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【第一章】第1話「天を蝕す者達」
⚠️一部流血・グロ表現が含まれます!
【天蝕第二組織:冥濁】
「ねぇ!ロゼア!実験体番号No.11が壊れちゃった!新しいのちょーだい!」
子供らしく無邪気な笑顔を浮かべた小柄な少年が、赤紫色の瞳で、目の前に立つ男を見上げる。
「あぁ、ミフェル。また壊れちゃったか、仕方ない。No.16なら耐久度も高いし、良いオモチャになるよ。」
ロゼアはメガネの奥の目を細めて淡々とそう言ってコーヒーを啜る。
「やったー!嬉しい!ありがと!」
ミフェルは両腕をあげてぶんぶん振り回して喜びを自分の体いっぱいに表現すると、その場から駆け出して廊下の奥へと消えていった。
「…残月の奴等の体の構造、異能の仕組みはとても興味深い。もっと知る為にも、もっと、実験体がいるな…そうだ、残月の中でも特殊な子がいるという情報があったな。計画も練っておくか、はは。」
ロゼアは椅子に座ると、一人、誰もいない部屋の中でモニターに映る研究所の監視カメラの画面や、資料を眺めて不気味に微笑んで呟いた。
ゆっくりと、だが確実に冥濁の魔の手は残月へと伸びている。
「あはははは!!ねぇ、次はどこをもいで欲しい!?右腕か?そうだ、両目を抉り取ってやろうか!!」
地下、実験体が収容されている牢屋の中、狂気に染まった声と、金切り声のような悲鳴が響き渡る。
辺りは血生臭く、原型を留めていない残月だったものの肉塊が散らかっていた。
「流人…いくら何でもやり方が気持ち悪いわよ。見てるこっちが不快だわ。」
眉を顰め、袖で口元を覆った華奈が流人の行動を見て嫌悪感を示す。
「いいじゃないか!ストレス発散になるんだ!しかもこいつ、良い声を上げるよ!」
手を止め、興奮に頬を赤く染めたまま目を見開いて服や顔に返り血を浴びた状態で、華奈の方へと近付く。
「こっち来ないでよ…。」
嫌悪感をむき出しにし、流人から離れようと更に一歩後退るも、背後は行き止まりで、背中が壁にぶつかる。
「何でだ?何で嫌がるんだ?」
流人の瞳に光はなく、見つめられている華奈はその深淵の様な暗く深い瞳から目を逸らそうとしても逸らせない。まるで体を、目を固定された様に動かせない。
流人の異常な距離感と狂気が渦巻く中、突如、1階へと続く階段の上にある扉がキィィ…と音を立てて開けられた。
そこには、光を背に受ける一人の長身の男がいた。
光を背に受けているせいで、顔に影がかかり視認しずらい。
「何をしている、ロゼア研究所長がお呼びだ。早く来い」
澄んだ冷徹な青い瞳が薄暗い地下の中で光る。
その低く響く声には二人も聞き覚えがあった。
「「…はい、リンシャ副研究所長。」」
流人は華奈から離れ、華奈はそれを鋭い目つきで睨みつけるが、二人は背筋を正し、深く一礼した。
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【天蝕第一組織:幽楽】
「……静かだね。」
どこかのビルの屋上、柵に腰掛け黒い服装に身を包んだ少女が静かに呟く。
夜空に浮かぶ三日月を見上げ、その夜空をそのまま閉じ込めたかの様に美しく光り輝く瞳を細めた。
その傍には、黒いスナイパーライフルを背負った男が無言で佇んでいる。
まるで影の様に溶け込んでいた。
「…ねえ、夜鴉。これからどうなるんだろうね。」
少女がまた一つ呟く。
夜鴉と呼ばれた男はその疑問に返すことなく、目を閉じた。
「二人とも。ここにいては冷えますよ。」
静かな空間に声が響く。
いつの間にか黒いスーツに身を包んだ男性が柔らかな笑みを浮かべてそこに立っていた。
「あ!ヴェルアさんじゃない!」
少女はその声に気づいて振り返ると顔を明るくして柵から飛び降り、そのスーツを着た男性に近付く。
