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S1 番外編
みやめお #meo
婚約を解消された朝、空はやけに晴れ渡っていた。
こんなに痛みの伴う結果なのに、雲一つない青空がひどく皮肉だった。
「シェイ様、本当にこれでよろしいのですか?」
執事の声が耳に届いても、シェイは応えずに窓の外を見つめていた。眼下には、風に揺れる花畑。その向こうに、もうすぐ忘れるべき女性――ミリアーナの面影がちらつく。
(俺は……あれほど彼女を愛していたのに)
それでも、王族の血筋に仕える者として、父の意志に背くことは許されない。「イザベラ姫との婚姻は家の繁栄と誇りのため」などという綺麗事の裏で、自分の人生が切り売りされていくような気がして、シェイはひとり部屋に立ち尽くしていた。
だがミリアーナの涙だけは、脳裏から離れない。あのとき、何も告げずに去った自分を、彼女はどれほど恨んだだろう。怒り? 憎しみ? それとも……
「――お嬢様はまだ、あなたを……」
あの家のメイド、リリがそっと言い残した言葉が胸を刺す。ミリアーナは、まだ自分を想ってくれているのか? そうだとしたら、せめて心から詫びるべきだったのではないか?
シェイは、机の上の指輪――彼女に贈った婚約の証に、そっと手を伸ばした。
(愛する者を守れなかった俺が、王族として何を誇れるのだろうか)
シェイを主人公に書いてみました!
バッドエンドでもいいんですけど、ミリアーナたちは結ばれてほしいっていう作者の思いがあるのです。