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東方玄魔録〜肆〜
*
んー、あんたはぁ……そうだ、新しい博麗の巫女だっけ?
よく来たねぇ、神出鬼没な私を見つけるのは大変だったんじゃない?
しっかし、神出鬼没とはまさに私に作られたような言葉だねぇ。まさに鬼だから。
私はあんたのことよく知ってるわよ。一時期流行った病で親を亡くしたんだったか。
皆の前の時は健気に振る舞ってるのに、一人の時は違う。
先代を連想されるのが嫌なんじゃないかい?
おおっと、すまない。困らせるつもりはなかったんだ。
可愛い子にはいつも笑顔でいてほしいからねぇ。
まあでも、あの子は魅力ある子だったからね。
思い出すのも仕方ないよ。
熱くて、強くて、正直で。綺麗な子だった。
あ? 先の異変?
なんだい、探偵の真似事でもするようになったのかい? それともブン屋?
んーでも、あんたも綺麗だしなぁ。
ちょいと昔話に付き合ってくれたら、うっかり溢しちまうかも。どうだい?
お、そうだな。あれはいつだったっけ。
あの年はどこかの霊のせいで春が異様に短くてねぇ。花見の宴会を楽しむような間もなく梅雨が来てしまった。全く、身勝手にも程がある。
私は腹いせに霧になって宴会を増やさせたんだが……
まあそれが異変扱いされた訳だよ。
え? あなたも身勝手じゃないって? 耳が痛いなあ。
話を戻そう。それで、私を倒しにやってきたこの中にいやはや私にそっくりな人間がいてね。
そっくりって言っても外面だけだ。不思議な子だったね。
ここの妖や半人は悪く言えば単純、良く言えば芯の通ったやつが多いだろ?まあ少なくとも、そう見せている。
その子は内と外が見るからにチグハグでねえ。
そうそう。真逆ってわけじゃあないんだけども。きっとあの子は目標が無いと壊れっちまうタイプなんだろ。それぐらい熱心だったな。
今のあの子の姿も、だからこそ、なんだろうが……
ま、いいか。話を戻そう。その子は霊夢とそれはそれは仲が良くてね。
何が言いたいのかって? 兎に角、霊夢は人に好かれる人間だったってだけさ。
あー昔話してたら酔いが覚めてきちまった。
あんたも飲むか? いや、未成年だったか。
すまんすまん。そう睨むなって。
へ? 先の異変の話は、だって? ああ、自分でも酔いが覚めちまってうっかり忘れてたよ。
ううー。そんなに聞きたいかい? 別に私もよく知らないんだけどねぇ。
んー、でもさっき、主犯については溢したからいいだろ…って、え、言ってなかったか?
悪い悪い。さっきのチグハグな子。それが主犯だよ。
あー。喋ったら眠くなってきたぁ。んーおやすみぃ。
※追記:鬼とは気まぐれゆえ、覚悟して話すべき。
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出典・東方玄魔録「伊吹萃香」
眠り姫です!
今回はすいかさんです。
さて、次は地下か天上か……
どっちにしようかな