夜鴉もその少女の後を追い、スナイパーライフルを背負い直す。
「瑠璃さん、夜鴉さん。貴女達の出番です。その腕前を、見せてくれますか?」
ヴェルアは黒手袋を嵌めた手で二人の背中をポンと押し、ニコリと微笑んだ。
「えぇ!ヴェルアさんが言うなら!」
瑠璃は嬉しそうにうっとりと目を細めて、ヴェルアの腕に抱きついた。
夜鴉は一度頷いて微動だにせず、ただ静かに、その二人の会話を聞いている。
抱きつかれたヴェルアは少し驚いた表情で瑠璃を見下ろしたが、すぐに再びフッと笑みを浮かべる。
「これからも、よろしくお願いしますよ。」
ヴェルアがふと漏らしたその言葉は、夜風に流される様にして消えていった。
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【天蝕第三組織:陽獄】
「冥濁は動き始め、幽楽と僕たち陽獄は待機…か。早く戦いたいねぇ、暇だよ。」
その小柄な体に合わない黒い大鎌を地面について、壁にもたれかかった黒髪の少年が退屈そうにため息を漏らす。
「そうだなァ……早く残月のやつらを殺して、その血が飛び散る瞬間が見たいぜ。」
黒い包帯で目を覆った男が、ナイフを指先で器用に回しながら、不気味な歪んだ笑みを浮かべて笑う。
「ま、大人しく上に従うしか無いよ僕らは…待ってなよ、残月の人たち。その首を刈り取ってやるから。」
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─戻って残月。
「と、いう訳だ。」
ホワイトボードの前、マーカーペンを手に持ったレフェールが俺の方を向く。
「なるほど…俺達残月は…元々は別世界の住人って事ですか?」
「そう。訳あってこの世界に辿り着いた一人の男が、この世界の住人のとある一人の女性に恋し、その女性も彼を愛した。その二人から生まれたのが、私たち残月の祖先となる者だ。その子供は生まれつき三日月の瞳を持ち、特別な力も持った。子供は親との約束を守り、必要以上にその力を使わなかった。だがその力を危険視した政府が作り出したのが「天蝕」なのだよ。」
マーカーペンのキャップをカチッと締め、ホワイトボードイレーザーを手に取り、ホワイトボードの文字を消していった。
「誰も、悪く無いのに?」
「いや、残月の中には己の力に自惚れた者がごく一部だがいた。そいつらは裂花を使い、無関係に人を襲った。現在はもう法に裁かれ、そういう奴はいない。だが、一度事例があった為、政府と天蝕は余計私たちを危険視した。だから、私たちは追われているのだよ。」
「…そうですか……。」
重苦しい空気がその場に漂い、何とかこの空気を変えようと俺が口を開こうとした瞬間、耳をつんざく悲鳴が聞こえた。
「何だっ!?」
翔陽がサングラスを上げ、ドアを開けて外へと出る。俺やレフェールも後に続き、外へと出た。
そこには目を見張る光景が広がっていた。
一人の女性が腹から、口から大量の血を流して倒れていた。目を開いたまま。離れていても分かる。
この女性は、殺されている。
頭痛がして吐き気が込み上げ、口元を抑えた。
「離れろ!!!!!!」
俺が膝を突きかけたその時、襟首を勢いよく掴まれて後ろへと引っ張られる。
首が急に締め付けられ、思わずゴホゴホと咳き込んだ。
目の前には、俺を後ろへ引っ張り、警戒心を剥き出しにしたレフェールと翔陽、そして、いつの間に姿を現したのか、黒い服装に身を包んだ少女がいた。
「こんばんは、残月の皆さん!瑠璃っていうの!よろしくね!」
瑠璃は無邪気な可愛らしい笑みを浮かべ、首を傾ける。
「…誰だ………?」
俺は掠れた声で、目を見開いて瑠璃を見つめた。
序章の続きです!
今回は敵視点も混ぜて書いてみました!
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