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9.クランは、情報を把握する
――コンコン
「誰だ?」
「クラン・ヒマリアと言います」
「初めて聞く名だな。……それは!?」
そんなヨーゲルン先生の目は、オグルに釘付けのようだ。
「見ての通りオグルです。今日はこのことで伺わせていただきました」
「オグル!? 本当にか!?」
魔物学の先生と言うだけあって、ちゃんと詳しいのね。
わたくしもまだまだだわ。
「そうだと聞きました」
「君が狩ったのか?」
「はい」
「何人で?」
「一人で、です」
「は?」
……何か問題でもあったかしら?
「……まあいい、戦いの内容を教えて欲しい」
「分かりました」
そして、わたくしは説明を始める。
「本当に一人で倒したのか……」
あら、信じられていなかったのね。
話が終わった後の先生は、呆然としていた。
「確かに話を聞くにこれがオグルである可能性は高いが……信じられん」
「あのー」
「なんだ?」
「先生の知っているオグルに関する知識を教えてほしいのですが……?」
「そうだな。確かにこのままだと私が情報を貰ってばっかりだ。こちらからも教えよう」
そして、先生は先生でちゃんと教えてくれた。
1.オグルは集落を作って住んでいた
2.オグル集落のトップには、他のオグルよりもはるかに強い個体が一体いた。
3.色は、何種類もある(クランが倒したのは赤)。色によって、武器が違う。
4.寒い地方にいた。
5.集団行動をすることもある
6.武器や角は丈夫なものが多いうえに、貴重な素材だった
だいたい、こんなところかしらね。
かなりの情報を教えてもらえたわ。
「お前、クランと言ったよな?」
「ええ」
「この魔物を譲ってはくれんか?」
「そうですね……角以外だったら構わないわ」
「そうか。助かる」
いえいえ、こちらとしても処分する手間がなくなってくれるから助かるわ。
「それではそういうことで」
もうこれ以上用事はなさそうだし、帰りましょう。
「ちょっと待て」
「?」
「この紙を与える」
そう言って手渡された紙は、ただの堅いだけの紙のように思える。
「何かしら?」
「この紙を持っているととあることができるようになるのだ。そうだな、今回は目印としてこの薔薇の印鑑を押しておこう。よし、これできっと大丈夫だろう」
「あること?」
「それは秘密だ」
秘密なのね。
「大事に取っておくわ」
「そうだな……出来るだけ持ち歩くように」
「? よくわからないけれど、出来るだけそうするわ」
「うん、それで頼む。じゃあさようなら」
「ええ、さようなら」
いけない、もう夕方じゃない!
それにしても、今日は初めてのことがたくさんあったわね。
昔に見られていた生態を少し変えた魔物が現れて、変だと言われていたのに全然変じゃない先生に会ったのよね。
ここ最近は平和に暮らせてたのだと思うけれど、これでまた逆戻りかしら?
そんなことを考えながら、寮に向かった。
「ただいま、サリア」
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「今日は昼食の時に戻れなくてごめんね」
「いえ、少し前に昼を大幅に過ぎたら勝手に食べておいていいと言われていたので大丈夫でした」
そうなの。それは命拾いしたわ。そのときのわたくしをほめたいわ。
「あ、そう。サリア、ここら辺の地図を見せてくれないかしら?」
「地図ならこちらにありますが……」
「ありがとう」
どれどれ。
地図を覗き、学園を探す。
そして、その学園の北に広がっている森を探す。
ふむふむ。
あの森はファブローの森と呼ばれているらしい。学園の名前がそのまま使われていたわ。
そして、そのファブローの森はかなり奥の方……山にまでつながっていた。その山の名前もそのままファブロー山。わかりやすくて助かるわ。
そして、その森は、貴重な鉱物が見つかったりもするらしい。
これはいずれ行ってみなくてはならないわね。
この先のことが楽しみになってきた。
あ、せっかくここら辺の地形を知ったのだから。
「サリア、この学園の新学期早々のスケジュールを見せて」
ネイラが言っていたけれど、確か大会があるのだったのよね。
それはいったいいつなのかしら?
まさか新学期早々に行事があるなんて考えていなかったから、全然見ようともしていなかったわ。
「こちらです。……こういう習慣をつけましょうね?」
「サリアがいるから大丈夫よ」
「はあ……(なんでそんな返事に困ることを言ってくるんですか……)」
あら? 不満そうね。
「どうかしたかしら?」
「いえ、なんでもありませんよ」
「そう、それなら良かったわ」
えーっと、今が正月の7七日で日曜日よね。そして学園が始まるのが正月十日の水曜日。
その前の日である火曜日には説明会があるみたい。
そして、大会があるのは……正月十五日の月曜日かららしいわ。
思っていたよりもすぐだわ。
他の行事は……正月にはぱっとみ大きい行事はなさそうだし、こんなものかしら?
「ありがとう」
スケジュールをサリアに返す。
「私はお嬢様が成長されたことがうれしいです……」
「大げさじゃない? ただスケジュールを確認しただけよ」
「今まではその日になっても行事を知らないことが多々ありましたからね」
あ、もう。
「なんでばらしちゃうのよ」
「別にいいじゃないですか、聞いている人もいるわけではありませんし」
「それもそうね」
ん? 納得はしたものの、これ、普段からサリアがそう考えていたということよね?
「ちょっとサリア! それならわたくしに何があるのか、くらい教えてくれてもいいじゃない!」
「いえいえ、一介のメイドにはできすぎたお願いですから」
「ちょっと! これからはお願いするわよ!」
「わかりました」
ふう、これで何とかなりそうね。これからは。
今日はさっさと遅くなった夕食を食べて、さっさと寝ることにしましょう。
『寝る子は育つ』とは昔からよく言うものね。
暦について。
1年は364日で一定。
月は13個。それぞれ4週間(28日)。呼び方は正月、1月、2月、3月……12月です。