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幕開け 不穏な空気が街を蝕む。
トントントン____
シアンはいつものように昼ごはんを作っていた。今日のご飯はオニオンスープにマカロニグラタン。喜んでくれるかな、シアンは浮かれながら、そう考えていた。
シャッ____
「っ!?」
うっかり包丁を滑らせ、手を切ってしまった。でも、そのことが問題じゃない。少しピリッとした鈍い感覚が指に走ったのだ。これは痛みだ。
久しぶりに感じる痛みだ。もう、感じることはないと思っていたのに。
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凛都は少しコンビニに行っていた。コーヒーとそのお供を買って帰ろうとしたその瞬間。
「おい。金を出せ。さもなくばこれで客全員ぶっ殺すぞ。」
店に強盗が現れ、店員に刃物を向ける。どうやら百均で売ってあるようなお粗末なナイフのようだ。悪趣味な奴だ。店員は怯えながら金をレジから取り出している。犯人は金に目が眩んでいる。その所に凛都は背後から近づき、ナイフを叩き落とす。強盗はぎょっと驚いた顔をしたが、そのマヌケな面は一瞬にして白目に変貌し、その場に倒れ込んだ。そう、凛都は腹パンを喰らわせたのだ。その後、客の1人が警察を呼んでいたみたいで、強盗は逮捕されていった。一応、ナイフは証拠として押収されていった。
「お前らが俺を捕まえても、レイさんは不滅だからなぁ。レイさんはお前たちに屈さないんだからなぁ!レイさんこそ、この世の支配者なのだぁぁぁ!」
気色の悪い笑みを浮かべながら、そう叫んだ。
レイとは何者なのか。背筋がゾクリとし、嫌な予感がした。その予感は的中するのかはまだ誰にもわからない。
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「また1人駒が減ってしまった。まぁ、いいか。あいつどうせ逮捕されそうだったし。」
1人の男が夕暮れの中で酒を嗜んていた。酒の名はマティーニ。
「もうそろそろ社会の犬である兵器たちが動き出す頃だろう。楽しみだなぁ。一体何人が死ぬんだろ。考えただけで興奮するよ。楽しみだ。」
男はそう言い、身を捩らせる。そして、人を呼びつけた。奥から白髪で長髪の老人が出て来た。
「もうそろそろここの拠点も奴らにバレてしまうな。新しいところ探すの面倒なんだよ。もういっそ野放しにしてくんないかな。セバスチャン。不動産屋へ行ってこい。新しい新居を探さなくてはね。」
「了解しました。坊ちゃん。をすぐに新しい拠点を支配しておきますゆえ。もうしばらくお待ちください。」
「セバスチャン。よろしく頼むよ。最高の舞台にふさわしい場所を。」
男は不敵に微笑み、グラスに残っていたマティーニを一気に飲み干し、傍に置いてあった日本刀を手に取った。