルサンが珈琲を飲みながら訊ねてきた。
「あんな感じって…、どんな感じっすか?」
「おっかないって言うか…、変に元気なところ。」
「…元気が一番の薬っすよ。」
ジブンが彼女の問いから適当にはぐらかす。
「っそ。」
シエルサンもあえてそれ以上は触れてこず、医務室に沈黙が流れる。
「………。」
「…………。」
「…昔はもう少し明るかった気がするっす。」
「え、アレよりまだ明るかったの?」
「そうっすよ。そこらの男児よりも元気だったっす。」
ジブンは片手で頬を抑え、呆れるように唇だけで笑う。
「へぇー…。ねぇ、聞いていい?あなた達のこと。」
「ジブン達は、兄弟なんすよ。血の繋がってない、ここだけの兄弟っす。」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
今から十二年前…、要するにジブンが十歳だった時、兄を亡くした。
性格や顔はあまり似ていなかったけれど、
仲が良く、まるで親友みたいに子供時代を過ごしていた事を、
今でも昨日のことのように思い出す。
だが、それを引き裂くように、突如として現れた兄の死。
どこか儚く、それでも美しくも見えた兄の死。
兄の死は、正体不明の病によるものだった。
そしてその時、初めて“奇病”というものを知った。
あれほど、ジブンが“病”に興味を持った事は無く、
それからと言うもの兄のような奇病の人を助けるべく、ジブンは医者を目指し始めた。
しかし、そう簡単に医者になる事は出来なかった。
なぜなら、十六の時に父が亡くなり、母だけでは、
医学部の学費どころか受験料すらも出せる余裕がなくなってしまったのだ。
医者の道を諦めた二年後、ある日の出来事に目を疑った。
街の一隅にある森の中で、一つの病院が出来たのだ。
それは“奇病病院”と言う形で、世界で初めて創立されたもの。
ジブンはこれこそ望んでいたものだと思い、すぐに入職を希望した。
幸い、創立したばかりで人手不足だったため、
ジブンでも楽に入職することができた。
この病院を作った張本人でここの院長である、灰山と名乗る青年。
その青年は、街ではよく名を広めている有名人だった。
人当たりも良く、親思い、それだけでなく頭も良かったらしい。
よくその話は耳にしていた。
なぜなら、彼はこの街で一つしかない大きな病院で働いていたからだ。
逆に、知らない者の方が少ないと言ってもいいだろう。
だが彼は病院を辞職後、忽然と姿を消した。
何故辞職したとか、そう言った話は聞いたことが無かったが、
まさかジブンとこの人がこんな所で出会うとは思ってもみなかった。
それにしても、実際に会ってみると、印象がかなり違い驚いた。
想像していたよりも元気で、声も大きく、ジブンとはまるで違う。
どこか人懐っこい性格で、年上には今でも思えない。
表も裏もなさそうな人。
ただ一つ、意味深だったとすれば、
彼は「街の人達には、絶対に俺の事を話さないでくれ」と言ったことぐらいだ。
ジブンが入職してすぐに言われた言葉だった。
その時はさほど何も思っていなかったが、
次第に、街との関係を恐れたのか、
ジブン達医者を住み込みで働くと言う形に変えてしまった。
その形になった途端、ジブンや黶伊サン以外の医者が着々と辞めていった。
住み込みにするということは、自分の家族と会う機会も少なくなる。
きっとそれが嫌だったのだろう。ソレに関してはまだ納得する。
しかし、何故街をそこまで拒むのか…、それがジブンには理解が出来なかった。
そもそも人との関わりを断とうとしているのか、何度も考える日々。
だが答えに辿り着くことは出来ないまま、何度目かの夜は明けた。
でもある日、彼は言った。
「へぇ、お前って兄いたんだ!なんか意外だな…。
今、お兄さん元気にしてる?」
「…亡くなったんすよ、もうずっと前に。奇病に侵されて。」
「…ッごめん…!知らず知らずに踏み込んで…。」
「いいっすよ。ジブンだって、もう踏ん切りは付けたつもりっすから。」
「そっか…、すげぇな…。
…あ、じゃあさ!俺の事、兄弟って思ってくれて良いんだぜ‼」
「…は?」
「ここで俺らは住んでるんだ。ここが家、なら一緒に住んでる俺らは家族じゃん!
