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その3 生命の趣味日記
その1 その2とは書き方を変えてみました。
たまにこちらの書き方も出てくるかもしれません。
「聞いてくださいよ…!天道が…!!」
そう言って話し始める垂れたうさぎの耳が特徴的な少女。朔だ。
「あらら…」
「相変わらずだねぇ〜…」
そう相槌を打ちつつ、軽くメモを取る。
これはあたし…生命の趣味。カウンセラー活動だ。そう…趣味。仕事ではない。でも、人の話を聞いたり悩みを話してもらえたりすることは好きなのだ。信頼されている気がして。
今日は幸いにも仕事は終わったし…残りの時間は全て趣味に費やしてみようか。
これは、そんなとある日のおはなし。
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「ありがとうございます…いつもいつも」
「いいんだよ、たまにはガス抜きも必要だって!」
それでは、また。と朔は部屋を後にする。
この部屋は元々あたしの自室だった部屋だ。今は太白と部屋を共有してるから…この部屋はすっかりあたしの趣味が詰め込まれた部屋になった。手前にカウンセリングルームを、奥には漫画やゲーム、アニメなんかが山ほどあってカーテンで仕切られている。
「ん〜趣味に使うとは言ってもなぁ〜」
カウンセリングの主な利用者は朔だ、正直他に来るような性格の神もいない。
…そうだ。奥にはゲームがあるじゃないか。とことん古いものから、最新作まで。折角だ。1人ではプレイできないゲームに付き合ってもらおう。
「そうと決まれば〜!」
大体彼は自室にいるから訪ねれば確実。最新作をいくつか持って行こう。お菓子も炭酸もセットで。
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彼の部屋のドアをノックする。
「ピコピコ…にょ…?誰だにょ。」
「あ、海王くーん、生命ちゃんだよ☆」
「何だにょ?もしかして…✨しっ…新作のゲームにょ!?」
「ふっふっふ……あったりー!」
「✨一緒にやるにょ!」
「もちろん!お菓子と炭酸も持ってきやしたぜ」
「最高だにょ!!」
「でっしょ〜?お邪魔するよ〜」
「ゲーム♪ゲームだにょー♪」
どーん、なんておふざけで言いながらドアを開け、入る。
「あっ!海王くんまた寝てないでしょ!クマ酷いし…お肌のハリツヤがない!もう…折角可愛い顔してんのに台無しじゃんねぇ?」
「大丈夫だにょ。まだ50徹目だにょ。」
「うん、2ヶ月にならないうちに寝ようか!今日このゲームやる代わりに今日は寝る!いいかい?」
「はいはいだにょ。」
「…あーあ、しっかり寝るって約束するなら掘り出し物のレトロゲーム明日あげるのになー。」
「レトロゲームだにょ!?寝るにょ!寝るから欲しいにょ!」
「じゃあ約束ね?」
「もっちろんだにょ✨」
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「うーん…でもゲームするならてんてんも呼ぶにょ。てんてーん」
「あ"ぁ"…?」
「青乱くんじゃんやっほー」
相変わらずの態度だ。このメンツだから喧嘩は起こらないが…昔のあたしなら拳が出ていたことだろう。
「てんてん。一緒にゲームするにょ」
「毎回毎回…俺を巻き込むな…」
「「いつも言ってるでしょ、下手だよって」だなんて…おれちゃんはてんてんとしたいにょ。」
「はぁ…チッ」
「にょにょにょ。」
本当に仲のいい2人だ。少し前まではここにあの子がいたんだろうけどね。
「よーし、じゃあ…これとかどう?」
そう言ってあたしはマルチプレイ専用のレーシングゲームを取り出す。
「おぉ…✨すぐにするにょ!!」
「…よしっ…準備完了だにょ…やってやるにょ!」
「なんだこれ…」
「さぁて、どんなもんかね〜♪」
結果を言おう…。中々に面白いことになった。もちろんゲームの内容も。
「あ…あ?なんでこれこっちに曲がったんだ…??」
「その間にっ…!!よしだにょ!」
「青乱くん青乱くん、それコース逆走してる!」
「えっ」
そして…青乱くんのゲームセンスも。
「疲れた…………」
「大丈夫ー?青乱くん」
「にょにょにょ。面白かったにょ!またしたいにょ!」
「だね〜、また持ってくるよ。じゃあ、また明日!ちゃんと寝るんだよ?」
流石にこれ以上は青乱くんの体力がもたなそうだ。それに、他にもしたいことはあるからね。
「はいはいだにょ。おやすみなさいだにょ」
それを聞いて彼の部屋を後にした。
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あの2人は健康面では心配があるものの、精神面では多分大丈夫そうだ。さて、他の子の様子も見に行こうか。辛い子がいるのなら力になりたいし。
そうして散歩がてらいろんな人のところを回っていた。心配な子もいるけど、大丈夫そうだ。そんなことを考えて歩き、ある部屋の前でふと足を止めた。
海王くんや青乱くんといつも一緒にいたあの子。…ある日突然いなくなったあの子。あたしがカウンセラーをしようと思ったきっかけ。
「…準くん、今、何してる…何を思ってるのかな?」
部屋の前で呟いたそれは虚空に溶けた。
「…過去を悔やむより、未来で繰り返さない様にする方法考えなきゃね。」
そのためにあたしはこの趣味をしてるのだから。