もちろん嫌ならいいんだけど…。ほら、やっぱ寂しいだろ?独りって。」
否定は出来なかった。確かに一人は寂しい、辛い。
一人になると、突然周りの声がよく聞こえ、その上不安が頭の中を飛び交う。
存外、家族も悪くないんじゃないか。
彼はきっと人との関係を拒んでいる訳ではない。
断言は当然出来ないが、そうなんじゃないかと確信に近いものを思ってしまう。
彼も何らかの理由があって孤独を求めたが、不意に孤独が辛くなったんじゃないか。
そして、何よりも
“兄弟”
その言葉を聞いた時、美しい世界を見た気がした。
楽しかったあの日々をもう一度。
辛かった事を洗い流す事は出来ない。
でもいつまでも苦しんでほしいとは、きっと兄も思っていない。
兄が今もジブンを見てくれているなら、楽しんでいる姿を見ていてほしい。
ジブンは、兄に笑っていてほしいから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ジブンから話せるのはこれぐらいっすかね。」
「へぇー…。お兄さんいたのは、私も初耳なんだけど。」
「そりゃあ言ってないんすから…、当たり前っす。」
ジブンがそう言うと、シエルサンは途端にとびっきりの笑顔を見せて言った。
「じゃあ、私は菱沼さんのお姉さんね!」
突然の事だったから、理解するのに時間がかかってしまう。
「…は?」
ようやく出せた言葉は、それだけ。
ジブンの返事が不満だったのか、彼女は頬を膨らませた。
「何その反応…。もう少し喜んでよー。
こんなに可愛い人がお姉ちゃんになるんだからー。」
驚くほどの棒読み。
「毛ほども思ってない事を言わないでほしいっす…。」
オブラートに包み隠さずに言うと、彼女は失礼な、とだけ言った。
「それじゃ、私患者さんの所に行ってくるねー。」
「あ、気を付けるんすよ!」
…兄だけじゃなく、姉……。姉か…。
「大家族っすね…、ジブン達。」
---
[灰山視点]
吐いた所で、気分はよくならなかった。
酸っぱい匂いが周囲を包み、
体の中では込み上げてきた胃液が鼻につんときて苦しい。
再び吐き気が喉元までせり上がってきて、一層苦しくなる。
俺はしばらくしてからトイレを出た。
ふと顔を上げた時、
目の前には右腕に血が滲んだ包帯を巻いている少女が立っていたことに気付く。
「わっ、五月‼どうした?」
俺が驚きを隠せずに聞くと、
「いえ、お手洗いに来ただけであなたに用があった訳ではありません。」
興奮も震えもなければ、熱心さの欠片もないような淡々とした言葉。
それには悪気なんてものはなかった。
「あぁ、そっか!ごめんごめん!」
慌てて体を避けると、
五月はそれ以上何も言わず俯いたまま中へ入っていった。
解離性消失障害。
先天性無痛無汗症と言う大まかに言えば感覚を失う病と、
失感情症と言う感情を失う病が合わさって出来たようなもの。
それだけでなく色素性乾皮症の症状も見られ、外へ出る事も許されない。
五月の奇病は、精神的苦痛を与えるようなものだった。
彼女自身に感情はなくとも、この始末はどうなのだろう。
薬が出来なきゃ、俺達にはどうしようもない。
でも…、これじゃ意味がない。
そりゃあ褒めるもんも、褒めれねぇよな…。
…五月は治したいと願っているのだろうか。
努力家で、優しい彼女の本当の姿や願いを、俺は知ることができるだろうか。
明日にでも…、聞いてみよう。どうにかして、彼女の口から答えを聞きたい。
治したいと願っているのなら、俺は彼女の奇病を治す事ができるだろう。
…その答えを聞ければの話だが。
████ま█、
あと23日。
はーい、勝手に設定の追加ー。すみませーーん。
圧倒的に自分好みの設定を追加。血の繋がってない兄弟て、俺好きやん。
勝手に過去編ぽいの書いて、自分満足。お腹一杯((
自分知らない、ストーリーがぐちゃぐちゃとか自分知らない。
ちゃんとしたストーリーってそもそもなんだ?(哲学)
今回は前よりも少し不穏に近づいたって感じかな!
本当は別の内容(テーマ)だったんだけど、急変更。
院長に嘔吐させたいって思った((クズ
本当はねー、占いの話だったの。
それで、院長が五月ちゃんと、奨ちゃんを占うみたいな感じだった(大まか)
でも自分占い興味無いからタロットカードの意味がよく分からんくてさ、
諦めちった☆()
まぁ、素人が占いの話書いちゃあ玄人に申し訳ないよね!
ハッハッハ!
前回は温かいメッセージを沢山頂き、ありがとうございました!
沢山慰めてくれて、本当に嬉しかったです。
元気出るッ‼ヌオォォォォォォォォ‼
ここまでモチベーションを上げてもらえると、頑張るしかないよね‼
次回も、ぜひ読んでくれるとうれぴぃです。